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Chain-of-Thought(CoT)とは?仕組み・特徴・活用法を解説

Chain-of-Thought(CoT)とは?仕組み・特徴・活用法を解説

AIの出力が正確で論理的であるためには、単に答えを求めるのではなく、「考えるプロセス」を明示的に促すことが重要です。そのために有効なのが「Chain-of-Thought(思考連鎖)プロンプティング」と呼ばれる手法です。

この方法では、AIに最終回答だけを求めるのではなく、「答えに至るまでの思考過程」を段階的に説明させます。AIはステップごとに推論を行うため、複雑なタスクでも矛盾の少ない、整合性の取れた出力を生成できます。

本記事では、この思考連鎖プロンプティングの仕組み・特徴・実例・活用法を体系的に解説し、他のプロンプト手法との違いも整理します。 

1. Chain-of-Thought(CoT)プロンプティングとは?

Chain-of-Thoughtプロンプティング(以下、CoT)は、AIに対して「考えるプロセス」を明示的に書かせるプロンプト設計の手法です。 

通常のプロンプトでは、AIは最終的な答えだけを出力しますが、CoTでは「まず思考過程を説明し、その後に結論を書く」という手順を求めます。これにより、AIは問題を段階的に分析しながら回答を導きます。 

AIに「理由を説明させる」ことが、出力の整合性・再現性を高める鍵となるのです。 

 

Chain-of-Thoughtプロンプティングの特徴 

項目 

内容 

概要 AIに思考過程(理由・推論ステップ)を明示的に出力させる手法。 
長所 複雑な問題に対して、論理的で一貫した回答を導ける。 
短所 処理時間と出力量が増えるため、簡易タスクには不向き。 
適したタスク 数学的推論、分析、判断説明、戦略立案、論理的説明が必要な質問。 
利用目的 結論の根拠を明確化し、AIの“考え方”を可視化する。 
運用のコツ 「ステップごとに考える」「理由を説明してから答える」と明示する。 

CoTは特に、推論・計画・分析・意思決定など、AIに“考える力”を発揮させたい場面で強みを発揮します。 

 

2. Chain-of-Thought(CoT)プロンプティングの仕組み  

Chain-of-Thought(CoT)プロンプティングの推論プロセスは、AIが思考を段階的に展開しながら結論に至るように設計されています。 

単に「答えを出す」ことを目的とするのではなく、「どのようにしてその答えに至ったのか」という思考の流れを文章として表現する点に特徴があります。 

このプロセスは、次の3つのステップで構成されています。 

Chain-of-Thoughtプロンプティングの仕組み

 

2.1 問題の理解 

まず、AIは与えられた課題を正確に把握し、解決すべき本質を明らかにします。ここでは質問の意図や前提、制約を整理し、どの方向で思考を進めるかを定めます。 

問題設定が曖昧な場合でも、Chain-of-ThoughtはAIが推論の文脈を補い、適切な仮定や焦点を自ら設定する助けになります。 

 

2.2 ステップごとの推論 

次に、AIは複雑な論理や計算を複数の思考ステップに分解し、順を追って考える段階に入ります。 

このプロセスでは、AIが「理由 → 仮定 → 検証 → 結論」という流れを段階的に展開し、論理の一貫性を保ちながら推論を進めます。 

人間が「一歩ずつ考える」ように、AIも各ステップを言語化することで、より正確で誤りの少ない結論へと導かれます。 

 

2.3 解答の生成 

最後に、AIはこれまでの推論をもとに、明確で整合性のある結論を導き出します。ここで生成される出力は、単なる「答え」ではなく、思考の過程を含んだ説明的な内容となります。 

このように、Chain-of-Thoughtを用いることで、AIがどのような論理でその答えに至ったのかを確認でき、より信頼性と説明性の高い出力が得られます。 

Chain-of-Thoughtプロンプティングは、AIが「理解 → 推論 → 結論」という3段階を順に踏むことで、思考の流れを明確化し、より論理的で一貫性のある回答を導き出す手法です。 

 

3. Chain-of-Thought(CoT)の種類  

Chain-of-Thought(CoT)プロンプティングは、AIが段階的に思考を展開しながら結論に至る仕組みとして、多方面で発展してきました。目的やタスクの特性に応じて、多様なバリエーションが登場しており、論理的推論、創造的発想、分析的判断など、さまざまな応用に対応しています。 

