FigmaとCanvaの違いは?用途別におすすめツールを解説
デジタルデザインの現場では、適切なツールの選択がプロジェクトの効率や成果物の品質を大きく左右します。FigmaとCanvaは、デザイン分野で広く利用されるツールですが、対象ユーザーや用途が大きく異なります。
本記事では、FigmaとCanvaの特徴、機能、コスト、コラボレーション能力を詳細に比較し、具体的な用途に応じた最適なツールを提案します。デザイナーやプロジェクトリーダーが戦略的な選択を行うための実践的な指針を提供します。
1. Figmaとは、Canvaとは?
デザイン作業を始めるにあたり、まずはFigmaとCanvaの基本的な特徴を理解することが重要です。このセクションでは、それぞれのツールの概要と主な用途を紹介します。

1.1 Figmaとは?
Figmaは、2016年に登場したクラウドベースのUI/UXデザインツールです。リアルタイムでの共同編集、ベクター編集、プロトタイピング機能などを備えており、Webサイトやアプリのインターフェース設計に特化しています。ブラウザ上で動作するため、ソフトウェアのインストールは不要で、どのデバイスからでもアクセスが可能です。
日本では2022年に法人が設立されて以降、プロフェッショナルなデザイナーや開発チームの間で急速に利用が拡大しています。
1.2 Canvaとは?
Canvaは2013年にリリースされたWebベースのグラフィックデザインツールで、特に非デザイナー向けに設計されています。ドラッグ&ドロップの簡単な操作と、豊富なテンプレートライブラリが特長で、SNS投稿、プレゼン資料、ポスターなどの視覚的コンテンツを手軽に作成できます。
初心者やマーケティング担当者に支持されており、2025年現在では月間アクティブユーザー数が1億3000万人を超えています。
Figmaは主にUI/UXデザインやチームでの協働作業に最適なツールであり、Canvaは簡単な操作で多様なビジュアルコンテンツを作れる汎用的なデザインツールです。
次のセクションでは、それぞれの基本機能を比較し、具体的な違いについて詳しく見ていきます。
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2. FigmaとCanvaの基本機能比較
FigmaとCanvaは、どちらもデザイン制作に役立つ人気ツールですが、目的や使い方に応じて向き不向きがあります。ここでは、それぞれの主要機能を比較し、違いを明確にしていきます。
2.1 Figmaの基本機能
まずは、Figmaの機能について整理します。Figmaは特にプロのデザイナーや開発者向けに設計されており、UI/UXデザインの実務に強みを持っています。
| 内容 |
プラットフォーム | クラウドベース(ブラウザ/デスクトップ) |
OS対応 | Windows、Mac、Linux(ブラウザ経由) |
主な用途 | UI/UX設計、プロトタイピング、デザインシステム |
リアルタイムコラボ | 複数人で同時編集・コメント可能 |
テンプレート | UIキット中心、Figmaコミュニティに豊富 |
画像編集 | 基本的な編集のみ(不透明度、サイズ調整など) |
プロトタイピング | 高度な画面遷移・インタラクション設定 |
拡張性 | 多数のプラグイン、APIによる連携 |
オフライン対応 | 基本はオンライン必須(一部キャッシュ対応) |
Figmaは、構造的なデザインやチーム連携が求められるプロジェクトに適しています。
2.2 Canvaの基本機能
次に、Canvaの特徴を見てみましょう。Canvaは非デザイナーにも優しい設計で、誰でも簡単に視覚的コンテンツを作成できる点が魅力です。
| 内容 |
プラットフォーム | Webベース(ブラウザ/デスクトップ/モバイル) |
OS対応 | Windows、Mac、iOS、Android |
主な用途 | SNS投稿、チラシ、プレゼン、動画など |
リアルタイムコラボ | Proプラン以上で同時編集対応 |
テンプレート | 25万以上。多用途・初心者向けに豊富 |
画像編集 | 背景除去、AI生成など高度な処理可能 |
