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UIキットとデザインシステムとは?効率的なUI設計の基礎を解説

UIキットとデザインシステムとは?効率的なUI設計の基礎を解説

現代のデジタルプロダクト開発において、直感的で一貫性のあるUIは、UX向上とビジネス成果に直結します。UIキットは、ボタンやアイコンなどの再利用可能なコンポーネントを集めたツールで、デザインの効率化に貢献します。一方、デザインシステムは、UIキットに加え、ガイドラインや運用ルールを統合した包括的な仕組みです。 
これらを活用することで、開発スピードの向上、チーム間連携の円滑化、ブランドの一貫性が実現します。FigmaやAdobe XDなどの最新ツールでは、AIによる自動補完やバリアント管理も可能となり、構築・運用がより効率的に。本記事では、UIキットとデザインシステムの基本から導入方法までを実践的に解説します。 

 

1. UIキットとは? 

UIキットとは、UIデザインに必要なボタンやアイコン、フォームなどのコンポーネントをまとめたツールセットです。統一感のあるデザインを効率的に作成でき、プロトタイピングや開発との連携をスムーズにします。FigmaやSketchなどで広く利用され、特に短期間で成果を求めるプロジェクトに有効です。 

 

1.1 UIキットに含まれる主な要素 

UIキットは、多くの場合「アトミックデザイン」の考え方に基づいて構築されています。つまり、最小単位の「アトム」から、より複雑な「分子」「オーガニズム」へと構成される階層構造です。 

UIキットに含まれる主な要素

主な要素には以下が含まれます:  

  • ボタン:プライマリ/セカンダリ/CTAなど、ホバー・アクティブ・無効など状態別のスタイルを用意 
  • アイコン:ナビゲーションやアクション、ステータスを示す汎用的なアイコンセット 
  • フォーム要素:テキスト入力欄、チェックボックス、セレクトメニューなど 
  • カラーパレット:ブランドカラーを軸にしたメイン/アクセント/ニュートラルカラー群 
  • タイポグラフィ:フォントの種類・サイズ・ウェイト・行間などのルールを定義 
  • グリッドシステム:レイアウトの整合性を保つための列幅や余白の設計 

これらのコンポーネントは、使用される場面に応じて状態の変化(例:ホバー時に色が変わるなど)が定義されており、誰でも一貫したUIを作れるよう設計されています。 

 

1.2 UIキット導入のメリット 

UIキットを活用することで、デザインと開発の効率が大幅に向上します。具体的なメリットは以下の通りです: 

  • デザイン作業の効率化:既存コンポーネントを使えば、一から作る必要がなくなり、作業時間を短縮 
  • 開発との連携がスムーズ:共通のコンポーネントを使うことで、デザイナーと開発者の認識のズレを防げる 
  • プロトタイプ作成が迅速:モックアップやワイヤーフレームを素早く構築可能 
  • ビジュアルの一貫性確保:ブランドのガイドラインに沿ったデザインが自然に実現され、UXも向上 
  • スケーラビリティの向上:新機能やページ追加時にも既存のUIパーツを使い回せる 

たとえば、スタートアップが限られた期間内でアプリのプロトタイプを作る場合、UIキットを用いれば数日で完成度の高い成果物を準備できます。Figmaのスマートアニメーション機能などAIの支援を使えば、動きのあるプロトタイプも直感的に作成できます。 

このように、UIキットは効率と品質を両立する上で欠かせないツールです。ただし、大規模なプロダクトや長期運用を前提とする場合には、UIキット単体では不十分になるケースもあります。そこで次に、より包括的な「デザインシステム」について詳しく解説します。 

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2. デザインシステムとは 

デザインシステムとは、UIキットを含む、デザインと開発の一貫性を保つための包括的なルール体系です。コンポーネント、ガイドライン、原則、ドキュメントなどを統合し、チーム全体の共通基盤として機能します。たとえばShopifyのPolarisは、UIだけでなく、アクセシビリティやコンテンツのトーンも定義し、統一されたUXを支えています。 