発展型CoTは、単なる出力精度の向上にとどまらず、AIが情報を整理し、根拠をもって推論を構築する過程をより洗練されたものにします。これにより、モデルは複雑な問題に対しても、より深い理解と一貫性のある回答を導き出すことが可能になっています。 

Chain-of-Thought(CoT)の種類

種類 

推論対象 

主な利点 

主な課題 

活用例 

Zero-shot CoT 

単一モダリティ(テキスト中心) 

例なしでも柔軟な推論が可能 

出力の一貫性にばらつきが出る 

一般知識問答、説明生成 

Few-shot CoT 

テキスト中心(例示あり) 

一貫性と精度が高い 

例の質・数に依存 

数学推論、論理説明、翻訳 

Automatic CoT 

自動生成された思考経路 

推論を自律化・効率化できる 

探索範囲の制御が必要 

数学・業務ロジックタスク 

Multimodal CoT 

テキスト+画像+音声など 

現実的な判断が可能、応用範囲が広い 

モダリティ統合の難易度が高い 

画像QA、動画理解、マルチメディア分析 

 

3.1 Zero-shot CoT 

Zero-shot Chain-of-Thought(ゼロショット思考連鎖)は、AIが事前の例示や追加学習なしで自律的に推論を行う手法です。 

通常のZero-shotプロンプティングに「考え方を説明してから答える」という指示を加えるだけで、AIは内部知識を基に思考プロセスを展開します。 

モデルが持つ既存の知識を最大限に活用できるため、特別なデータセットやトレーニングがない状況でも高い柔軟性を発揮します。 

項目 

内容 

概要 

追加学習や例示なしで、AIに推論過程を明示的に出力させる手法。 

長所 

既存知識をそのまま活用できる。新しいタスクにも即応可能。 

短所 

思考の方向性が曖昧になりやすく、結論のばらつきが出る場合がある。 

適したタスク 

一般知識に基づく質問応答、推論説明、論理的説明タスク。 

利用目的 

簡潔なプロンプトでAIに「理由づけ」を行わせ、判断根拠を得る。 

運用のコツ 

指示文を明確にし、「ステップごとに考えてください」と具体的に促す。 

例: 

「フランスと国境を接し、赤と白の旗を持つ国の首都はどこですか?」 

Zero-shot CoTを使うAIは、「赤と白の旗 → スイス → 首都ベルン」と内部知識を連鎖させて導きます。 

このように、Zero-shot CoTは未知領域にも対応可能な汎用的推論手法です。 

 

3.2  Few-shot CoT 

Few-shot Chain-of-Thought(フューショット思考連鎖)は、いくつかの思考例(デモ)を事前に与えることで、AIの推論精度と一貫性を高める手法です。 
Zero-shot CoTがAIの既存知識に依存するのに対し、Few-shot CoTは「こう考えればよい」という具体的な思考パターンを示すことで、AIに理想的な推論の“型”を学習させます。 

特に、論理構造が複雑な問題や、出力フォーマットを統一したい場面で強力な効果を発揮します。人間がいくつかの良質な例を提示するだけで、AIの思考の方向性が安定し、誤推論のリスクを大幅に減らせます。 

項目 

内容 

概要 

複数の推論例を提示して、AIに一貫した思考過程と出力形式を学ばせる手法。 

長所 

出力の安定性が高く、複雑なタスクにも高精度で対応可能。 

短所 

提示例の質や数に結果が左右されやすい。 

適したタスク 

数学的推論、段階的説明が必要な問題、論理作文、言語翻訳。 

利用目的 

明示的な思考例を通じて、AIの推論プロセスを安定化・標準化する。 

運用のコツ 

3〜5件の高品質な思考例を用意し、形式・語調・手順を統一する。 

例: 

以下のように、AIにいくつかの「思考+回答」の例を与えてから新しい質問を出します。 

例1: 
質問:3と5を足すといくつですか? 
思考:3 + 5 = 8 
答え:8 

例2: 
質問:7と2を足すといくつですか? 
思考:7 + 2 = 9 
答え:9 

新しい質問: 
質問:6と4を足すといくつですか? 
→ Few-shot CoTを使うAIは、与えられた例の思考形式を模倣し、 
思考:「6 + 4 = 10」 → 答え:「10」

