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デジタルガバナンスとは?企業が抱えるDX推進上の3つの課題と対策方法

デジタルガバナンスとは?企業が抱えるDX推進上の3つの課題と対策方法

日本企業にとってDXは、生き残りと成長の鍵です。経産省が警告する「2025年の崖」は、旧システムの限界とDX遅れのリスクを示しています。現在はデジタル庁が迅速なデジタル化と統治強化を求めており、危機感が一層高まっています。DXは技術導入だけでは不十分で、セキュリティやコストの課題があります。これを支えるのがデジタルガバナンスです。

本記事では、日本の経営層に向けて、DXとガバナンスの関係性、課題と解決策、成功事例を解説し、当社のITアウトソーシングによる支援を提案します。 

主なポイント  
  • DXは企業価値向上と競争力強化の鍵である  
  • デジタルガバナンスはリスク管理とプロセス最適化を支える  
  • 最新技術(AI、IoT、ブロックチェーン)がDXを加速させる  
  • 日本政府の公式データに基づく最新動向を反映  
  • ITアウトソーシングがDXの効率化と成功を支援 

それでは、まずDXとデジタルガバナンスの基本概念から詳しく見ていきましょう。  

 

1. DX・ DXガバナンスの基本 

主なポイント 
  • DXはビジネスモデルや業務プロセスの抜本的な変革を指す。 

  • デジタルガバナンスは、安全かつ持続可能なDX推進を支える管理体制である。 

  • ガバナンスにより、データ漏洩やシステム障害といったリスクを抑制できる。 

  • 適切なガバナンスがあることで、先端技術の活用と業務最適化が加速する。  


デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセスを根本から変革することです。例えば、製造業ではIoTによるスマート工場、サービス業ではAIでの顧客対応自動化が新たな価値を生みます。 

デジタルガバナンスは、DXを安全かつ効果的に進めるための管理体制です。データ管理、セキュリティ、コンプライアンス、組織連携などが含まれ、技術と人間の協働を支える基盤とされています。DXは単なる技術導入ではなく、組織変革を伴うプロセスです。 

DXとデジタルガバナンスは密接に結びついています。クラウド導入やデータ活用で生じるデータ漏洩や障害リスクを、ガバナンスが抑え、成果を最大化します。 

デジタルガバナンスは単なるリスク管理にとどまらず、業務の効率化を促進します。ブロックチェーンによる透明なサプライチェーンや、AIによる市場分析も、ガバナンスが機能してこそ効果を発揮します。これにより、データと技術を活用した迅速な意思決定と業務の最適化が実現します。 

次に、DXを進める上で直面する具体的な課題とリスクについて、詳しく掘り下げていきます。  

 

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2. DX推進3つのリスク 

主なポイント
  • セキュリティ人材の不足が深刻化し、全体的な安全対策が脆弱になる。 

  • 中堅・中小企業において、DXを担う戦略人材と実行人材が圧倒的に不足している。 

  • 経営層にITの知見が乏しく、DXの意思決定と社内浸透が進みにくい。 

  • DX導入には高額な初期投資と専門スキルが必要で、多くの企業が負担を感じている。 

 

2.1. セキュリティリスクの増大 

IPAの「情報セキュリティ白書2024」によれば、日本企業の約91.7%がセキュリティ人材の不足を感じており、企業規模を問わず共通の課題となっています。  

IPAの「情報セキュリティ白書2024」
写真:(出典)NRIセキュア社 「NRI Secure Insight 2023」を基にIPAが編集

また、経済産業省の報告書でも、セキュリティ人材の確保と育成が困難であるとの企業の声が紹介されており、特に中堅・中小企業においては、セキュリティ人材の確保・育成の取組が実践されていない状況が指摘されています。 

 

2.2. 管理改革への壁 

IPAの「DX動向2024:中堅企業のDXの取組についての考察 」によれば、中堅企業ではDXを戦略的に立案・統括する人材や、現場で推進・実行する人材が深刻に不足しています。実際、DXに取り組んでいない企業のうち、戦略立案・統括を担う人材が不足していると答えた割合は68.1%、現場で実行する人材の不足は63.8%に上ります。 

IPAの「DX動向2024:中堅企業のDXの取組についての考察 」
写真:IPAの「DX動向2024:中堅企業のDXの取組についての考察 」

 

さらに、IT分野に見識を持つ役員がいない割合は44.5%と、大企業(14.8%)の約2倍に達しており、これが企業ビジョンの社内浸透やDX予算の確保といった経営基盤の整備の遅れにつながっていると指摘されています。 

写真:IPAの「DX動向2024:中堅企業のDXの取組についての考察 」
写真:IPAの「DX動向2024:中堅企業のDXの取組についての考察 」

 

2.3. コスト負担と人材不足 

DXには多額の初期投資が必要です。 クラウドシステムの導入、AIやIoTの活用、セキュリティ対策の強化など、各分野でコストがかかります 

成長投資への資金を借入れで調達したことへの考え (売上規模別)
成長投資への資金を借入れで調達したことへの考え (売上規模別)