 

2.1 デザインシステムの主な構成要素 

デザインシステムの主な構成要素

  • 視覚言語:色、フォント、余白、レイアウトなどのブランド指針 
  • UIコンポーネント:再利用可能なUIパーツ群(UIキットを内包 
  • トーン&ボイス:コンテンツ表現のスタイルを統一 
  • アクセシビリティ:誰もが使える設計(WCAG準拠 
  • デザイントークン:色やタイポなどのデザイン情報をコード化して管理 

これらはドキュメント化され、ツール(例:Storybook、Zeroheight)を通じてチーム内で共有されます。 

 

2.2 UIキットとの違い 

項目 

UIキット 

デザインシステム 

定義 再利用可能なUIコンポーネントの集合(例:ボタン、フォーム) UIキットを含む、ガイドラインや運用ルールの包括的体系 
目的 デザインの効率化、プロトタイピングの迅速化 デザインと開発の一貫性確保、長期運用 
範囲 コンポーネント中心 コンポーネント、ガイドライン、ドキュメント、原則 
活用例 小規模プロジェクト、単発デザイン 大規模プロダクト、複数チームでの運用 
ガバナンス 不要または軽度 必須(運用ルールや更新管理) 

UIキットは「素材」、デザインシステムは「仕組みと文化」と捉えると分かりやすいです。 

 

3. UIキットとデザインシステムの関係 

デジタルプロダクトの拡大とともに、UIの一貫性と運用効率を保つためには、単なるコンポーネントの集まりではなく、より体系的なアプローチが求められます。ここでは、UIキットとデザインシステムの関係性を整理し、それぞれの役割と限界について解説します。 

 

3.1 UIキットは「デザインシステムの一部」 

UIキットは「デザインシステムの一部」

UIキットとは、デザインシステムを構成する重要な要素の一つであり、主にボタンやカード、入力フォームなどのUIコンポーネントをまとめた資産です。これは、デザイナーや開発者が日々の業務で直接活用するものであり、デザインの一貫性や作業効率の向上に貢献します。 

たとえば、Googleの「Material Design」に含まれる「Material UI」は、UIキットとして提供されており、誰でも統一されたコンポーネントを利用できます。UIキット単体でもある程度のプロジェクトには十分対応可能で、特にスタートアップや小規模プロジェクトではスピーディーなデザイン制作を実現します。 

近年では、FigmaのAIプラグインなどのツールにより、コンポーネントのバリエーション管理や更新作業がより容易になっています。 

しかし、UIキットはあくまで「パーツ集」にすぎず、ガイドラインやルールがないまま運用を続けると、統一性を保つのが難しくなります。ここで求められるのが、より包括的な「デザインシステム」の存在です。 

 

3.2 UIキットだけでは限界がある理由 

UIキットは便利なリソースですが、それ単体では以下のような課題が生じやすくなります: 

  • 統一ルールの欠如 
    デザインや実装に関するガイドラインがないと、メンバーごとに解釈や使い方が異なり、コンポーネントの運用にバラつきが生まれます。 
  • スケーラビリティの限界 
    プロダクトやチームが拡大するにつれて、UIキットだけでは全体の一貫性を維持するのが困難になります。 
  • メンテナンスの属人化 
    誰が、いつ、どのように修正したのかが不透明になり、コンポーネントの更新や品質管理に手間がかかります。 

たとえば、複数のデザイナーがUIキットを独自に使っていると、色やフォントがわずかに異なるデザインが混在し、ユーザーにとっては不自然な体験となる可能性があります。 

このようなリスクを回避し、長期的かつ組織的なプロダクト運用を実現するには、UIキットだけでなく、ルール・原則・哲学を含む「デザインシステム」の導入が不可欠です。 

 