という一貫した出力を生成します。 

 

3.3 Automatic CoT 

Automatic Chain-of-Thought(Auto-CoT)は、思考連鎖の生成と選択をAI自身に任せる自動化手法です。 

人間が個別に推論ステップを設計する必要がなく、AIが複数の思考経路を自動生成・評価し、最適なパスを選び取ります。 

これにより、CoT設計の手間を省きながら、スケーラブルかつ一貫性のある推論を実現できます。 

項目 

内容 

概要 

AIが複数の推論経路を自動生成・選択して、最適な思考を導く手法。 

長所 

推論設計の自動化により、再現性と効率性が高い。 

短所 

モデルの探索範囲が広すぎると、思考の方向が拡散する可能性がある。 

適したタスク 

計算、論理パズル、ステップ型問題解決、業務自動化。 

利用目的 

思考過程を自動化し、AIの論理構築を省力化する。 

運用のコツ 

評価基準(スコアリング)を設定し、有効な推論経路を限定する。 

例: 

「5個のリンゴを買い、すでに3個持っている場合、合計はいくつですか?」 

Auto-CoTは、「3個ある → 5個追加 → 合計8個」という推論ステップを自動生成・選択します。 

このプロセス全体をAIが自己完結的に行うため、人間の介入が最小限で済みます。 

 

3.4 Multimodal CoT 

Multimodal Chain-of-Thought(マルチモーダル思考連鎖)は、テキスト・画像・音声など複数モダリティの情報を統合して推論を行う拡張型CoTです。 

従来のテキスト中心の思考連鎖を超え、AIが異なる情報源を組み合わせて考えることで、より人間に近い理解・判断が可能になります。 

項目 

内容 

概要 

テキスト・画像・音声などの多様な情報を統合して推論を行う手法。 

長所 

視覚や音声を含む複雑な状況判断に強く、現実的な思考が可能。 

短所 

モデル間の情報統合が難しく、誤解釈のリスクがある。 

適したタスク 

画像理解、動画分析、マルチメディアQA、感情分析。 

利用目的 

異なるデータ形式を組み合わせて、多層的な推論を行う。 

運用のコツ 

モダリティごとの情報重みづけを調整し、バランスの取れた推論を促す。 

例: 

混雑したビーチの写真を提示し、「このビーチは夏も人気がありそうですか?」と尋ねると、 

マルチモーダルCoTを採用したAIは、 

  • 画像から:人の密度・天候・明るさを分析し、 

  • テキスト知識から:季節ごとの観光傾向を参照、 

「晴天で人が多いため、夏も人気が続くと推測されます」といった説明的推論を生成します。 

マルチモーダルCoTは、AIが世界を“読む”だけでなく“見る・聞く・考える”段階へと進化するための重要なステップです。 

 

4. Chain-of-Thought(CoT)プロンプティングの例 

Chain-of-Thought(思考の連鎖)プロンプティングは、AIに「答え」だけでなく「思考の過程」も明示的に出力させる手法です。 

以下では、その仕組みを具体的に理解できるよう、4つの例を紹介します。 

 

例1:数学の推論問題 

プロンプト: 
次の問題を解く過程を説明しながら答えてください。 
「あるクラスには男子が12人、女子が8人います。クラス全員の中から3人を選ぶ組み合わせは何通りですか?」 

出力: 
まず、クラス全員の人数は12 + 8 = 20人。 
この20人の中から3人を選ぶ組み合わせの数は、 
20C3 = 20 × 19 × 18 ÷ (3 × 2 × 1) = 1140通り。 
したがって答えは1140通りです。 

 

例2:論理的推論(文章理解) 

プロンプト: 
次の文を読んで、誰がケーキを食べたのかを推論してください。 
「太郎はケーキを焼いたが、甘いものが嫌いなので食べなかった。花子はダイエット中で我慢した。次郎は甘いものが大好きだ。」 

出力: 
太郎はケーキを焼いたが食べていない。 
花子はダイエット中なので食べていない。 
残る次郎は甘いものが好きなので、ケーキを食べた可能性が高い。 
したがって、ケーキを食べたのは次郎です。 

 

例3:文章要約(段階的思考) 

プロンプト: 
次の段落を短く要約してください。まず内容を整理してから最終的な要約を出してください。 
「AI技術は日々進化しており、教育分野でも活用が広がっている。AIは学習データを分析し、個々の生徒に合った学習プランを提案することが可能である。」 

