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定性データとは?定量データとの違い・収集方法・分析の進め方をわかりやすく解説

定性データは、数値では捉えきれない「なぜそうなったのか」を理解するための重要な材料です。離脱の理由、操作中に迷った瞬間、言語化しにくい不安や違和感など、ユーザー体験の「原因側」を掘るのに適しています。数字が示すのはあくまで結果ですが、定性データを補うことで、その背後にある思考や感情の流れ、判断に至る過程が見えてきます。一方で、個別の声に引っ張られすぎると印象論に陥りやすく、意思決定が主観的になるリスクもあります。 

実務で定性データを活かすには、最初に「何を明らかにしたいのか」という問いを明確に置くことが欠かせません。そのうえで、収集→整理→施策化→定量で検証、という流れを作ると活用が安定します。定性データは結論を直接出すためのものではなく、改善仮説の精度を高め、検証すべき論点を絞り込むために使うのがポイントです。 

本記事では、定性データの定義から、定量データとの違い、代表的な例、主な収集方法、分析の進め方、そしてよくある失敗までを整理します。概念説明にとどまらず、現場でどのように扱えば意思決定に結びつくのかを意識しながら、実務で使える形に落とし込んでいきます。 

1. 定性データとは 

定性データとは、数値では表しにくい、人の感じ方や考え方、行動の背景を捉えるデータのことです。ユーザーの発言、自由記述のコメント、インタビュー内容、行動観察のメモなどが代表例です。「なぜそう思ったのか」「どこで迷ったのか」といった、意味や文脈を含む情報を扱います 

定性データの強みは、数字だけでは見えない理由や気づきを得られる点にあります。想定していなかった課題や、新しいニーズ、ユーザーの本音が見えることも多く、仮説づくりや課題発見の起点として重要な役割を果たします。 

特徴 

観点 

内容 

表現形式 発言、文章、観察記録、自由回答 
主な対象 感情、理由、考え方、行動の背景 
強み 文脈理解・新しい発見・仮説構築 
活用場面 UXリサーチ、課題発見、改善案検討 
注意点 主観が入りやすく、一般化しにくい 

 

一方で、定性データは個人差や状況の影響を受けやすく、そのままでは一般化しにくいという特徴もあります。そのため実務では、定量データと組み合わせながら解釈し、意味づけを行うことが求められます。 

 

2. 定性データと定量データの違い 

定性データと定量データは、対立するものではなく、役割が異なるデータです 
定性データは出来事の背景や意味を理解するための情報であり、定量データは起きている事実や規模を客観的に把握するための情報です。どちらか一方だけでは、判断が偏りやすくなります。 

そのため実務では、両者を組み合わせて使うことが重要です。定量データで全体像や変化を捉え、定性データでその理由や文脈を補うことで、分析や意思決定の精度が高まります。 

観点 

定性データ 

定量データ 

何が分かるか なぜ起きたかどう感じたか 何が起きたかどれくらい起きたか 
データの形 発言、文章、観察、記録 数字、割合、回数、スコア 
強み 理由や文脈を理解でき、新しい発見につながる 比較・検証・傾向把握がしやすい 
弱み 主観が入りやすく、一般化しにくい 背景や理由が見えにくい 

 

実務では、「定量データで異常や変化を見つけ、定性データで原因を掘り下げる」という流れが効果的です。この順序を意識することで、思い込みによる判断を避け、納得感のある改善につなげやすくなります。 

 

3. 定性データの代表例 

定性データは、数字では見えない「なぜそうなったか」を補うための情報です。UXやマーケ、CSなど幅広い領域で使われ、離脱や不満の理由、迷いの瞬間、意思決定の背景といった“原因”を掘り下げるのに向いています。定量データが「何が起きたか」を示すのに対し、定性データは「なぜ起きたか」を説明しやすいのが強みです。 

ただし、同じ「文章」でも目的を決めずに集めると使いにくくなります。先に「何を明らかにしたいか」という問い(例:どこで不安になるか、どの表現が誤解を生むか、なぜ比較が止まるか)を置くと、収集・整理・意思決定までが一気に進みやすくなります。 

 

3.1 ユーザーインタビューの発言 

ユーザーが感じている価値、迷い、不安、期待値を言語として得られる代表的な定性データです。特に、購入や申込みの判断基準、機能の使いどころ、他サービスとの比較理由など、行動の背景を深掘りできます。定量だけでは見えない「なぜその選択をしたか」を掴むのに有効です。 

一方で、発言は「実際の行動」とズレることもあります。そのため、インタビューは感想収集ではなく、具体的な行動の再現(いつ・どこで・何を見て・なぜ)を引き出す質問設計が重要です。問いを固定すると、同じテーマで比較可能な知見が溜まりやすくなります。 

 