4. UIキットとデザインシステムの活用シーン 

プロジェクトの規模やフェーズによって、UIキットとデザインシステムの活用方法は大きく異なります。このセクションでは、小規模プロダクトと大規模プロダクトそれぞれに適した活用シーンを具体的に紹介し、どのように使い分けるべきかを解説します。 

 

4.1 小規模プロダクトに最適なUIキット活用 

スタートアップや中小規模のプロジェクトでは、まずUIキットから導入することで、スピードと効率を重視した開発が可能になります。主な活用シーンは以下のとおりです: 

  • 迅速なプロトタイピング 
    限られたリソースの中で、短期間にモックアップやMVP(Minimum Viable Product)を作成可能。 
  • コスト削減 
    無料または低コストのUIキット(例:Material UI)を活用し、デザイン制作費を抑える。 
  • 少人数チームでの運用 
    デザイナーやエンジニアが少ない環境でも、統一されたUI設計が実現しやすい。 

特に初期フェーズでは、UIキットを活用してスピーディにプロダクトを立ち上げ、事業の成長に伴って徐々に包括的なデザインシステムを構築するアプローチが効果的です。また、FigmaのAI機能(例:自動バリアント生成)を活用することで、UIキットの作成・拡張も効率化できます。 

 

4.2 大規模プロダクトとデザインシステム 

一方で、規模が大きくなるほど、単なるUIキットでは限界があります。複数のプロダクトを展開する企業や大規模なサービスでは、包括的なデザインシステムの導入が欠かせません。主な活用シーンは次のとおりです: 

  • 一元管理による整合性の維持 
    複数プロダクトにまたがってデザインとコードを統一し、ブランドの一貫性を担保。 
  • チーム間の連携強化 
    デザイナー、開発者、マーケターなど、関係者全員が同じデザインガイドラインを参照できる。 
  • 高いスケーラビリティ 
    新しい機能やプロダクト追加時も、既存のコンポーネントや原則を再利用できるため、無駄な再設計を防げる。 

たとえば、Shopifyが開発したPolarisは、ECプラットフォーム全体で統一されたUIを提供し、ユーザー体験の質を高めています。また、ZeroheightのようなAIドキュメントツールを使えば、ガイドラインやコンポーネント情報の更新・共有も自動化され、運用負荷を軽減できます。 

 

5. UIキットとデザインシステムの導入・運用ステップ 

UIキットやデザインシステムは、一度作って終わりではなく、設計・導入・運用・改善というプロセスを通じて、継続的に価値を発揮する資産です。この章では、UIキットとデザインシステムを実際にプロジェクトへ取り入れる際の具体的なステップを、それぞれのフェーズに分けて解説します。 

 

5.1 UIキット導入の手順 

UIキットは比較的導入しやすく、特にプロジェクト初期におけるスピードとコストパフォーマンスの向上に貢献します。ここでは、基本的なコンポーネント設計から、チームでの運用体制の整備、AIツールの活用まで、UIキット導入の一連の流れをステップごとに紹介します。 

 

5.1.1 コンポーネントの設計・整理 

アトミックデザインの原則に基づき、UI要素を体系的に分類し、状態ごとのスタイルを設計します 

 

5.1.2 デザインツールでの管理 

FigmaやAdobe XDのクラウドライブラリを活用して、チーム全体で統一されたUIキットを共有・管理します。 

 

5.1.3 チーム展開と運用ルールの整備 

使用方法のトレーニングと運用フローの明確化により、属人化を防ぎ、チーム内の一貫性を保ちます 

 

5.1.4 AIツールの活用 

FigmaのAIプラグインなどを活用し、レイアウト調整やコンポーネント生成の作業を自動化します。 

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5.1.5 アクセシビリティ対応の検討 

配色コントラストやフォントサイズなど、アクセシビリティ基準を考慮したデザインルールを取り入れます 

 

