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ローコード/ノーコード開発で加速するDX戦略

【企業向け】 ローコード/ノーコード開発で加速するDX戦略

デジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性が高まる中、企業は迅速なシステム開発と柔軟な対応力を求められています。その中で注目されているのが、ローコード/ノーコード開発です。これらの手法は、従来の開発プロセスを大幅に効率化し、非エンジニアでもアプリケーション開発が可能となることで、DX推進を加速させる鍵となります。 

この記事で分かること 
  • ローコード/ノーコード開発の基本概念とその違いを解説 
  • 日本市場における最新の市場動向と成長予測を紹介 
  • 企業が得られる具体的なメリットと導入事例を分析 
  • 導入時の注意点と成功のためのポイントを提示 

 

1. ローコード/ノーコード開発とは? 

ローコード/ノーコード開発は、直感的な操作で誰でもアプリを作れる手法で、非エンジニアでも業務改善に活用できます。 

ローコード開発は、簡単なコーディングとビジュアル設計を組み合わせた効率的な開発手法です。IT部門やシチズンデベロッパーに活用され、複雑な業務や基幹システムにも対応できるため、企業での導入が進んでいます。 

一方、ノーコード開発は完全にコード不要で、業務担当者が自らアプリを作成できるのが特長です。紙やExcelで行っていた作業をWebフォームなどに置き換え、現場主導で業務改善を進められます。 

ローコード/ノーコード開発は、誰でも扱いやすく、業務の効率化やデジタル化を身近にする手法として多くの企業で導入が進んでいます。では、実際に日本ではどのように広がっているのでしょうか。次に、その市場動向を見ていきます。 

 

2. 日本のローコード/ノーコード市場動向 

主なポイント 
  • 市場規模は1,225億円(2023年)から2,701億円(2028年)へ倍増予測 

  • 年平均成長率は17.1%と高水準で推移 

  • 直感的な操作と非エンジニアでも使える手軽さで導入が拡大中 

Hình ảnh
写真:IDC Japan

 

近年、日本国内におけるローコード/ノーコード開発市場は急速な拡大を見せています。IDC Japanの「国内ローコード/ノーコード開発テクノロジー市場予測を発表~生成AIの活用がLOB開発を促進」(2024年11月)によると、同市場の2023年における規模は1,225億円に達し、2023年~2028年の年平均成長率(CAGR)17.1%と予測されており、2028年には2,701億円規模に成長する見込みです。こうした背景には、企業の業務デジタル化やDX推進への需要が高まる中、非エンジニアでも業務アプリ開発を可能にするプラットフォームのニーズが拡大していることが挙げられます。 

特に、ビジュアルベースのUIやドラッグ&ドロップによる操作性、従来の開発に必要なコーディング知識の抽象化といった特徴により、IT部門だけでなく業務部門のユーザーにも広がりを見せています。 

 

3. ローコード/ノーコード開発の3つのメリット 

企業がDXを進める中で、開発手法の選定は業務効率や組織全体の柔軟性に大きな影響を与えます。ここでは、ローコード開発とノーコード開発それぞれの特徴を比較しながら、その強みと適用場面を詳しく見ていきます。 

 

3.1. ローコード開発の特徴 

主なポイント 
  • 開発コストと工数を3〜5割削減できる 

  • 柔軟なカスタマイズと高度なシステム連携が可能 

  • 業務部門とIT部門の協働体制(Fusion Team)を構築できる 

3.1.1. コストとリソースの最適化 

ローコード開発は、UI構築や業務ロジック設計をドラッグ&ドロップで視覚的に行えるため、開発期間が大幅に短縮され、開発人員の負担を軽減できます。特に既存のSIモデルでは調達〜開発〜保守の工数が膨大になりがちな一方で、ローコードはそれを3〜5割削減可能なケースも多く報告されています。これにより、エンジニアリソースをより戦略的なコア開発領域に集中させることが可能です。また、属人化のリスクも軽減され、メンテナンスの平準化・標準化が実現します。 

 