プロトタイピング | 簡易的(リンク・スライド程度) |
拡張性 | 限定的。一部連携アプリあり |
オフライン対応 | デスクトップアプリで可能 |
Canvaは、スピード重視で手軽にビジュアルコンテンツを量産したいときに特に有効です。
次のセクションでは、Figmaのメリットとデメリットについてより具体的に掘り下げていきます。
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3. 共同作業とコラボレーション
デザインはチームで行うことが多く、コラボレーション機能の充実度がツール選びにおける重要な判断材料になります。ここでは、FigmaとCanvaにおける共同作業の特性を比較し、それぞれの利点と制約を明らかにします。
3.1 Figmaのコラボレーション機能
Figmaは、リアルタイム共同編集に特化した設計が特徴です。以下のような機能を提供します:
- 複数人での同時編集:チームメンバーが同時に1つのファイルにアクセスして編集可能。
- コメント&メンション:作業中にコメントを直接デザイン上に残せるため、迅速なフィードバックが可能。
- Branching機能:Gitのようにバージョンを分岐・統合でき、デザインの整合性を保てます。
- リンク共有:アカウントがなくても閲覧可能な共有リンクを発行でき、外部との連携も円滑。
Figmaは大規模チームや長期プロジェクトでの柔軟性が非常に高く、開発者やクライアントとの協業に最適です。
3.2 Canvaのコラボレーション機能
Canvaもチーム作業をサポートしていますが、Figmaほどのリアルタイム性や複雑な連携機能はありません。特徴は以下の通りです:
- 同時編集機能:複数人でのリアルタイム編集・コメントに対応(有料プラン推奨)。
- コメントとリンク共有:共有リンクで確認・コメント可能。ただし、編集や制限解除は有料プランでの対応が基本。
- ブランドキットとテンプレート共有:企業ロゴや配色、フォントを統一してテンプレート化でき、ブランドガイドラインの遵守を支援。
簡易的なチーム編集やマーケティング素材制作など少人数チームに向いた設計が強みです。
比較表:コラボレーション機能
項目 | Figma | Canva |
リアルタイム編集 | 同時編集、コメント、Branchingあり | 同時編集・コメント可(有料プラン推奨) |
共有方法 | リンク共有(アカウント不要) | リンク共有(閲覧・編集制限あり) |
チーム管理機能 | デザインシステム管理、権限設定 | ブランドキット、テンプレート共有 |
Figmaは細かなデザイン管理と開発との連携に強く、Canvaは操作の手軽さとテンプレート活用による迅速なアウトプット共有に向いています。
4. プロトタイピング機能の違い
プロトタイピングは、完成前にユーザー体験を検証し、開発との橋渡しを行う重要なステップです。このセクションでは、FigmaとCanvaのプロトタイピング機能の違いを見ていきます。
| Figma | Canva |
URLリンク | ||
アニメーション | スマートアニメーション、条件付きロジック対応 | 基本的なアニメーション(クリック遷移など) |
プレビュー | モバイル・PC両対応でリアルタイム再現 | 簡易プレビュー |
開発連携 | Dev Modeでコード抽出・仕様確認が可能 | 開発連携機能なし |
4.1 Figmaのプロトタイピング

Figmaは、UI/UXデザインの検証と開発者連携を強く意識した機能を提供しています:
- スマートアニメーション:画面間の遷移を自然に表現。ボタンや画像の状態変化をスムーズに再現可能。
- インタラクション設定:クリック、ホバー、スクロールなどの条件付きアクションが設定可能。
- プレビュー:実機に近いモバイル/デスクトッププレビューが可能。
- 開発連携(Dev Mode):CSS、iOS、Android用コードスニペットを抽出し、開発工程に直結。
こうした機能により、Figmaは完成品に近い高精度なプロトタイプ作成ができ、開発者との情報共有も効率化されます。
4.2 Canvaのプロトタイピング
