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システム開発のV字モデル:ウォーターフォールの進化版とは

システム開発のV字モデル:ウォーターフォールの進化版とは

システム開発プロジェクトの成功は、品質、コスト、納期のバランスにかかっています。特に、医療、金融、組み込みシステムなどの高信頼性が求められる分野では、開発工程とテスト工程の明確な対応が不可欠です。V字モデルは、ウォーターフォールモデルを進化させた手法として、各開発工程に対応するテストを体系的に定義し、不具合の早期発見と手戻りリスクの軽減を実現します。 

本記事は、V字モデルを深く理解し、プロジェクトに効果的に適用するためのガイドです。以下では、V字モデルの定義から工程まで、論理的かつデータに基づく解説を展開します。

 

1. V字モデルとは 

V字モデル(V-Model)は、システム開発ライフサイクルを視覚化したモデルで、開発工程(V字の左側)とテスト工程(V字の右側)を対称的に配置します。各開発工程(要件定義、基本設計、詳細設計など)に対応するテスト工程(システムテスト、総合テスト、単体テストなど)が明確に定義され、品質保証を体系化します。

向いているプロジェクト:V字モデルは特に高信頼性が求められるシステム(例:医療機器、航空システム)で標準的に採用されています。  

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2. V字モデルのメリット・デメリット 

V字モデルは、品質保証の強化、進捗管理の容易さ、手戻りリスクの軽減など、ITプロジェクトに明確なメリットをもたらします。 

メリット 

詳細 

① テスト範囲の明確化と品質向上 

V字モデルでは、各開発工程に対応するテストが明確に定義されるため、テストの網羅性が向上します。 

② 手戻りリスクの軽減とコスト削減 

V字モデルの段階的なテストアプローチは、不具合の早期発見を促進し、大規模な手戻りを回避し、プロジェクトの予算超過リスクを軽減します。 

③ 進捗管理の可視化と納期遵守 

V字モデルの段階的進行により、各工程の完了が次の工程の開始条件となるため、進捗管理が容易です。 

メリットが明確なV字モデルですが、課題も存在します。 

デメリット 

詳細 

① 柔軟性の低さ 

V字モデルはウォーターフォール型を基盤とするため、要件変更への対応が難しいです。 

対策 

  • テーラリング:IPAの「共通フレーム2013」を参考に、プロセスをプロジェクト規模や特性に合わせて調整。   

  • ハイブリッドアプローチ要件変更が予想されるフェーズ(例:プロトタイピング)にアジャイル要素を導入。   

  • 変更管理プロセス変更要求を評価・承認する正式なプロセスを確立し、スコープクリープを防止。 

② ドキュメント依存度の高さ 

V字モデルでは、要件定義書や設計書がテストの基盤となるため、ドキュメントの品質が重要です。不十分なドキュメントは、テストでの不具合見逃しに繋がります。 

対策 

  • ドキュメントレビュー:顧客、開発者、テスト担当者による多視点レビューを実施。   

  • テンプレート活用:ISO/IEC 29119(テストドキュメント標準)に準拠したテンプレートを使用。   

  • テスト担当者の早期参画:要件定義段階からテスト担当者を関与させ、テスト観点を反映。 

③ リソース要求量 

V字モデルは、詳細な計画とテスト実施に多くのリソースを要求します。特に中小規模プロジェクトでは、過剰な負担となる場合があります。 

対策 

  • 自動化ツールの導入:テスト自動化ツール(例:Selenium、TestComplete)を活用し、テスト効率を向上。   

  • アウトソーシング:テスト工程の一部を専門ベンダーに委託し、内部リソースを最適化。 

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3. V字モデルの工程 

V字モデルは、下記のように「設計フェーズ(左側)」と「検証フェーズ(右側)」の各工程が1対1で対応し、進行と確認をセットで管理できる点が特徴です。 

開発工程 

主な目的・成果物 

テスト工程 

主な検証内容 

要求設計 

ビジネス要件、非機能要件、成果物一覧 

受け入れテスト 

要求仕様との整合性、受入基準の達成 

基本設計(外部設計) 

ユーザー視点の機能概要、画面UI、I/F設計 

システムテスト 

システム全体の機能・性能テスト 

機能設計(機能分解) 