3.2 アンケート自由記述 

自由記述は、選択肢では拾えない違和感や不満の芽を見つけるのに向いています。特に、低評価の理由、改善要望、分かりにくかった点などがストレートに出やすく、早期警報として機能します。CSATやNPSなどの数値とセットで読むと、体験のどこが弱いかの当たりがつきやすくなります。 

ただし、自由記述はノイズも多く、感情的な表現に引っ張られやすいです。頻出テーマの分類、具体的な場面の抽出、定量指標との突合(離脱地点・エラー率)を行うと、意思決定に使える形になります。自由記述は「声の大きさ」ではなく「再現性のあるパターン」を探すのがコツです。 

 

3.3 ユーザビリティテストの観察メモ 

ユーザビリティテストは、ユーザーが実際に操作する様子から、迷い・誤解・停止の瞬間を直接観察できる定性データです。発言より行動が優先されるため、「言っていないが詰まっている」問題を見つけやすいのが強みです。特に、導線が弱い箇所、情報が埋もれている箇所、エラー復旧ができない箇所が露出しやすく、改善点が具体化します。 

観察メモは、感想ではなく「どこで止まったか」「何を探したか」「なぜ戻ったか」を行動として記録するのが重要です。動画や画面録画と合わせて残すと、チーム内で解釈が揃いやすくなります。テストは少人数でも効果が出やすいですが、問い(検証したい仮説)を先に置くほど学びが深くなります。 

 

3.4 問い合わせ内容(CSログ) 

CSログは、実運用で発生した困りごとの集積であり、UX課題の宝庫です。ユーザーは困ったときにしか問い合わせないため、ログには「どこが分からないか」「どの条件が不透明か」「例外時にどう詰まるか」が濃く出ます。特に、返品・配送・決済・アカウント周りなど、不安が出やすい領域の改善に直結します。 

活用のコツは、件数だけではなく「理由の分類」を行うことです。問い合わせをテーマ別に分類し、発生画面・発生工程・発生条件まで紐づけると、改善優先度が決めやすくなります。CSログは定量指標(問い合わせ率、対応時間)とも接続しやすいため、改善の効果検証まで一気に繋げられます。 

 

3.5 レビューや口コミの文章 

レビューや口コミは、購入後のギャップや満足点が自然な言葉で表れやすい定性データです。特にECでは、サイズ感、使用シーン、期待とのズレ、配送体験など、商品説明だけでは補えない情報が集まります。レビューの内容は、商品ページの改善やFAQ整備、返品条件の見せ方などに直結しやすいです。 

一方で、レビューは極端な意見が目立つこともあります。星評価だけで判断せず、頻出テーマの抽出、ポジ・ネガのバランス、具体性の有無(状況・条件)を見て整理すると、施策に落としやすくなります。レビューは「評価」ではなく、体験の学習データとして読むと改善に効きます。 

 

3.6 営業・カスタマーサクセスのヒアリング記録 

営業やCS(カスタマーサクセス)が日々得ている顧客の声は、導入障壁や解約理由、期待値のズレなどを含む重要な定性データです。特にBtoBでは、購買プロセスや社内稟議、導入後の定着課題が強く反映され、プロダクト改善だけでなくオンボーディングやドキュメント改善にも繋がります。 

この情報は属人化しやすい点が落とし穴です。記録フォーマットを揃え、困りごと・背景・影響・要望を一定の粒度で残すと、分析可能なデータになります。現場のヒアリングは「散発的な声」ではなく「継続的な洞察」になるため、問いを固定して蓄積することが最も効きます。 

 

 

4. 定性データの収集方法 

定性データは、数字では見えない「なぜそうなったか」を掘るための材料です。定量データが「何が起きたか」を示すのに対し、定性データは迷い・不安・誤解・期待値のズレといった“原因側”を説明しやすいのが強みです。ただし、目的を決めずに集めると「良い話はあるが意思決定に使えない」状態になりがちなので、先に問い(何を明らかにしたいか)を置いてから収集すると精度が上がります。 

ここでは、実務で使われる代表的な収集方法を3つに整理します。導入のしやすさだけでなく、「どんな問いに強いか」という観点で使い分けると運用が安定します。 

 

4.1 インタビュー 

インタビューは「なぜそうしたのか」「何が不安だったのか」を深掘りできる王道の方法です。ユーザーが判断した背景、比較の基準、選ばなかった理由、途中でやめた理由など、行動ログだけでは掴みにくい内面を言語として取れます。特に、意思決定の理由や期待値の形成プロセスを把握したいときに強く、UX改善の仮説づくりに向いています。 