3.1.2. 柔軟性と拡張性の両立 

ローコードは「完全な内製開発」と「既製パッケージ」の中間に位置する開発モデルであり、業務要件に応じた柔軟なカスタマイズが可能です。多くのプラットフォームでは、必要に応じてJavaScript、Python、SQLなどのカスタムコード挿入が可能であり、特定の業界固有の処理やシステム連携にも対応可能。加えて、SalesforceやSAPなど既存のクラウド基盤とのAPI統合機能が豊富なため、システム間連携・全社アーキテクチャ戦略と整合性を持たせやすいのが特徴です。

 

3.1.3 .業務部門との協働体制構築 

ローコードの最大の価値は、IT部門と業務部門の協働開発体制(Fusion Team)を構築できることです。業務部門はプロトタイプや業務フロー設計を自ら行い、IT部門はセキュリティ、ガバナンス、パフォーマンスの最適化を担うことで、現場起点の改善とIT統制の両立が可能となります。これは、DXにおけるトップダウンとボトムアップの融合という観点からも、極めて重要なアプローチです。

 

3.2. ノーコード開発の特徴 

主なポイント 
  • 現場主導で業務を可視化・自動化し、即時の効率化が可能 

  • 初期コストが低く、ROIの見える化と柔軟な判断がしやすい 

  • 適用範囲を絞ることで、スピードとガバナンスを両立 

3.2.1. 非エンジニアでも即改善 

ノーコード開発は、プログラミングスキルがなくてもアプリケーションを構築・運用できるため、現場主導の業務改革に非常に適しています。営業、総務、経理、人事といった部門での業務プロセスの可視化・自動化・デジタル化を、自ら設計・展開できることで、業務効率の即時改善が可能になります。企業内での市民開発者(Citizen Developer)育成にも直結し、企業文化としてのデジタルマインド醸成にも寄与します。

 

3.2.2. 投資効果の早期可視化 

ノーコード開発は導入の初期コストが低く、開発〜リリース〜運用までのプロセスが非常に短いため、ROI(投資対効果)が明確かつ迅速に可視化されやすい点がCFOにとって重要です。PoCやMVPレベルでの迅速な仮説検証(Rapid Prototyping)に優れており、「試してから拡張・廃止を判断する」柔軟な意思決定が可能です。業務アプリが肥大化せず、不要な投資リスクを抑えられる点は、財務面におけるガバナンス強化にも資します。

 

3.2.3. 統制重視の限定運用 

一方で、ノーコード開発は拡張性や統合性に限界があるため、基幹システムやセキュリティ要件が厳しい領域での利用には慎重さが求められます。そのため、経営としては「現場業務改善のための短期導入ツール」として活用範囲を限定し、社内規定や情報セキュリティポリシーとの整合性を確保することで、スピードと統制のバランスがとれた導入戦略が可能となります。

 

4. ローコードとノーコードの比較 

主なポイント 
  • ローコードとノーコードは適用範囲や利用者に違いがある。 

  • ローコードはIT部門向けで複雑な業務に対応しやすい。 

  • ノーコードは現場向けで簡易な業務改善に適している。 

ローコードとノーコードはどちらも開発効率を大幅に高める手法ですが、その適用範囲や導入主体には明確な違いがあります。それぞれの特性を理解することで、自社の業務や体制に最も適した手法を見極めることができます。以下の表では、代表的な比較観点に基づき、両者の違いを整理しました。 

観点 

ローコード開発 

ノーコード開発 

主な利用者 

IT 部門・シチズンデベロッパー 

現場担当・バックオフィス 

典型用途 

複数部門にまたがる業務統合、基幹システム連携 

1 つの業務をサクッと効率化、紙/Excel の置き換え 

必要スキル 

軽いコーディング(JS・SQL など) 

コード不要、ドラッグ&ドロップ 

UI/UX 自由度 

カスタムレイアウト可 

テンプレート中心、細部は制限 

拡張・連携 

API 接続・複雑ロジック・バッチ可能 

シンプルな条件分岐まで 

データ連携 

既存 RDB と双方向同期 

表形式 DB・クラウドストレージが中心 

他システム連携 

ERP/CRM などエンタープライズ系 

Google Sheets・Slack など SaaS 

運用体制 

IT 部門で長期保守(テスト・バージョン管理) 

