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HCIとは?UX/UIとの違いと企業での活用ポイントをわかりやすく解説

HCIとは?UX/UIとの違いと企業での活用ポイントをわかりやすく解説

デジタルプロダクトやオンラインサービスが生活や業務の中心となった現在、使いにくさや違和感は単なる不便さにとどまらず、利用の中断や不信感、さらにはビジネス成果そのものに影響を与える要因となっています。ユーザーが画面を前にして迷う理由や、意図した行動に至らない背景は、UIの見た目や機能不足だけでは十分に説明できません。そこには、情報をどのように認知し、どの順序で理解し、どの段階で判断に負荷を感じるのかといった、人間側の認知的・心理的プロセスが深く関わっています。

HCI(Human-Computer Interaction)は、人とコンピュータ、あるいはデジタルシステムとの相互作用を、このような人間の特性を前提に体系的に捉えるための分野です。単に操作を分かりやすくするための設計手法ではなく、「なぜこの操作は理解されにくいのか」「なぜこの情報配置が判断を遅らせるのか」といった問いを、設計と評価の両面から扱います。そのためHCIは、UXやUIと密接に関係しながらも、それらを支える理論的な基盤として機能します。

本記事では、HCIの基本的な考え方を起点に、UX・UIとの違い、企業がHCIを押さえることの実務的なメリット、人間中心設計(HCD)との関係、さらに代表的な評価手法までを整理します。理論の紹介に終始するのではなく、実際のプロダクト設計や改善、SEOやコンテンツ設計にも応用できる視点として解説することで、HCIを実務に結びつく判断軸として理解することを目的としています。 

1. HCI(ヒューマン・コンピュータ・インタラクション)とは 

HCI(Human–Computer Interaction)は、人(ユーザー)とコンピュータ、あるいはデジタルシステムがどのように相互作用しているのかを理解し、その体験をより良いものへと設計・改善していくための学際的な分野です。単に操作方法や画面の分かりやすさを検討するだけでなく、ユーザーが情報をどのように認知し、理解し、判断し、最終的にどのような行動を取るのかといった認知的・心理的プロセスまでを含めて対象とします。そのためHCIは、情報工学だけでなく、心理学、認知科学、デザイン、社会学など複数の領域が交差する特徴を持っています。 

この考え方は研究分野にとどまらず、現在ではプロダクトやサービス、業務システムの設計・改善においても広く応用されています。実際の利用状況の中で観察されるユーザーの行動や反応をもとに設計を評価し、その結果を次の改善へと反映させていく反復的なプロセスが重視されている点が特徴です。このようにHCIは、体験の質を構造的に捉え、継続的に高めていくための基盤となる考え方であり、UXやUIを支える根幹の概念として位置づけられています。 

 

2. HCIとUX・UIの違い 

HCI、UX、UIは、プロダクト設計やデザインの文脈で頻繁に登場する用語ですが、その意味や役割は必ずしも明確に区別されていません。とくに実務や学習の初期段階では、これらが同義語のように扱われることも多く、結果として議論の焦点が曖昧になりがちです。 

そこで重要になるのが、「何を対象にし、どのレベルで人とシステムの関係を捉えているのか」という視点です。本節では、HCI・UX・UIを目的や関心領域の違いから整理し、それぞれが担う役割を比較します。 

視点 

HCI(Human-Computer Interaction) 

UX(User Experience) 

UI(User Interface) 

主な関心領域 

人とシステムの相互作用そのもの 

利用前〜利用後を含む体験全体 

画面・操作部品などの接点 

扱う範囲 

操作、理解、反応、負荷、誤操作 

納得感、安心感、満足度、記憶 

ボタン、レイアウト、色、文字 

立場・性質 

学術・理論と実務を横断 

プロダクト価値の視点 

実装に近い具体設計 

中心となる問い 

「この操作は人にとって適切か」 

「この体験は意味があるか」 

「どう見せ、どう触らせるか」 

主な手法 

実験、評価、ユーザビリティテスト 

ジャーニー、体験設計、評価指標 

画面設計、プロトタイプ 

成果物の例 

設計原則、評価結果、知見 

体験設計方針、改善方針 

画面デザイン、UI仕様 

時間軸 

利用中の相互作用が中心 

利用前・中・後を含む 

利用中の操作瞬間 

他領域との関係 

UXを支える理論的基盤 

HCIやUIを統合する上位概念 

UXを具体化する手段 

 