出力: 
内容整理: 
AIは進化している 
教育での活用が増えている 
学習データを分析して個別プランを作る 

最終要約: 
AIは教育現場で個別学習を支援している。 

 

例4:感情分析(思考を説明) 

プロンプト: 
次の文の感情を分析し、理由も説明してください。 
「やっと試験が終わった!今夜は友達と遊びに行くぞ!」 

出力: 
「やっと試験が終わった」→試験のストレスから解放された安心感。 
「今夜は友達と遊びに行くぞ」→楽しみ・喜びの感情。 
全体としてポジティブな気分が表れている。 
したがって、この文の感情は喜び・開放感です。 

これらの例から、Chain-of-Thoughtプロンプティングは思考過程を可視化し、論理的な出力を導く有効な手法であることがわかります。 

この特性を活かすことで、業務上の意思決定や複雑な分析作業など、実務のさまざまな場面で効果的に応用することが可能です。 

 

5. Chain-of-Thought(CoT)の活用方法 

CoTは「AIに考えさせる設計」です。そのため、以下のような実務シーンで非常に効果的です。 

Chain-of-Thought(CoT)の活用方法

5.1 複雑な分析タスクに適用する 

複数の条件を比較・整理するような業務分析において、AIがステップごとに理由を示すことで、判断の根拠を可視化できます。 

 

5.2 意思決定や戦略立案に活用する 

選択肢の比較・長所短所の整理・結論の導出といったタスクでは、AIが段階的に考えることで、より客観的で説得力のある提案を行えます。 

 

5.3 Chain-of-ThoughtとFew-shotを組み合わせる 

思考過程をFew-shotで例示することで、AIがより高度な論理構成を模倣できるようになります。 

例: 
【例1】質問:数字の合計を求めてください。 
思考過程:各数字を順に足していく。 
答え:15 

このように、「思考+結論」をパターン化して示すと、AIの推論精度が格段に向上します。 

 

5.4 教育・トレーニング分野への応用 

学習者が「なぜその答えに至ったのか」を理解するために、AIが思考過程を丁寧に説明することで、思考力や問題解決力の育成に役立ちます。特に、数学・論理・言語教育などで効果的に活用できます。 

 

5.5 コンテンツ生成の質を高める 

ストーリー構築や記事執筆などの創造的タスクでも、CoTを使うことで構成の一貫性や論理的展開が向上します。AIが段階的にアイデアを整理し、より自然で説得力のある文章を生み出せます。 

 

5.6 説明可能なAI(XAI)への橋渡し 

Chain-of-Thoughtは、AIの「なぜそう答えたのか」を人間が理解できる形で示す点で、説明可能なAI(Explainable AI)と深く関連しています。思考過程の可視化は、AIへの信頼性向上にもつながります。 

 

6. Chain-of-Thought(CoT)の選び方 

Chain-of-Thought(CoT)の選び方

Chain-of-Thoughtを使うべきかどうかは、タスクの複雑さと必要な説明性で判断します。 

判断基準 

CoTを使うべき場合 

CoTを使わない方が良い場合 

タスクの性質 推論・分析・説明が必要な場合 短文・単純な指示の場合 
目的 理由やプロセスを明確にしたい 結果だけを素早く得たい 
出力形式 段階的説明+結論 結論のみ 
業務例 レポート作成、意思決定支援、分析報告 翻訳、分類、短文生成 
運用上の注意 出力が長くなるため、トークン上限に注意 シンプルな命令では逆効果 

Chain-of-Thoughtは「考えるプロセス」を重視するタスクでこそ真価を発揮しますが、単純な処理や即時応答が求められる場合には、むしろ効率を損なう可能性があります。タスクの目的と性質を見極め、適切に使い分けることが重要です。

 

おわりに

Chain-of-Thoughtプロンプティングは、AIの推論過程を明示的に表現させることで、出力の論理性と説明性を向上させる手法です。AIが単に結論を提示するのではなく、思考の各ステップを順序立てて示すことによって、結果の根拠をより明確に示すことができ、出力内容の信頼性が高まります。