業務部門主体、拡大時は IT 支援必須 

セキュリティ 

詳細な権限・監査ログ・SSO 対応 

基本制御は可、細かいポリシーは弱い 

ガバナンス 

デプロイ承認・利用状況モニタリング 

“野良アプリ”増加リスク 

開発スピード 

要件固めれば迅速、複雑要件も対応 

単純アプリは最短 1 日 

コスト感 

ライセンス中〜高、導入調整が必要 

無料~低コストでスモールスタート 

スケール 

全社基盤へ拡張しやすい 

個人/小チーム利用が中心 

向くユースケース 

SFA、在庫・受発注、統合ポータル 

日報・申請フォーム、ToDo、アンケート 

ロックイン 

乗り換えに工数大 

切替えやすいが機能は限定 

ローコードとノーコードは、それぞれ異なる特性や活用シーンを持ち、導入効果も大きく異なります。組織の目的や体制に合わせた適切な選定と使い分けが、開発効率と業務改善の鍵を握ります。 

次に、これらの手法を実際に導入し、成果を上げている企業の事例と活用のポイントを見ていきましょう。 

 

5. ローコード/ノーコード開発を最適利用する企業 

ローコード/ノーコード開発は万能な解決策ではなく、それぞれに適した導入環境や活用シーンがあります。ここでは、どのような企業や業種がそれぞれの手法を最大限に活かせるのか、その特性と具体例を踏まえて紹介します。 

5.1 ローコード開発を最適に利用する企業 

主なポイント 
  • 大企業は業務自動化にローコードを活用する。 

  • 規制業界は統合と要件対応に使う。 

  • IT部門ある企業はカスタマイズに適している。 

  • 技術者は迅速にプロトタイプを作成する。 

ローコード開発は、ある程度の技術知識やカスタマイズ能力を持ったユーザー向けのツールであり、既存システムとの統合や複雑な業務プロセスへの対応が求められる環境に適しています。具体的には、以下のような企業がそのメリットを最大限に活用できます。 

最適な企業例 
  • 大企業およびエンタープライズ企業 

    大規模な組織は、既存の業務システムやレガシーシステムと連携しながら、新たなアプリケーションやワークフローの自動化を図る必要があります。 

    ローコード開発は、視覚的な設計環境を提供しながらも、必要に応じて独自のカスタムコードを導入できるため、複雑な要件に対応しやすく、エンタープライズレベルのシステム開発に適しています。 

  • 金融、保険、製造業など、規制・セキュリティが厳格な業界 

    これらの業界では、高度な統合性やコンプライアンス、セキュリティ要件を満たすため、既存システムと連携可能なカスタマイズ機能が求められます。 

    ローコードツールは、柔軟な拡張性を持ちながらも開発期間を大幅に短縮できるため、社内のIT部門や技術担当者が効率的に新システムを構築するのに役立ちます。  

  • IT・システム開発部門が強固な企業 

    ある程度のプログラミング知識を有する内部開発者が在籍する組織では、ローコード環境を活用して既存システムとの統合や独自機能の追加が容易になります。 

こうした企業では、技術者がプラットフォーム上で迅速にプロトタイプを作成し、実際の業務プロセスに合ったカスタマイズを実施できる点が大きな強みとなります。

 

5.2 ノーコード開発を最適に利用する企業 

主なポイント 
  • 中小企業は開発リソースを抑えつつ迅速にアプリを構築する。 

  • 現場部門は自ら業務改善ツールを作成する。 

  • ノーコードは非技術者でも業務自動化を進められる。 

  • サービス業は顧客対応や管理をノーコードで効率化する。 

一方、ノーコード開発はプログラミングの知識が不要で、ビジネス部門の利用者でも直感的に操作できる点から、短期間でシンプルなアプリケーションや業務ツールを構築する環境に適しています。以下のような企業がノーコードの活用で効果を発揮しています。 

最適な企業例 
  • 中小企業やスタートアップ 

    技術リソースが限られている企業では、専門のプログラマーを抱えることなく、迅速なサービス展開や試作が求められます。 

    ノーコードツールは、費用対効果の高い開発手法として、短期間で市場投入可能なアプリケーションを実現する手段として利用されます。 

  • 部門主導での業務改善を目指す企業 

    営業、マーケティング、人事など、現場の業務プロセスをより効率化するために、自らツールやフォーム、ダッシュボードを作成するケースが増えています。 

    技術的な知識がなくても利用できるノーコードプラットフォームは、ビジネスユーザーが独力で業務プロセスを自動化し、柔軟な改善を進めるために最適です。 

  • サービス業や小売業など、迅速な顧客対応や内部管理が重視される企業

    顧客管理システム、予約管理、問い合わせフォームといった比較的シンプルなアプリケーションは、ノーコードツールで容易に構築できるため、顧客対応の迅速化や内部プロセスの改善に直結します。 