精度を左右するのは、前提の固定と誘導しない質問設計です。結論を聞くより「そのとき何を見て、どう考えて、なぜ止まったか」を具体的に再現させる質問が有効です。質問が評価型(「分かりやすかったですか?」)だと気遣い回答が増えるため、行動再現型(「何を探していましたか?」)に寄せます。インタビューは答えを作る場ではなく、設計の仮説を強くする材料を集める場として設計するとブレません。 

 

4.2 観察・ユーザビリティテスト 

観察とユーザビリティテストは、ユーザーが実際に操作する様子を見ることで、本人も言語化できないつまずき(迷い・誤解)を拾える方法です。ユーザーは「分からない」とは言わずに止まったり戻ったりすることが多く、ログだけでは意図が分からないケースがあります。観察はその瞬間を捉えられるため、導線・情報配置・状態表示・エラー復旧など、UIの具体的な改善点が見つかりやすいのが強みです。 

運用のコツは、自由に見せるのではなく、検証したいシナリオを固定することです。「比較して購入する」「申込みを完了する」など、重要タスクを設定し、どこで止まるかを観察します。発話(考えていること)と行動(操作)をセットで記録すると、改善に変換しやすくなります。観察は少人数でも価値が出やすい一方、問いが曖昧だと学びが散るため、目的に沿った設計が重要です。 

 

4.3 自由記述・レビュー・問い合わせ 

自由記述、レビュー、問い合わせは、すでに蓄積されている場合が多く、低コストで始めやすい収集源です。特に、購入後のギャップ、条件の不透明さ、例外時の詰まりなど、現場の“痛み”が強く出ます。ユーザーが困ったときに発生する情報なので、改善の優先順位が高い問題を見つけやすく、UXの早期警報として機能します。 

効果を出すには、読み物として消費せず、頻出パターンの抽出を行うことが重要です。テーマ別に分類し、発生工程(どの画面・どのタイミング)と紐づけると、改善の打ち手が具体化します。問い合わせは定量指標(件数、対応時間)とも接続できるため、改善の効果検証まで一気に設計しやすいのが強みです。既存データは「集める」より「整理して使える形にする」ことで価値が出ます。 

 

5. 定性データ分析の進め方 

定性データは、数字では見えない「なぜそうなったか」を掘るための材料です。しかし「読んで終わり」にすると再現性が出ず、結局は印象論で終わります。実務で定性を強く使うには、観察や発言を「設計判断に変換できる形」へ整える必要があります。分析は基本的に、整理→分類→意味づけ(施策化)の順で進めると、学びが残りやすくなります。 

ここでは、現場で回しやすい3ステップとして「コーディング」「パターン抽出」「施策変換」を整理します。どれも重い研究手法ではなく、チームで継続できる運用を前提にしています。 

 

5.1 コーディング(ラベル付け) 

発言や記述にタグを付け、後から分類・集計できる形に整えます。タグは「不安」「価格」「操作ミス」「情報不足」のように、UX上の摩擦や判断軸が分かる粒度にします。自由記述やインタビューは言葉がバラバラなので、まず同じ観点でラベル化しないと比較できません。コーディングは定性を「検索可能なデータ」に変える工程です。 

実務では、ラベルを増やしすぎないことが重要です。最初は粗いラベルで揃え、必要に応じてサブラベル(例:「不安」→「送料」「返品」「個人情報」)に分けます。さらに、発生箇所(画面・工程)とセットで記録すると、「どこで何が起きているか」が後から追いやすくなります。タグの統一ができるほど、定性データは意思決定に使える形になります。 

 

5.2 パターン抽出(共通点を探す) 

ラベル付けしたデータを束ね、共通する「よくある理由」を作ります。ここで重要なのは、単に似た言葉を集めるのではなく、同じ摩擦が違う表現で現れていないかを見抜くことです。例えば「怖い」「不安」「よく分からない」は別の言葉でも、背景は「条件が不透明」「復旧できない」など同一原因の可能性があります。パターン化できるほど、改善の優先順位が明確になります。 

この工程では「頻度」だけで判断しないことが重要です。少数でも影響が大きい問題(決済不信、個人情報入力、不可逆操作の恐怖など)は、放置すると離脱とクレームに直結します。頻度は参考にしつつ、インパクト(成果への影響、再発率、復旧コスト)で重み付けするのが実務的です。パターン抽出は「声の大きさ」ではなく「構造」を見つける作業です。 

 

5.3 施策に変換(改善仮説に落とす) 

定性データは「気づき」で終わらせず、具体施策に変換して初めて価値になります。パターンとして整理した理由を、UI変更、情報追加、導線改善、例外設計、文言改善などの改善仮説に落とし込みます。このとき「何を変えるか」だけでなく、「なぜそれで改善するはずか」を一文で書けると、検証がブレにくくなります。 