この手法は、複雑な推論や多段階の判断を必要とするタスクにおいて特に有効に機能します。思考の流れを構造的に可視化することで、AIの内部論理を検証しやすくなり、誤った推論の発見や修正を容易に行うことができます。また、プロンプト設計の段階でAIの思考方向を意図的に誘導できるため、より安定した出力を得ることが可能になります。

Chain-of-Thoughtプロンプティングは、AIの応答を「結果重視」から「過程重視」へと転換させるための重要な技術であり、高度な言語処理や意思決定支援など、多様な応用分野で基盤的な役割を果たしています。

 

よくある質問

Q
Chain-of-Thought(CoT)はどのような場面で最も役立ちますか?
A

Chain-of-Thoughtは、AIに「なぜその結論に至ったのか」という思考過程を明示的に促す手法です。そのため、論理的な説明や根拠が求められるタスクにおいて特に有効です。 

たとえば、データ分析レポート、ビジネス戦略提案、学術研究の要約、リスク評価、あるいは意思決定プロセスの支援などで、AIの推論を可視化することにより、説明責任(Explainability)と透明性(Transparency)を確保できます。 

また、CoTを適切に活用することで、モデルの推論バイアスを減らし、出力の一貫性や再現性を向上させることも可能です。 

Q
Zero-shotやFew-shotプロンプティングと組み合わせて使えますか?
A

はい、非常に効果的です。 

Zero-shot設定では、明示的に「考え方を説明してから最終的な答えを出してください」などの指示を加えることで、簡易的なCoT(Light CoT)を形成できます。これは、追加データなしでAIに推論のステップを促す最も手軽な方法です。 

一方、Few-shotプロンプティングと組み合わせると、AIに特定の思考パターン(Reasoning Pattern)を学習させることができ、出力の一貫性・精度が大幅に向上します。たとえば、既存の分析事例や模範的な推論プロセスを数例提示することで、AIがそれを模倣し、より「人間的な推論フロー」を再現できるようになります。 

Q
出力が長くなりすぎた場合はどうすれば良いですか?
A

Chain-of-Thoughtを有効化すると、AIは内部的な思考過程を詳細に展開しようとするため、出力が冗長になる場合があります。 

その際は、プロンプト内で以下のような制御を加えると良いでしょう: 

  • 「思考過程は簡潔に要約してください」 

  • 「根拠は3点以内で述べてください」 

  • 「最終回答のみに重点を置いて説明してください」 

この種の出力制御指示(Output Constraints)を設定することで、AIは思考を整理し、重要な論点のみを抽出して提示します。 

また、業務用途では「内部思考を生成するが、出力には含めない」という形式(例:Let's think step by step, but only show the final answer.)を用いることで、精度を維持しつつコンパクトな応答を得ることも可能です。 

Q
Chain-of-Thoughtは業務自動化でどのように活用できますか?
A

非常に広い応用範囲があります。 

AIワークフローにCoTを組み込むことで、各工程での判断根拠を自動生成し、意思決定の透明性を担保することができます。 

たとえば: 

  • 顧客対応ボット(AIチャット)では、回答根拠をCoTによって裏付け、信頼性の高い対応を実現。 

  • レポート生成AIでは、数値分析からの結論導出プロセスを明示し、監査や品質検証を容易化。 

  • 意思決定支援AIでは、シナリオ分析・リスク評価の根拠をステップごとに説明することで、ヒューマン・イン・ザ・ループな判断が可能に。 

CoTは単なる思考トレースではなく、業務知識の構造化・説明可能なAI活用の基盤となります。 

Q
Chain-of-ThoughtはすべてのAIモデルで有効ですか?
A

すべてのAIモデルで一定の効果を得られるわけではありません。 

CoTは特に大規模言語モデル(LLM)のように高い推論性能を持つモデルで効果を発揮します。これは、モデル内部に豊富な言語知識と因果関係の理解構造が存在するためです。 

一方で、小規模モデルやチューニングが限定的なモデルでは、思考ステップが不自然になったり、論理的飛躍が起きやすくなります。 

その場合は、次のような調整が有効です: 

  • プロンプトで「思考テンプレート」を具体的に指定する(例:「①状況分析 → ②選択肢提示 → ③最適解の根拠」)。 

  • モデルの性能に合わせて、思考の深さを制御する(例:「2ステップで推論してください」など)。 

つまり、CoTの真価を発揮するには、モデルの理解力に応じた最適なプロンプト設計が不可欠です。