日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が発行した「企業IT動向調査報告書2024」によると、DXを推進するために必要なスキルを有する人材の確保が、多くの企業において依然として大きな課題となっていることが示されています。 

こうした課題を解決する方法はあるのでしょうか?次に、デジタルガバナンスを強化する具体的な解決策を3つの柱に分けて詳しく解説します。  

 

3. DXにおけるリスク管理の対策 

DXのリスクを軽減し、業務プロセスを最適化するためには、デジタルガバナンスを中核に据えた戦略的な取り組みが不可欠です。ガバナンスを強化することにより、セキュリティやコンプライアンスを確保しつつ、変化に柔軟に対応できる体制が整います。以下に、その実現に向けた3つの主要な柱をご紹介します。 

主なポイント 
  • ゼロトラストと社員教育でセキュリティリスクを最小化 
  • DX人材の育成と継続的なスキル研修が成否を左右する 
  • AI・IoT・ブロックチェーンの活用で業務最適化と価値創出 

 

3.1. セキュリティ方針の強化 

デジタル庁の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」において、ゼロトラストアーキテクチャの導入が推奨されています。 ゼロトラストとは、内部・外部を問わず、すべてのアクセスを検証し、信頼を前提としないセキュリティモデルです 

さらに、セキュリティ意識の向上も重要です。情報処理推進機構(IPA)の「情報セキュリティ白書2024」では、セキュリティインシデントの多くが人的ミスに起因しているとされています。定期的な研修やフィッシングメールを想定した訓練などを通じて、日常業務の中でのリスク感度を養う取り組みが求められます。 

 

3.2 人材と研修の充実 

DXを支えるのは技術だけでなく、それを活用する人材です。経済産業省の「デジタルスキル標準(2023年8月)では、ビジネスパーソン全体がDXに関する基礎的な知識やスキル・マインドを身につけるための指針が示されています。 

しかしIPAの「DX動向2024」によれば、AI導入の際の課題として「AIに関連する人材が不足している」と回答した企業が62.4%に上るなど、人材不足が深刻な課題となっています。 

IPAの「DX動向2024」
写真:IPAの「DX動向2024」

例えば、AIを活用したデータ分析を導入する場合、社員がデータの解釈や活用方法を理解していなければ、投資が無駄になるリスクがあります。継続的な教育プログラムを導入し、技術スキルとビジネス視点を兼ね備えた人材を育成することが求められます。 

 

3.3 先端技術活用 

AI、IoT、ブロックチェーンなどの先端技術は、DXを加速する強力なツールです。経済産業省の「デジタルガバナンス・コード3.0」では、企業がデジタル技術を十分に活かすための環境づくりを、企業価値を高めるための重要な取り組みの一つとして位置づけています 

例えば、ある物流企業ではIoTセンサーを活用して配送車両の稼働状況をリアルタイムで監視し、配送ルートを最適化。これにより、燃料コストを削減し、顧客満足度も向上させました。 

また、ゼロトラストセキュリティ市場はMarketsandMarketsの報告では、 2024年に365億米ドルから2029年には787億米ドルに成長すると予測されています。この成長は、先端技術の活用がいかに重要であるかを示しています。 

ゼロトラストセキュリティ市場
写真:MarketsandMarkets

これらの3つの柱を基盤としてデジタルガバナンスを強化することで、DXのリスクを効果的に軽減し、プロセスの最適化を実現することが可能となります。 

次に、DX成功のためのアプローチを見ていきましょう 

 

4. DXを成功させるための重要なポイント 

DXの真の成功には、単なるデジタル技術の導入だけでなく、経営基盤の強化、人材戦略の明確化、そして運用体制の最適化という多面的なアプローチが必要です。ここでは、DXを着実に進めるために企業が注力すべき3つの重要な視点を整理します。 

主なポイント
  • IT資産の見直しとセキュリティ対策を強化し、全社的な整合性を確保する。 

  • DX推進に必要な人材を育成し、実務に即したスキル体系で支援する。 

  • ノンコア業務を中心に外部委託を活用し、経営資源の集中と業務効率化を図る。 

 

4.1. 守り重視の経営 

経済産業省の「デジタルガバナンス・コード3.0では、DXを支える土台として、ITシステムの整備サイバーセキュリティ対策の重要性が明記されています。企業は、システムやデータ資産の現状を定期的に評価し、技術的負債(レガシーシステム)の再発を防ぐ体制を整えることが求められます。全社的なIT整合性を確保し、事業部門間の分断やブラックボックス化を避ける仕組みも不可欠です。 

また、セキュリティ対策は経営リスクとして捉え、CISOの任命第三者監査の実施BCPの整備といった対応が重視されています。中小企業も含め、SECURITY ACTION(二つ星)制度などを活用し、自主的な体制強化が推奨されています。こうした守りの取り組みが、DX戦略の持続的な推進と企業価値の維持・向上につながります。 

 

4.2. DX人材を育てる 

IPAと経済産業省の「DX推進スキル標準ver1.2」では、 DXを推進する人材は、ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティ5つの類型分類され、それぞれに具体的な役割(ロール)が定められています。これらのロールは、目標設定から実行、効果検証までを担い、部門を超えた連携を通じてDXの推進力を高めることが期待されています。 