Canvaにも簡単なプロトタイピング機能がありますが、主にプレゼンテーションや資料向けです:
- リンク遷移とアニメーション:ページ間をつなぐ簡単なリンク設定やフェードなどの基本アニメーション。
- 制限されたインタラクション:複雑な条件分岐やリアルなインターフェース動作は非対応。
- プレビュー:クリックベースでの簡易表示。実機シミュレーションは限定的。
- 開発者向け機能:基本的には用意されていません。
そのため、Canvaは製品開発というよりも、構想の提示や社内レビュー向きです。
Figmaは開発者とのスムーズな橋渡しを実現するプロトタイピングに優れており、Canvaは構想共有にとどまる簡易モックアップ用途に最適です。
5. 料金プランとアクセシビリティ
コストと使いやすさは、デザインツール選びにおいて重要な要素です。このセクションでは、FigmaとCanvaの料金体系とアクセシビリティ(利用のしやすさ)を比較し、それぞれの強みを明確にします。
| Figma | Canva |
無料プランの充実度 | 専門的な機能も一定使用可能、共同作業もOK | 豊富なテンプレート・素材で非デザイナーにも使いやすい |
有料プランのコスパ | チームでの本格的なUI/UXデザイン、デザインシステムの運用に最適 | マーケティング、SNS、プレゼン資料など幅広い用途に対応 |
アクセシビリティ | ブラウザ上で動作、軽量、高速、Mac/Windows間でも違和感なし | ブラウザ・アプリ両対応、モバイル編集やオフライン作業も可能 |
拡張性 | プラグイン多数、Dev Mode、バージョン管理など専門的作業に最適 | 直感的な編集機能、ドラッグ&ドロップで学習コストが極めて低い |
5.1 Figmaの料金プランと特徴
Figmaはクラウドベースで動作し、リアルタイム共同作業に強みを持つツールです。無料プランでも一定レベルのプロフェッショナルな作業が可能であり、個人ユーザーやスタートアップにも人気があります。
プラン名 | 月額料金 | 主な機能 | 対象ユーザー |
無料プラン | 0ドル | 3つまでのファイル、リアルタイム共同編集、コメント機能 | 学生、個人、試用目的 |
Professionalプラン | 約12ドル | 無制限ファイル、チームライブラリ、プラグイン活用、共同編集、バージョン履歴 | フリーランス、小規模チーム |
Organizationプラン | 約45ドル | 高度なアクセス制御、分析機能、SSO対応、Design System管理 | 中〜大規模の組織、エンタープライズ向け |
Figmaの強みは、ブラウザベースでインストール不要でありながら、非常に高機能な共同作業とデザインフローが実現できる点です。また、プラグインが非常に豊富で、ニーズに応じて機能を拡張できます。
5.2 Canvaの料金プランと特徴
Canvaはテンプレートとビジュアル素材の豊富さが最大の特徴であり、非デザイナーでも直感的に使える設計がなされています。特にプレゼン資料やSNS投稿画像、印刷物の作成に適しています。
プラン名 | 月額料金 | 主な機能 | 対象ユーザー |
無料プラン | 0ドル | 25万以上のテンプレート、100万点以上の画像素材、5GBクラウドストレージ | 一般ユーザー、教育機関、個人事業主 |
Proプラン | 約12.99ドル | 背景除去、ブランドキット、1億点以上のプレミアム素材、100GBクラウド、コンテンツスケジューラー | マーケティング担当、中小企業 |
Enterpriseプラン | カスタム価格 | 管理者コントロール、SAML SSO、テンプレートロック、チーム管理、ブランド一貫性維持 | 大企業、広報部門、教育機関など |
Canvaはモバイルアプリやオフライン機能も充実しており、いつでもどこでも簡単に編集可能です。また、動画やSNS投稿など、静止画以外のデザインにも強く、多目的に使えるのが魅力です。
6. 用途別のおすすめツール
FigmaとCanvaは、いずれも優れたデザインツールですが、用途やユーザーのスキルに応じて向き不向きがあります。このセクションでは、「何に使うか」という観点から、どちらのツールがより適しているかを比較しながら解説します。