役割の違いをどう理解するか 

HCIは、人がコンピュータと相互作用する際に生じる理解や負荷、誤操作といった要素を、設計と評価の両面から体系的に扱う分野です。その知見は、個々の画面設計にとどまらず、UX全体の質を支える理論的な基盤として機能します。 

UXは、こうしたHCIの知見やUIの具体設計を統合しながら、ユーザーが体験を通じて感じる価値そのものを設計する概念です。UIはUXを実現するための表層的な接点に過ぎませんが、三者の役割を整理して理解することで、より一貫性のある設計判断が可能になります。 

 

3. 企業がHCIを押さえるメリット 

デジタルプロダクトにおける競争力は、機能や技術要件の充足だけでは十分に確保できません。ユーザーがその仕組みをどのように理解し、どの時点で迷い、どのような判断を経て行動するのかといった「人の側のプロセス」を踏まえて初めて、プロダクトは本来の価値を発揮します。 

HCI(Human-Computer Interaction)は、この人とシステムの相互作用を理論と実践の両面から整理する分野であり、企業がUXを戦略的に扱うための重要な基盤となります。 

 

3.1 手戻りを構造的に減らせます 

HCIを前提に設計を進めると、仕様を検討する初期段階から「ユーザーがこの設計をどのように理解し、どう行動すると解釈するか」を具体的に検証しようとする姿勢が自然に組み込まれます。画面構成や情報の配置、操作手順がユーザーの認知プロセスや期待に沿っているかを、プロトタイプや簡易的なテストを用いて早い段階で確認できる点が大きな特徴です。これにより、設計者の意図とユーザーの受け取り方のズレを、実装が進む前に可視化できます。

その結果、開発が進行してから「想定した使い方をされない」「操作方法に関する質問や問い合わせが想定以上に発生する」といった問題が表面化しにくくなります。リリース後に大規模な修正や仕様変更を余儀なくされるリスクを下げられるため、コスト削減だけでなく、スケジュールや品質面を含めた開発全体の安定性向上にもつながります。HCIは、後工程のトラブルを減らすための“事前の検証力”を高める考え方だと言えます。

 

3.2 KPI改善に直結しやすくなります 

HCIは、ユーザーがどこで迷い、どの段階で判断に負荷がかかり、なぜ行動を中断したのかといった過程を分析対象とします。結果として現れる数値だけを見るのではなく、その背後にある認知や判断の構造を捉えるため、離脱率やCVR、作業時間、問い合わせ件数などのKPIとUX施策との関係を整理しやすくなります。数値の変動を感覚的に解釈するのではなく、行動の理由として説明できる点が特徴です。

また、HCIに基づく改善は、単なる見た目の調整を目的とするものではありません。認知負荷や判断コストがどこで発生しているのかを前提に設計を見直すため、施策の意図と実装内容、結果のつながりを論理的に整理できます。その結果、UX改善がビジネス指標にどのように寄与しているのかを、社内で共有しやすくなります。

 

3.3 「使いやすさ」を再現可能にできます 

HCIを押さえて設計や評価を行うことで、「使いやすい」「分かりにくい」といった主観的な印象を、そのまま結論として扱う場面は少なくなります。ユーザーが実際にどこで視線を止めているのか、どの操作に想定以上の時間を要しているのか、どの表現や情報を誤って解釈しているのかを、観察やユーザーテストを通じて具体的に把握できるためです。評価の根拠が行動や反応として可視化されることで、個人の感覚に依存した議論を避けやすくなります。