5.1.6 利用ガイドの作成 

UIキットの使い方やルールを簡潔にまとめたドキュメントを作成し、新メンバーのオンボーディングにも役立てます。 

 

5.1.7 バージョン管理の仕組み化 

コンポーネントの更新履歴や変更点を記録し、必要に応じてロールバックできる環境を整備します 

 

5.1.8 フィードバックループの導入 

実際の使用状況や不具合に基づいて、UIキットの改善を継続的に行うためのフィードバックプロセスを確立します 

 

5.2 デザインシステム構築の手順 

デザインシステムの構築には、単なるコンポーネントの整備にとどまらず、組織横断的な体制づくりや、継続的な運用・改善の仕組みも不可欠です。このセクションでは、視覚原則の策定からコードとの統合、多言語対応やKPIの設定まで、実践的な構築プロセスを解説します。 

 

5.2.1 原則・ガイドラインの策定 

ブランドカラーやタイポグラフィ、スペーシングなどの視覚的ルールを定義します 

 

5.2.2 ドキュメント管理の整備 

StorybookやZeroheightを用いて、デザイン原則やUIコンポーネントの仕様を体系的に管理します。 

 

5.2.3 DesignOps体制の構築 

デザイナーとエンジニアの役割分担を明確化し、横断的なコラボレーション体制を整えます 

 

5.2.4 継続的な運用・改善 

利用者からのフィードバックやトレンドの変化に対応し、デザインシステムを継続的に更新します 

 

5.2.5 コンポーネントのコード連携 

ReactやVueなどのフロントエンド技術と連携し、実装とデザインの差異をなくします。 

 

5.2.6 品質管理とレビュー体制の確立 

新しいコンポーネントの追加時にはレビューを行い、品質やルール遵守をチェックする体制を整備します 

 

5.2.7 多言語・多文化対応の組み込み 

国際展開を視野に入れた場合、フォント・レイアウトの柔軟性やRTL(右から左)の対応を考慮します 

 

5.2.8 KPI・効果測定の設計 

デザインシステムの導入がプロジェクトにもたらす影響(開発スピード、一貫性など)を数値で把握し、改善の指標とします 

 

6. 有名なUIキット/デザインシステムの事例 

UIキットやデザインシステムは、多くの企業や開発者によって実際のプロジェクトで活用されています。これらの事例を知ることで、自社に合った仕組みを選定し、導入・運用の参考にすることができます。ここでは、代表的なUIキットとデザインシステムをそれぞれ紹介し、その特徴や活用ポイントを詳しく見ていきましょう。 

 

6.1 UIキットの事例 

以下に、主要なUIキット4例を紹介します。プロダクトの規模や目的に応じて適切に選定することで、デザインと開発の効率を大きく向上させることが可能です。 

6.1 UIキットの事例

 

6.1.1 Material UI(Google) 

Googleが提供するMaterial UIは、もっとも広く使われているUIキットの一つです。Reactベースでありながら、Googleのデザイン原則に基づいた一貫性のあるコンポーネント設計が特徴です。 

項目 

内容 

概要 Material Designに基づくReactコンポーネントライブラリ。ボタン、カードなどのUI要素を豊富に提供。 
特徴 オープンソースでカスタマイズ性が高く、アクセシビリティにも対応。 
UXへの活用例 ウェブアプリやモバイルアプリのUI設計。共通スタイルを用いた複数プロダクトの開発。 
おすすめポイント 無料で利用可能。Figma等のデザインツールとの連携も容易。 

Material UIは、Googleのガイドラインに準拠しており、設計品質の確保とチーム間の整合性に優れます。 

 

6.1.2 Ant Design(Alibaba) 

中国の大手テック企業Alibabaが開発したAnt Designは、エンタープライズ向けのUI設計に特化した高機能ライブラリです。国際化対応や業務画面向けの豊富な機能群が魅力です。 