こうした業種では、IT部門に頼らずに迅速にツールを導入できる点が大きなメリットとなります。 

 

6. ローコード/ノーコード開発で使えるおすすめツール7選 

ローコード/ノーコード開発ツールは、コーディング不要で業務アプリを迅速に構築でき、現場主導のDXや業務効率化を支援します。以下に、目的別に導入効果の高い代表的な7ツールを機能別で紹介します。 

ローコード/ノーコードツール7選の比較表

ツール 

タイプ 

主な機能 

主な利用シーン 

Microsoft Power Apps 

ローコード 

AI Copilot、オフライン同期、監査ログ 

社内ポータル、フィールドサービス向けアプリ 

OutSystems 

ローコード 

ドラッグ&ドロップ+フルコード拡張、CI/CD 

レガシー移行、基幹システム統合 

Mendix 

ローコード 

ビジュアルモデルエディタ、AIアシスト、API自動生成 

アプリポートフォリオ管理、レポーティング 

ServiceNow App Engine 

ローコード 

AI‑Flow生成、イベント管理、詳細権限制御 

ITSM、サプライチェーン可視化 

kintone 

ローコード寄りノーコード 

業務テンプレート、REST API連携、細粒度権限設定 

部門PoC、非IT部門の業務アプリ 

Bubble 

ノーコード 

ドラッグ&ドロップIDE、プラグイン、独自ドメイン対応 

スタートアップのMVP、業務SaaS 

Adalo 

ノーコード 

React Nativeコンポーネント、プッシュ通知、課金対応 

イベントアプリ、社内モバイル作業支援 

 

6.1. Microsoft Power Apps(ローコード) 

Microsoft Power Appsは、Microsoft 365やDynamics 365とシームレスに統合できるローコード開発環境です。AI Copilotにより画面設計やビジネスロジックを自動生成でき、オフライン同期や高度な監査ログ検索などのエンタープライズ機能も備えています。

社内ポータルや承認ワークフロー、フィールドサービス向けモバイルアプリを短期間で構築可能で、Azure ADによる一元的アクセス管理でガバナンス要件もクリア。Microsoft製品利用企業での導入障壁が低いのも大きな強みです。

 

6.2. OutSystems(ローコード) 

OutSystemsは、大規模エンタープライズ向けに設計されたローコードプラットフォームで、ドラッグ&ドロップ開発とフルコード拡張を両立します。CI/CDやマイクロサービス統合、自動リリース機能などを標準提供し、開発から本番運用までのライフサイクルを強力にサポートします。

国内外の大手企業のレガシーシステム移行や全社基盤構築で多くの採用実績があり、高いスケーラビリティとROIを実現。ただし初期ライセンス費用は比較的高めです。

 

6.3. Mendix(ローコード) 

Mendixはモデル駆動開発(MDA)を採用し、ビジュアルエディタで複雑な業務アプリを高速に構築できます。AIアシストによるコード生成やOData/REST APIの自動出力機能もあり、オンプレミス・クラウド双方へのデプロイが可能です。

Gartner Magic Quadrantでリーダー常連の実績を持ち、大規模チームや複数アプリのポートフォリオ管理に適しています。エンタープライズ要件の厳しいシナリオでも省力化を実現します。 

 

6.4. ServiceNow App Engine(ローコード) 

ServiceNow App EngineはITSMプラットフォーム「Now Platform」上で動作し、ローコード開発とワークフロー自動化を統合します。AI‑Flow Generatorがプロセス設計を支援し、詳細な権限制御や監査ログ機能でガバナンスを担保します。

IT資産管理やヘルプデスク、サプライチェーン可視化など部門横断ワークフローに最適。セキュリティ要件が高い大企業でも安心して運用できます。

 

6.5. kintone(ローコード寄りノーコード) 

kintoneはサイボウズが提供する日本語UI特化型の業務アプリ基盤で、豊富なテンプレートとドラッグ&ドロップ操作で非エンジニアでもアプリを自作可能です。REST APIやJavaScriptカスタマイズにも対応し、他システム連携もスムーズです。