このようなプロセスを繰り返すことで、使いやすさを構成する要素を段階的に分解し、「どの条件が満たされると迷いが減るのか」「どの設計が判断を早めるのか」といった形で、再現可能な知見として蓄積できます。その結果、特定の担当者の経験やセンスに頼るのではなく、チーム全体で共通の判断軸を持ちながら設計・改善を進められるようになります。HCIは、UX品質を属人化させず、一定水準を継続的に保つための基盤として機能します。 

 

3.4 部門間の意思決定がスムーズになります 

HCIの視点を取り入れることで、企画・デザイン・開発といった立場や専門の異なるメンバー間に、共通の判断軸が生まれます。「なぜこの設計が必要なのか」「どこを優先すべきか」といった問いに対して、個人の経験や好みではなく、ユーザーの理解のされ方や実際の行動を根拠として説明できるためです。その結果、抽象的な感覚論に基づく意見の衝突が起こりにくくなります。

こうした共通認識があることで、議論の焦点は「誰の意見が正しいか」ではなく、「ユーザーにとって分かりやすいか」「迷わず行動できるか」といった体験の質へと自然に移っていきます。設計上の選択やトレードオフについても、ユーザー視点で整理しやすくなり、判断の納得度が高まります。HCIはUXの品質を高めるだけでなく、組織内の意思決定や合意形成を安定させるための実践的な枠組みとして機能します。

 

3.5 安心感と信頼を積み上げやすくなります 

HCIに基づく設計は、操作効率や作業時間の短縮だけでなく、ユーザーが感じる心理的な負担にも目を向けます。情報の提示順や説明の粒度、選択肢の出し方、エラー発生時のメッセージや復帰手段が整理されることで、ユーザーは「次に何をすればよいか分からない」「失敗したらどうなるのか不安だ」と感じにくくなります。操作そのものが簡単であることに加え、安心して進められる状態を作ることが重要になります。

こうした安心感のある体験が積み重なることで、利用は一度きりのものに終わりにくくなります。迷いなく使えた、困ったときに立て直せた、理解しながら操作できたという経験は、継続利用やサービスへの信頼感につながりやすくなります。HCIは、短期的な数値改善だけを目的とした施策ではなく、ユーザーとの長期的な関係性を支える体験の土台として機能します。結果として、プロダクトやブランドへの信頼が徐々に形成されていく点に特徴があります。

 

3.6 改善判断の精度が高まります 

HCIを理解している組織では、改善の優先順位を担当者の感覚や一時的な流行だけで決めることは少なくなります。ユーザーがどのように情報を理解し、どの流れで行動しているのかといった認知構造や行動パターンに照らし合わせることで、その課題が本当に解決すべきものなのかを冷静に見極められるためです。表面的な不満や要望の背後にある原因まで整理した上で、改善の是非を判断できる点が特徴です。

その結果、声の大きい要望や短期的なトレンドに過度に影響されにくくなり、限られた時間やコスト、人員といったリソースを、本質的な体験改善に集中させやすくなります。判断の一貫性が保たれることで、改善施策が場当たり的にならず、積み重ねとしてプロダクトに反映されていきます。HCIは、プロダクトを継続的に成長させるための実践的な判断軸として、組織全体を支える役割を担います。

 

HCIは、単に操作しやすいUIを実現するための設計知識にとどまるものではありません。ユーザー理解を中心に据えることで、仕様検討段階での思い込みや見落としを減らし、開発リスクを抑えながら意思決定の精度を高める考え方です。ユーザーの認知や行動に基づいて設計を検証できるため、UX改善をKPIの変化や業務効率と結びつけて捉えやすくなり、施策の妥当性を説明しやすくなります。

企業がHCIを押さえることは、個々の画面や機能の完成度を高めるだけでなく、組織として一貫した判断軸を持つことにもつながります。短期的な要望や場当たり的な改善に振り回されにくくなり、プロダクトの方向性を安定して保ちやすくなります。その結果、UXの質を継続的に高めながら、プロダクトとビジネスの成長を長期的に支える土台が整っていきます。HCIは、設計手法であると同時に、企業活動全体を下支えする基盤的な考え方です。 