項目 

内容 

概要 エンタープライズ向けに設計されたReact UIライブラリ。 
特徴 国際化(日本語含む)対応が強み。機能性が高く、スケーラビリティに優れる。 
UXへの活用例 業務システム、管理画面、企業向けSaaSのUI設計。 
おすすめポイント 一貫性と拡張性を備えており、大規模開発に適している。 

Ant Designは、業務用ツールや管理画面において信頼性の高いUI設計を実現します。 

 

6.1.3 Chakra UI 

Chakra UIは、シンプルで柔軟な設計を追求する開発者に支持されるUIキットです。直感的なAPIとアクセシビリティ対応を標準搭載し、迅速な開発に適しています。 

項目 

内容 

概要 Reactベースのシンプルかつ柔軟なUIライブラリ。 
特徴 ダークモードやアクセシビリティに標準対応。APIが直感的で扱いやすい。 
UXへの活用例 スタートアップのMVP、個人開発、PoCのUI設計。 
おすすめポイント 初心者でも導入しやすく、スピード感のある開発に適している。 

Chakra UIは、導入のしやすさと拡張性を兼ね備え、特に小規模プロジェクトで力を発揮します。 

 

6.1.4 Tailwind UI 

Tailwind CSSをベースにしたTailwind UIは、ユーティリティファーストな設計思想に基づいたコンポーネント集です。柔軟性とスピードを両立した開発が可能です。 

 

内容 

概要 Tailwind CSSを基盤としたUIコンポーネントとテンプレート集。 
特徴 ユーティリティファーストな設計。クラス名ベースで柔軟なスタイル設定が可能。 
UXへの活用例 ランディングページ、マーケティングサイトの迅速な構築。 
おすすめポイント コーディングと同時にデザインを進められ、開発効率が高い。 

Tailwind UIは、スタイルと構造を分離せず一貫して開発できる点で、現代的なフロントエンドに適しています。 

 

6.2 デザインシステムの事例 

次に、大規模なプロダクトや複数チーム間での協働を支える代表的なデザインシステムの事例を紹介します。 

デザインシステムの事例

 

6.2.1 Lightning Design System(Salesforce) 

Salesforceの全製品群に共通するUIガイドラインとして設計されたLightning Design Systemは、BtoB向けの堅牢な業務アプリ開発に特化しています。 

項目 

内容 

概要 

Salesforce製品群に向けた統合デザインシステム。現在はSLDS 2(ベータ版)が提供されており、柔軟なカスタマイズとテーマ管理が可能。 

特徴 

高度なアクセシビリティとスケーラビリティを備え、スタイリングフック(Design Tokens)による一元管理に対応。Figma連携やマークアップ支援ツールも充実。 

UXへの活用例 

CRMや営業支援システムのUI統一と再利用性の向上。AI対応やダークモード等の最新UX設計にも活用可能。 

おすすめポイント 

BtoB向け大規模プロダクトにおいて、効率的かつ将来性のあるUI開発が可能。移行も容易で拡張性に優れる。 

Lightning Design Systemは、業務アプリに必要な堅牢性と整合性を備えています。 

 

6.2.2 Polaris(Shopify) 

Shopifyが展開するECエコシステムを支えるPolarisは、UIの統一だけでなく、ブランドトーンや文体までを包括する設計思想が特徴です。 

項目 

内容 

概要 ShopifyのECプラットフォームにおける公式デザインシステム。 
特徴 UIガイドラインだけでなく、文体や文言などのコンテンツスタイルも網羅。 
UXへの活用例 複数のEC関連プロダクトにおけるユーザー体験の統一。 
おすすめポイント ブランド全体でのトーンとビジュアルの一貫性を維持できる。 

Polarisは、デザインだけでなく言語・体験全体の一貫性を求める場面で効果を発揮します。 

 

6.2.3 Carbon Design System(IBM) 

IBMがオープンソースで公開しているCarbon Design Systemは、高度な技術要件を満たすための豊富なガイドラインとツール群を備えた強力なデザインシステムです。 