部門単位のPoCや自治体の業務改善、営業支援アプリなど幅広く利用されており、細かなアクセス権設定と日本語サポート体制が評価されています。

 

6.6. Bubble(ノーコード) 

BubbleはWebアプリ開発に特化したノーコードプラットフォームで、フロントエンドからDB、ワークフロー、ホスティングまですべてGUIで完結します。プラグインマーケットプレイスも充実し、2025年にはテキストからUI/ワークフローを生成するAI App Generatorをリリース予定です。

スタートアップのMVP開発や業務SaaS立ち上げに最適で、開発速度が非常に速い反面、規模拡大時にはパフォーマンス最適化が必要になるケースがあります。

 

6.7. Adalo(ノーコード/モバイル特化) 

AdaloはiOS/Androidネイティブアプリをノーコードで構築できるプラットフォームで、React Nativeベースのコンポーネントをドラッグ&ドロップで設計できます。課金やプッシュ通知などモバイル固有機能も標準搭載しています。

イベントアプリやフィールドワーク支援ツール、モバイルプロトタイプ検証などに利用され、デザインの自由度とストア公開までの手軽さが魅力です。 

 

7. 終わりに 

ローコード/ノーコード開発は、開発の迅速化やコスト削減に加え、全社的なDX推進の鍵となる手法です。非エンジニアも参加できる柔軟な開発環境は、人材不足や変化への即応が求められる企業にとって大きな強みとなります。 

一方で、導入には業務特性やガバナンスに応じた明確な戦略が必要です。ローコード/ノーコードの強みを正しく見極め、目的別に適切に使い分けることで、効率と統制の両立を実現できます。企業の変革を支える「実行力あるDX」の鍵は、こうした技術選定にあります。 

 

よくある質問 

➀「Fusion Teamの導入は現場とITのギャップを本当に埋められるのか?」 

回答: 

はい、ただし仕組み化が鍵です。Fusion Team(業務×ITの協働チーム)は、ローコードを通じて業務部門がプロトタイピングを行い、IT部門がセキュリティやスケーラビリティを担保する体制ですが、これを成功させるには「役割の明確化」「アジャイルな開発サイクルの導入」「共通KPIの設計」が不可欠です。属人的なコラボではなく、あらかじめ設計された共同フレームワークが運用できる企業ほど、DXが加速します。 

 

➁「ノーコード活用の拡大が“シャドーIT”を助長するリスクは?」 

回答:

 非常にリアルな懸念です。ノーコードの民主化は業務改善を加速させる一方、IT部門の関与が薄いままツールが乱立すれば「統制外IT=シャドーIT」が生まれます。このリスクを回避するには、「認定プラットフォームの指定」「開発申請プロセスの簡素化」「自動監査機能の導入」など、ノーコードガバナンスの設計が必要です。IT部門はブロッカーではなく、エンパワーメントと統制のバランサーとして設計に関与すべきです。 

 

➂「ローコード/ノーコード導入後にPoC止まりにならないためには何が必要か?」 

回答: 

PoC(概念実証)で終わるケースは非常に多く、主な原因は「スケール戦略の欠如」「ROI算出の遅れ」「組織内での展開支援不足」です。これを防ぐには、開発初期から全社展開を見据えたアーキテクチャ設計ユースケースの横展開プランが必要です。さらに、現場主導の改善を企業戦略に接続する「DXオーナーシップ制度」を設けることで、個別成功事例を全社の変革ドライバーに昇華できます。 

 

➃「ローコード/ノーコード導入で“内製化”を進める企業が陥りやすい落とし穴とは?」 

回答: 

“内製化=成功”という誤解が落とし穴です。確かにローコード/ノーコードは内製開発を促進しますが、「スキルの属人化」「コード品質の分散」「ナレッジ継承の難しさ」といった“内製のメンテナンス問題”が必ず発生します。これを防ぐには、①開発ガイドラインの整備、②共通テンプレート・モジュールの活用、③開発ログの中央管理、さらに④市民開発者のトレーニング体制が不可欠です。単に“作れる環境”ではなく、“運用と継続改善”の設計が問われる段階に入っています。