 

4. 人間中心設計(HCD)との関係 

HCIをプロダクトやサービスの設計に結びつける際の中心的な考え方が、「人間中心設計(Human-centred design:HCD)」です。HCDは、技術や機能を起点にするのではなく、ユーザーの目的や行動、置かれている状況や制約を出発点として、使いやすく有用なシステムを目指すアプローチであり、ISOでもその枠組みが整理されています。操作性の良し悪しにとどまらず、その体験がユーザーにとって意味を持つかどうかまで含めて設計対象とする点に特徴があります。 

HCIが人とシステムの相互作用を理論的に扱う領域であるのに対し、HCDはその知見を設計プロセスとして具体化する考え方だと言えます。ユーザーがどのように理解し、判断し、行動するのかを前提に据えることで、機能や画面構成は自然と整理されていきます。この関係性を意識することで、HCIの概念が抽象論に留まらず、体験設計の指針として機能します。 

HCDでは、利用状況(コンテキスト)の把握、要求(要件)の明確化、解決案としてのデザインの作成、評価と改善という流れを循環させていきます。このプロセスは直線的ではなく、評価結果をもとに前提や理解を更新していく反復構造に価値があります。こうした繰り返しを通じて、ユーザーが迷わず、納得して使える体験が少しずつ形作られていきます。 

 

5. HCIによく使う評価手法 

HCI(Human-Computer Interaction)の設計において、体験の良し悪しを判断する際に、「使いやすそうに見える」「直感的に操作できそうだ」といった主観的な印象だけに頼るのは十分とは言えません。実際の利用場面では、ユーザーがどこで迷い、どの判断に時間を要し、どの瞬間に不安やストレスを感じているのかが、体験全体の評価に大きく影響します。こうした要素を感覚的に推測するのではなく、客観的かつ再現可能な形で捉えることが求められます。そのための手段として位置づけられるのが、HCIの評価手法です。

HCIの評価手法は一つではなく、プロダクトのフェーズや検証したい目的に応じて使い分けられます。初期の設計検討段階で有効な手法もあれば、リリース後の改善やKPIの妥当性を検証する際に適した手法もあります。いずれも、ユーザー理解を深め、設計判断の根拠を明確にするために用いられます。本章では、HCIの実務において特によく活用される代表的な評価手法を整理し、それぞれの特徴や使いどころ、活用時のポイントについて解説していきます。

 

5.1 ユーザビリティテスト(Usability Testing) 

ユーザビリティテストは、実際のユーザー、あるいは想定ユーザーに近い被験者にタスクを実行してもらい、その過程を観察・分析する評価手法です。操作の成否だけでなく、ユーザーがどこで立ち止まり、何を理解できず、どのように判断に迷ったのかを行動レベルで把握できる点が最大の特徴です。アンケートや数値データだけでは捉えにくい、画面理解のズレや設計意図との乖離が、具体的な行動として可視化されます。 

この手法は、UIの完成度を確認するためだけでなく、設計者が暗黙の前提として置いている理解や知識が、実際にユーザーと共有されているかを検証する目的でも有効です。特にフォーム入力、購入フロー、設定画面など、操作手順や判断ポイントが複雑になりやすい領域では、ユーザビリティテストを通じて早期に問題を発見できます。その結果、リリース後に発生しがちな大規模な手戻りやUX低下を防ぎ、より納得感のある体験設計につなげやすくなります。 

 

5.2 ヒューリスティック評価(Heuristic Evaluation) 

ヒューリスティック評価は、UXやHCIの知見を持つ専門家が、一定の評価原則(ヒューリスティクス)に基づいてインターフェースを点検する手法です。代表的なものとしては、Nielsenの10原則が広く知られており、「システム状態の可視性」や「一貫性」「エラー防止」といった観点から問題点を洗い出します。 