施策化のコツは、行動単位で書くことです。例えば「送料が不安」なら「PDPとカートで総額と条件を先出しする」「0円までの残額を提示する」など、ユーザーの次の行動が前に進む形に変換します。最後に、定量指標(フォーム完了率、離脱率、問い合わせ率など)を紐づけて検証設計まで入れると、定性が再現性のある改善ループになります。定性分析は「納得」ではなく「改善の設計図」へ変換できるほど強くなります。 

 

6. 定性データ活用でよくある失敗 

定性データは、UX改善やマーケ改善で「なぜそうなったか」を掘るのに強い一方、扱い方を誤ると印象論で終わりやすい領域です。発言や文章は説得力が強いので、うまく整理しないと「それっぽい結論」に引っ張られ、意思決定がブレます。定性は仮説づくりに強い一方、最終判断は定量で検証する流れが最も安定します。 

ここでは、定性データ活用で起きやすい失敗を4つに整理します。どれも一度ハマると改善が感覚に戻りやすいので、運用ルールとして避けるのが有効です。 

 

6.1 少数の声を一般化してしまう 

定性は具体的で刺さる言葉が出るほど、全体傾向だと錯覚しやすいです。特に強い不満や強い称賛は印象に残り、チームの意思決定を動かしやすい一方で、実際には一部のケースでしか起きていない可能性があります。少数の声を一般化すると、改善が本質からズレ、むしろ多くのユーザーにとって使いにくい変更になることがあります。 

防ぐには「どの層の声か」を必ず紐づけることです。新規/既存、デバイス、流入、利用頻度などのセグメントと合わせて扱い、同じテーマが複数のソースで再現されているか確認します。定性は“代表性”が弱い前提なので、一般化の前に再現性と影響範囲を点検する姿勢が重要です。 

 

6.2 インタビューが誘導質問になっている 

質問が誘導的だと、都合の良い答えが集まり、現実とズレた結論になります。たとえば「このUIは分かりやすいですか?」のような聞き方は、相手を評価者にしてしまい、気を遣った回答が増えます。さらに、設計者が期待する方向へ話を寄せる質問を重ねると、仮説の確認になってしまい、新しい発見が出にくくなります。 

対策は、評価ではなく行動を引き出す質問に寄せることです。「さっき何を探しましたか」「次に何をしようと思いましたか」「なぜそこで止まりましたか」のように、具体的な状況を再現させます。インタビューは答えを作る場ではなく、観察できない行動の背景を補う場として設計すると、誘導が減ります。 

 

6.3 分類せず、読み物として消費して終わる 

定性データをそのまま読むだけだと、学びがチームに蓄積しません。文章は理解した気になりやすい一方で、共通点や頻出原因が抽出されず、次の意思決定に繋がらないことが多いです。結果として、毎回同じ議論を繰り返し、改善の速度が上がりません。 

定性は「検索可能なデータ」に変換して初めて強くなります。コーディング(ラベル付け)、パターン化、発生工程の紐づけを行い、「よくある理由」を作ります。読み物ではなく、再利用できる設計資産として扱うことで、改善が積み上がる状態になります。 

 

6.4 定量検証につなげず「それっぽい結論」で止まる 

定性だけで結論を出すと、意思決定が不安定になります。定性は仮説生成に強い反面、効果の大きさや優先順位を決めるには不十分です。にもかかわらず「ユーザーがこう言っていたから」という理由で施策を確定すると、影響が限定的だったり、副作用が出たりして、後から修正コストが増えます。 

安定する流れは、定性で仮説を作り、定量で検証して再現性を作ることです。フォーム完了率、離脱率、エラー率、問い合わせ率などの指標に仮説を紐づけ、A/Bテストや段階リリースで確認します。定性は「確信」ではなく「仮説の種」であり、最後は定量で裏付ける運用にすると、判断が強くなります。 

 

おわりに 

定性データは、ユーザーの迷い・不安・誤解といった体験の裏側にある「理由」を捉えられる一方で、そのままでは一般化しにくいという性質があります。個々の発言や行動は示唆に富んでいても、単発の声として扱うだけでは施策につながりにくくなります。だからこそ、コーディング(ラベル付け)→パターン抽出→施策仮説、というプロセスを通じて、再利用できる知見の形に整えることが重要です。 

運用として最も安定するのは、定性データで仮説を立て、定量データで検証し、再現性を確認する流れです。フォーム完了率、離脱率、エラー率、問い合わせ率などの指標に接続できると、改善は単なる納得感のある結論ではなく、成果として説明できるものになります。定性と定量を行き来することで、判断の根拠も共有しやすくなります。 

定性データを単なる「読み物」で終わらせず、「問い→収集→整理→施策→検証」というループに組み込むことが重要です。この循環が回り始めると、UX改善は場当たり的な対応ではなくなり、意思決定の精度そのものを一段引き上げる土台になります。 

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