項目 

内容 

概要 IBM製品向けに開発されたオープンソースのデザインシステム。 
特徴 データビジュアライゼーションやアクセシビリティ機能が充実。技術的要件の高い設計に対応。 
UXへの活用例 AIプラットフォームや技術系WebアプリでのUI統一と運用効率化。 
おすすめポイント 専門性が高く複雑なUIにも柔軟に対応可能。ドキュメントも豊富。 

Carbon Design Systemは、設計・開発の整合性を求めるエンタープライズ領域に適しています。 

 

まとめ 

UIキットとデザインシステムは、効率的で一貫性のあるUI設計に不可欠な基盤です。 UIキットはボタンやアイコンなどの再利用可能なコンポーネントを提供し、デザイン作業を迅速化します。一方、デザインシステムはガイドライン・ルール・運用体制を包括し、スケーラビリティと品質を両立させます。 

スタートアップはUIキットから、小規模〜大規模サービスはデザインシステム導入へと進めましょう。 コンポーネントの整理、ガイドラインの整備、DesignOpsの構築が鍵となります。FigmaやStorybook、AI支援ツールを活用することで、さらに効率化が期待できます。まずは無料UIキットから試し、自社に最適なデザイン基盤を築いてください。 

 

よくある質問 

Q1: UIキットとデザインシステムの違いは何ですか? 

UIキットとデザインシステムは、どちらもユーザーインターフェース(UI)設計において重要な役割を果たしますが、それぞれの目的と範囲には大きな違いがあります。 

UIキットは、主にボタン、フォーム、ナビゲーション、カードなどの「視覚的なUIコンポーネントの集まり」です。FigmaやAdobe XDなどのデザインツールで利用され、素早くUIモックアップを作るための素材として活用されます。いわば「見た目」の統一と効率化を図るためのツールです。 

一方で、デザインシステムは、単なるUIキットにとどまらず、タイポグラフィ、カラーパレット、トーン&マナー、アクセシビリティ、コーディング規約、運用ルールなどを含んだ包括的なガイドラインです。つまり、UIキットを含んだ上で、全体の思想・ルール・運用方法までを体系化した設計資産が「デザインシステム」なのです。 

 

Q2: スタートアップにとってはUIキットだけで十分ですか? 

多くのスタートアップや小規模なプロジェクトにおいては、UIキットだけでも十分に価値があります。限られた予算や人員の中で、迅速にプロトタイプやMVP(Minimum Viable Product)を作成する必要があるため、まずはUIキットを活用することでスピードと一貫性を両立できます。 

UIキットはデザイナーとエンジニア間の認識ズレを減らし、開発の効率化にもつながります。また、テンプレートや再利用可能なコンポーネントが揃っていれば、ノンデザイナーでもある程度の品質のUIが構築可能です。 

ただし、サービスが成長し、関わるメンバーやチームが増えてくると、UIキットだけでは限界が出てきます。その段階では、より高度な一貫性と拡張性、ガバナンスが求められるため、UIキットからデザインシステムへの発展を検討することが重要になります。 

 

Q3: デザインシステムの構築にはどんなツールが必要ですか? 

デザインシステムの構築と運用には、いくつかの専門的なツールが必要です。ここでは代表的なツールを4つ紹介します: 

  • Figma / Adobe XD 
    デザインコンポーネントの作成・管理に使用されるツールです。Figmaはチームコラボレーション機能が充実しており、UIキットやデザインシステムの共有にも最適です。 

  • Storybook 
    フロントエンド開発におけるコンポーネントのカタログ化やドキュメント作成、ビジュアルテストに用いられます。エンジニアとの連携をスムーズにするためにも欠かせません。 

  • Zeroheight 
    デザインシステムのガイドライン(タイポグラフィ、色、レイアウトなど)を記述し、デザイナーとエンジニアの間で共有できるWebドキュメントツールです。