この手法は、実ユーザーを集める前段階でも実施できるため、コストとスピードの面で優れています。一方で、評価結果は評価者の経験や視点に依存しやすいため、ユーザビリティテストと組み合わせて用いることで、主観と実態のギャップを補完することが重要です。 

観点 

確認内容 

可視性 

現在の状態がユーザーに分かるか 

一貫性 

用語・操作・挙動が統一されているか 

エラー対応 

ミスを防ぐ設計になっているか 

 

5.3 ユーザーインタビュー(User Interview) 

ユーザーインタビューは、ユーザー本人の言葉を通じて、行動の背後にある意図や価値観、判断の基準を理解するための定性調査手法です。「なぜその機能を使わなかったのか」「どの点に不安や迷いを感じたのか」といった問いに対して、数値データだけでは捉えきれない利用文脈や心理的要因を明らかにできます。そのため、UIや機能そのものだけでなく、ユーザーが置かれている状況や期待、前提条件を把握するうえで重要な役割を果たします。 

HCIの観点では、インタビューで得られた発言をそのまま事実として受け取るのではなく、実際の行動ログや利用観察の結果と突き合わせながら解釈する姿勢が重視されます。ユーザーの語る理由と実際の行動が一致しないケースも少なくないため、単独の根拠として設計判断に用いることには注意が必要です。そのため、他の評価手法と組み合わせながら全体像を捉え、発言の背景にある認知や判断プロセスを読み解く形で活用することが求められます。 

 

5.4 アンケート・尺度評価(SUS / UEQなど) 

アンケート調査は、多くのユーザーから定量的な評価を効率的に収集できる手法です。HCI分野では、SUS(System Usability Scale)やUEQ(User Experience Questionnaire)など、信頼性が検証された尺度が広く用いられています。これにより、「使いやすさ」や「満足度」を数値として比較・追跡することが可能になります。 

ただし、アンケートはあくまで結果の把握に向いた手法であり、問題の原因を特定するには限界があります。そのため、スコアの変化を改善活動のトリガーとして活用し、詳細な分析はテストやインタビューで補完するという位置づけが現実的です。 

指標 

主な用途 

SUS 

全体的な使いやすさの把握 

UEQ 

印象・感情的評価の測定 

CSAT 

満足度の簡易測定 

 

5.5 行動ログ分析(ログ・ヒートマップ) 

行動ログ分析は、実際の利用データをもとに、ユーザーの行動パターンを把握する評価手法です。クリック位置、スクロール量、滞在時間といったデータを可視化することで、「どの情報が十分に見られていないのか」「どの段階で利用が中断されているのか」を、主観に依らず客観的に確認できます。そのため、UIや導線設計におけるボトルネックを発見する手段として有効です。 

この手法の強みは、実運用環境における大量かつ継続的なデータを扱える点にあります。一方で、行動の結果は把握できても、「なぜその行動が選択されたのか」という背景や意図までは直接読み取れません。そのためHCIの文脈では、行動ログを仮説立案の起点として捉え、ユーザーテストやインタビューなどの定性手法と組み合わせながら検証のサイクルを回していくことが重要とされます。行動ログ分析は、問題を断定するための手法ではなく、問題発見の入口として位置づけられるケースが多く見られます。 

 

5.6 A/Bテスト(比較実験) 

A/Bテストは、複数のUI案を同時にユーザーへ提示し、どちらがより良い成果を生むかを定量的に比較・検証する手法です。CVRや完了率、離脱率といったKPIと直接結びつけて評価できるため、UI変更がビジネス成果に与える影響を明確に把握できる点が大きな特徴です。そのため、改善施策の意思決定をデータに基づいて行いたい場面では、非常に有効な手法として広く活用されています。 

一方で、A/Bテストは数値上の優劣を示すことはできても、「なぜそのUIが良かったのか」という背景までを十分に説明できない場合があります。HCIの観点では、単なる結果比較にとどまらず、ユーザーがどのように理解し、迷い、判断したのかを解釈することが重要です。そのため、テスト前に認知や行動に関する仮説を明確に立て、テスト結果をインタビューや行動観察などの定性データと組み合わせて読み解く姿勢が求められます。 