各機能の責務分担、ユースケース設計 

総合テスト(統合テスト) 

機能間の連携テスト、APIテストなど 

詳細設計(内部仕様設計) 

ロジック・クラス図、DB構造、ER図 

単体テスト(ユニットテスト) 

各関数・モジュール単位のテスト 

コーディング 

ソースコード(レビュー済)、CI/CDセットアップ 

 

 

3.1 開発工程 

要求設計(Requirement Definition) 

この工程では、クライアントやエンドユーザーのビジネス上の目的や期待を正確に文書化します。非機能要件(例:セキュリティ、可用性、パフォーマンス)も含めて仕様を明確にし、プロジェクトのスコープを確定させます。 

  • 成果物例:要求定義書、ステークホルダー一覧、受け入れ条件 

  • 失敗時のリスク:要件の曖昧さが後続工程の設計不備や再実装コストにつながる 

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出典:JASPIC SPIJapan2009 奈良隆正「ソフトウェア品質保証の方法論、技法、その変遷」 

基本設計 

外部視点から見たシステムの仕様を設計します。画面設計、入出力設計、外部システムとのI/F定義などが中心です。開発チームとユーザー部門間の認識合わせにおいて非常に重要です。 

  • 成果物例:画面遷移図、帳票設計書、REST API設計書 

  • 関連テスト:システム全体の振る舞いを確認するシステムテスト 

機能設計 

機能単位での責務分割、データフロー、業務ロジック設計を行います。ユースケース図やアクティビティ図を使って、「誰が・いつ・何を」実現するのかを明確にします。 

  • 成果物例:ユースケース記述、クラス図、シーケンス図 

  • 関連テスト:機能連携を検証する総合テスト 

詳細設計 

関数レベル、モジュールレベルの設計を実施。設計ドキュメントには、データ構造、例外処理、SQL、ログ出力条件まで明記することが推奨されます。 

  • 成果物例:内部ロジック設計書、DB定義書、処理フロー図 

  • 関連テスト:モジュール単位の単体テスト 

コーディング 

ここでようやく実装フェーズに入ります。CI/CD導入によるコードの自動検証や、静的解析・ソースコードレビューの仕組みを取り入れることで、設計との乖離リスクを最小化できます。 

3.2 テスト工程 

単体テスト 

対応設計工程:詳細設計 

単体テストでは、モジュール単位でのテストを行い、関数やメソッド、クラスなどの最小単位が仕様通りに動作するかを検証します。 

主な検証内容 

  • 入力と出力の整合性 

  • 境界値や例外処理の動作 

  • 使用技法:ホワイトボックステスト、JUnit、pytest など 

総合テスト 

対応設計工程:機能設計 

複数のモジュール間の連携が正しく機能するかを確認します。REST APIやバッチ処理など、コンポーネント間のデータの流れが中心です。 

主な検証内容 

  • モジュール間インターフェースの整合性 

  • 非同期処理や例外伝播の確認 

  • 活用事例:マイクロサービス環境、複数の外部API連携 

システムテスト 

対応設計工程:基本設計 

システム全体が設計通りに統合され、想定された環境で機能するかを検証します。非機能要件(負荷、性能、セキュリティ)もここでテストされます。 

主な検証内容 

  • ユースケースベースのシナリオテスト 

  • SLA遵守(応答時間、同時ユーザー数) 

  • 障害テスト・リカバリーテスト 

受け入れテスト 

対応設計工程:要求設計 

ユーザー側が主導するテストであり、システムが業務要件を満たしているか、利用可能な品質レベルにあるかを確認します。契約や納品の基準となる工程です。 

主な検証内容 

  • ビジネスロジックの整合性 

  • 実運用シナリオの再現テスト 

  • トレーニング済みユーザーによる確認 

注意点 

  • 要件定義と受け入れテスト項目のトレーサビリティを確保しておくことが、承認と納品のスムーズさに直結。 

 

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まとめ 

V字モデルは、品質保証と効率化を両立する理論的な手法です。プロジェクトマネージャー(PM)は、プロジェクト特性に応じてV字モデルを活用し、品質向上とスケジュール管理を実現できます。理論的な利点を活かし、プロジェクトを成功に導きましょう。 

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