共通スキルリストは「ビジネス変革」「データ活用」「テクノロジー」「セキュリティ」「パーソナルスキル」5分野構成されており、たとえば「データ活用」には統計解析や機械学習、データ基盤の設計・運用などが含まれます。スキルは重要度別に体系化されており、企業はこれを基に、的確な人材育成や採用計画を立てることが可能です。 

IPAと経済産業省の「DX推進スキル標準ver1.2」
IPAと経済産業省の「DX推進スキル標準ver1.2」

 さらに、各人材類型の連携も重要です。たとえば、ビジネスアーキテクトはデザイナーやデータサイエンティストと連携し、市場ニーズを多面的に捉えて新規事業の創出や既存事業の高度化を図ります。特にサイバーセキュリティは、DXに伴うリスク管理を担い、外部専門家との連携も視野に入れて、安全性と利便性の両立を実現します。 

 

4.3. IT外注で負担軽減 

DXを推進する上で、限られたリソースの中で効率的に成果を上げるために、IT業務の外部委託を活用する企業が増えています。特にノンコア業務においては、外注によって社内の負担を軽減し、経営資源をコア業務に集中させる動きが見られます。 

IPAの「DX動向2024 - 日本企業が直面するDXの2つの崖壁と課題」によりますと、ビジネスモデルの変革で成果を上げている企業(BX企業)は、競争力に直結するコア業務では自社開発を重視する一方で、ノンコア業務には「SaaSの導入」や「外部委託」を積極的に取り入れています。特にSaaSの活用に関しては、PX企業よりも高い取組指数を示しており、柔軟で合理的な運用体制が整っていることがうかがえます。 

一方で、成果を上げていない企業では「パッケージソフトウェアの導入」に依存する傾向があり、自社に最適化されたシステム構築という点では課題が残ります。成果を出している企業は、業務の重要度や特性に応じて内製と外注を使い分けるなど、ITソーシング戦略を的確に設計している点が共通しています。 

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5. 終わりに 

デジタル変革の推進には、単なるシステム導入にとどまらず、経営戦略や組織体制の見直しを含めた全社的な取り組みが求められます。本稿では、企業が直面しやすい課題とその背景にあるリスク、そしてそれに対するガバナンスの在り方を整理しました。現実的な制約の中で効果を上げるには、基盤の整備と人材の強化、先端技術の活用をバランスよく進めることが鍵となります。 

今後、安定した運用と継続的な改善を実現するためには、目的に応じた外部リソースの活用やパートナーシップの構築も一つの有効な手段です。自社の状況を正しく把握し、中長期的な視点で取り組みを設計していくことが、持続可能な成長への近道となるでしょう。 

 

よくある質問

① 旧システムの技術的負債とセキュリティリスクを同時に解消するため、どのような取り組みが最も効果的と考えられるのでしょうか? 

技術的負債の解消には、既存のレガシーシステムを段階的にモダナイズする戦略と、ゼロトラストセキュリティの導入が不可欠です。具体的には、システムの現状評価を定期的に実施し、優先順位に基づいたアップデート計画を策定するほか、アクセス認証やデータ暗号化などの厳格なセキュリティ対策を徹底することが求められます。 

また、セキュリティインシデントの過去データを基に、AIによる異常検知システムを導入することで、潜在的リスクの早期発見が実現できます。これにより、システムの継続的な安定運用と安全性の両立が図れます。

 

② DX推進に必要な各専門ロールは、どのように連携することで企業の変革力を高めるのでしょうか? 

DXを推進するためには、各専門家がそれぞれの強みを持ち寄ることが重要です。例えば、ビジネスアーキテクトが市場動向や顧客ニーズを分析し、それに基づく戦略を策定するとともに、デザイナーやデータサイエンティストが具体的なサービスやプロダクトのコンセプトを形にします。 

さらに、ソフトウェアエンジニアがそのアイデアを実装し、サイバーセキュリティ担当がリスク管理を徹底することで、各部門がシームレスに連携します。これにより、企業全体として効果的かつ柔軟なDX推進体制が構築され、変革力が強化されるのです。 

 

③ ノンコア業務の外部委託を効果的に活用し、経営資源の最適化と業務効率化を実現するための具体的な評価基準やフレームワークはどのようなものが考えられるのでしょうか? 

外部委託の効果を最大化するためには、まず業務の重要度・特性の分析が必要です。これにより、内製化と外注を最適に使い分けるための基準が明確となります。評価フレームワークとしては、KPI(主要業績評価指標)とROI(投資対効果)の定量的評価に加えて、業務プロセスの標準化やSLA(サービスレベルアグリーメント)の明文化が挙げられます。 

さらに、外注先の技術力、対応力、セキュリティ体制に関する第三者評価やベンチマーク調査を活用し、継続的なパフォーマンスモニタリングを行うことで、柔軟かつ合理的な運用体制を構築することが可能です。これにより、ノンコア業務が効果的に委託され、企業全体の経営資源が戦略的な領域に集中される環境が整います。