 

HCIの評価手法は、それぞれ得意とする領域や役割が異なります。操作のつまずきを見つけやすいものもあれば、認知負荷や理解度の傾向を把握しやすいもの、定量的な変化を追うのに適したものもあります。そのため、単一の手法ですべてを判断しようとするのではなく、検証したい目的やプロダクトのフェーズに応じて複数の手法を組み合わせることで、判断の精度と信頼性が高まります。評価結果を相互に補完することで、見落としや偏りも抑えやすくなります。

重要なのは、「使いやすいかどうか」を個人の感覚や過去の経験だけに委ねないことです。ユーザーの行動を観察し、データとして整理し、検証を通じて説明できる状態を作ることで、設計判断に納得できる根拠が生まれます。HCIの評価手法は、その共通の土台として機能し、設計と意思決定を同じ言葉で結びつける役割を担います。結果として、UX改善を継続的に進めるための基盤が組織内に形成されていきます。

 

6. HCIをSEO・コンテンツに「つなげる」考え方 

HCIの視点は、プロダクト設計だけでなく、SEOやコンテンツ設計においても有効に機能します。検索行動そのものが「人と情報の相互作用」であり、ユーザーがどのような意図や疑問を抱き、どんな期待を持って情報にたどり着いているのかを理解することが出発点になるためです。単にキーワードを並べるのではなく、「今、何を知りたいのか」「どの順序で理解したいのか」という思考の流れに沿って構成することで、ユーザーにとって読みやすく、結果として検索エンジンからも評価されやすいコンテンツになります。

文章構成や表現についても、HCIの観点から見直せるポイントは多くあります。見出しの並びが理解の順序と一致しているか、専門用語に適切な補足が用意されているか、次に読むべき内容が自然に想像できるかといった点は、読み手の認知負荷や理解コストに直結します。読み進めやすい状態が整うことで、途中離脱が減り、滞在時間や回遊性といったSEO指標の改善にもつながりやすくなります。

HCIをSEOやコンテンツ改善に結びつける上で重要なのは、評価と改善を繰り返す姿勢です。どの段落で読み手が離脱しているのか、どこまで読み進められているのかといったデータを手がかりに、構成や表現を調整していく流れは、HCIの反復的な考え方と重なります。こうした見直しを積み重ねることで、「検索に強い」だけでなく、「読んで理解し、納得できる」コンテンツが少しずつ形作られていきます。

 

おわりに 

HCIは、操作しやすいUIを実現するための補助的な知識ではありません。ユーザーがシステムと向き合う中で生じる理解、迷い、判断、行動の流れを一貫して捉え、その質を高めていくための考え方です。この視点を取り入れることで、「使いやすい」「分かりにくい」といった主観的な評価をそのまま結論とせず、なぜその評価に至るのかを構造的に説明できるようになります。結果として、UXやUIに関する議論は感覚論から離れ、再現性のある検討へと近づきます。 

企業やチームがHCIを理解することは、UXの質を高めるだけでなく、開発プロセス全体の安定性にも寄与します。ユーザーの認知や行動を前提に設計を検討することで、手戻りを減らし、KPIとの関係を整理しやすくなります。また、「なぜこの設計が必要なのか」をユーザー視点で説明できるため、部門間の意思決定や合意形成が円滑になります。HCIは、UXを個人の経験や感覚に依存させず、組織として継続的に改善していくための共通基盤となります。 

さらにHCIの考え方は、プロダクト設計に限らず、SEOやコンテンツ設計にも応用できます。検索行動や読解の流れも、人と情報の相互作用として捉えられます。ユーザーがどのような疑問を持ち、どの順序で理解を深めていくのかを意識し、評価と改善を繰り返す姿勢は、HCIの反復的な考え方と一致します。HCIを意識することは、常にユーザー理解に立ち戻りながら、体験の質を高め続けるための指針となります。 

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