6.1 UI/UXデザインとプロトタイピングに最適なツールは?
まず、Webサイトやアプリのユーザーインターフェース(UI)やユーザーエクスペリエンス(UX)を設計する場合に、どちらのツールが適しているのかを見ていきましょう。
推奨ツール | Figma |
主な理由 | 高度なベクター編集機能やスマートアニメーション、開発者向けのDev Modeが搭載されているため、UI/UX設計に最適です。 |
特徴的機能 | コンポーネントの再利用、プロトタイプのインタラクション設計、リアルタイムでの共同編集など。 |
適用シーン | モバイルアプリのUI設計、ユーザー体験のテストや改善。 |
使用例 | デザイナーがインタラクティブなプロトタイプを作成し、開発者と連携してCSSコードを共有。 |
6.2 ソーシャルメディアやマーケティング素材の作成には?
次に、InstagramやFacebookなどのSNS投稿、バナー広告、イベントチラシといったマーケティング素材の作成に適したツールを紹介します。
推奨ツール | Canva |
主な理由 | 数千種類のテンプレートが用意されており、直感的な操作で短時間に魅力的なデザインを作成できます。 |
特徴的機能 | SNS専用テンプレート、AIによる写真補正、簡単なアニメーション追加。 |
適用シーン | キャンペーン投稿、広告クリエイティブ、ブランドのビジュアル素材。 |
使用例 | マーケティングチームが短期間で複数の投稿素材を制作し、ブランドの一貫性も維持。 |
6.3 チームでの共同作業やデザインシステムには?
複数人でプロジェクトを進める場合や、ブランドに一貫性を持たせるデザインシステムを構築する場面では、どちらのツールが力を発揮するのでしょうか。
推奨ツール | Figma |
主な理由 | リアルタイムでの共同編集機能や「Branching」などの高度なチーム機能を備えており、大規模プロジェクトに対応できます。 |
特徴的機能 | デザインライブラリの共有、バージョン管理、ユーザーごとの権限設定。 |
適用シーン | 複数プロジェクトの一括管理、社内UIガイドラインの整備。 |
使用例 | リモートチームが共通のデザインコンポーネントを利用し、作業の重複を回避。 |
6.4 デザイン未経験者でも扱いやすいのは?
最後に、デザイン経験がない初心者や非デザイナーが使う場合には、どちらのツールがより適しているかを見てみましょう。
推奨ツール | Canva |
主な理由 | ドラッグ&ドロップ操作で誰でも簡単に使えるうえ、テンプレートが豊富に用意されているため、プロ並みのデザインを手早く作成可能です。 |
特徴的機能 | 自動レイアウト調整、豊富なフォントとカラー提案、印刷用ファイルの出力も簡単。 |
適用シーン | 小規模ビジネスのプレゼン資料、POP、案内チラシなど。 |
使用例 | 経営者が自らチラシを作成し、制作コストや時間を削減。 |
UI/UX設計やチームでの共同作業にはFigmaが、SNS投稿や印刷物の作成、初心者によるデザインにはCanvaが適しています。それぞれの特性を理解し、目的に応じて使い分けることで、作業効率と成果物のクオリティが大きく向上します。
まとめ
Figmaは、UI/UXデザインやプロトタイピング、リアルタイムの共同作業に強みを持ち、プロのデザイナーや開発チーム向けのツールです。ベクター編集やDevモードなどの高度な機能により、複雑なインターフェース設計やチーム間の連携がスムーズに行えます。一方、Canvaはテンプレートと直感的な操作性で、非デザイナーでも簡単にSNS投稿やプレゼン資料を作成できるのが魅力です。
このように、FigmaとCanvaは目的やユーザー層によって使い分けが明確です。Figmaはチームによる本格的な設計に、Canvaは迅速なビジュアル制作に適しています。プロジェクトの規模やスキルに応じて選択し、必要に応じて併用することで、より柔軟かつ効率的なデザイン運用が可能になります。