ノーコード開発プラットフォーム8選
企業のデジタル化が加速するなかで、従来の「システム開発=専門エンジニアに依頼するもの」という考え方は大きく変わりつつあります。その背景にあるのが、ノーコード開発プラットフォームの普及です。ノーコードとは、その名の通り「コードを書かずに」アプリやWebサービスを構築できる開発手法を指し、非エンジニアでも直感的に操作できるUIや豊富なテンプレートを備えています。
特に近年では、スタートアップのMVP(Minimum Viable Product)開発から、現場主導の業務効率化アプリ、ECやブランドサイトの立ち上げまで、多様なニーズに応じたプラットフォームが登場しています。しかし、数多くのツールが存在するため、「どれを選ぶべきか」を判断するのは容易ではありません。
本記事では、世界的に利用される代表的なノーコード開発プラットフォームを10種類取り上げ、概要・特徴・活用例・おすすめポイントを整理します。単なる紹介にとどまらず、利用目的やビジネス規模に応じた最適な選び方を考察することで、読者が自分に合ったツールを戦略的に選択できるように導きます。
1. Bubble
Bubbleは、Webアプリを完全にノーコードで構築できる代表的なプラットフォームです。
項目 | 内容 |
概要 | ドラッグ&ドロップでWebアプリを構築できるオールインワン環境。 |
特徴 | ・データベース管理機能・API連携・UI自由度が高い・ホスティング込み |
活用例 | ・予約システム・マーケットプレイス・SaaS型サービス |
おすすめポイント | コード不要で本格的なWebアプリが作れる。スタートアップのMVP開発に最適。 |
Bubbleは「ゼロからサービスを立ち上げたい起業家」に広く使われています。
2. Adalo
Adaloは、モバイルアプリに特化したノーコード開発プラットフォームです。
項目 | 内容 |
概要 | ネイティブアプリをノーコードで開発できるツール。 |
特徴 | ・App Store / Google Playに直接公開可能・UIコンポーネント豊富・データベース組み込み・外部API接続可 |
活用例 | ・SNS風アプリ・ECアプリ・教育用アプリ |
おすすめポイント | モバイルアプリ開発に強みを持ち、初心者でも短期間で本格アプリを公開可能。 |
Adaloは「スマホアプリを最速で公開したい」ニーズに最適です。
3. Glide
GlideはGoogleスプレッドシートやExcelのデータをそのままアプリ化できるノーコードツールです。
項目 | 内容 |
概要 | スプレッドシートをベースにしたアプリ生成ツール。 |
特徴 | ・直感的なUI作成・データ管理をスプレッドシートで代替・テンプレート豊富・モバイル対応 |
活用例 | ・社内管理アプリ・顧客リストアプリ・小規模CRM |
おすすめポイント | データが整っていれば即アプリ化可能。業務効率化の即戦力になる。 |
Glideは「エクセル感覚でアプリを作りたいユーザー」に向いています。
4. AppSheet
AppSheetはGoogleが提供するノーコード開発環境で、現場主導の業務改善に強みがあります。
項目 | 内容 |
概要 | Google Workspaceと統合された業務アプリ作成ツール。 |
特徴 | ・スプレッドシートやBigQuery連携・モバイルアプリ自動生成・オフライン利用可能・AI機能搭載 |
活用例 | ・現場管理アプリ・営業支援アプリ・フィールドワーク効率化 |
おすすめポイント | 非エンジニアが現場で業務改善アプリを作成できる。 |
AppSheetは「現場の声をそのまま形にしたい企業」にぴったりです。
5. Airtable
Airtableはデータベースとスプレッドシートを組み合わせたノーコードツールです。
項目 | 内容 |
概要 | データベース+ノーコードUI構築ができるプラットフォーム。 |
特徴 | ・カレンダー/ガントビュー対応・API連携豊富・自動化機能あり・チームコラボレーション強化 |
活用例 | ・コンテンツ管理・プロジェクト管理・CRM代替 |
おすすめポイント | データ整理からアプリ開発まで一気通貫で対応可能。 |
Airtableは「情報管理とアプリを一元化したい組織」に有効です。
6. Webflow
Webflowはノーコードで本格的なWebサイトをデザイン・公開できるプラットフォームです。
項目 | 内容 |
概要 | 高度なデザイン自由度を持つWebサイト構築ツール。 |
特徴 | ・CMS機能搭載・SEO最適化対応・レスポンシブデザイン自動対応・アニメーション豊富 |
活用例 | ・ブランドサイト・ECサイト・ポートフォリオサイト |
おすすめポイント | ノーコードでプロフェッショナルなWeb体験を実現可能。 |
Webflowは「デザイン性重視のWebサイト」を求めるユーザーに最適です。
7. Notion
Notionはノート・データ管理ツールですが、外部拡張と組み合わせることでノーコード開発基盤として利用できます。
項目 | 内容 |
概要 | ドキュメント+データベース+アプリ化機能を備えるコラボツール。 |
特徴 | ・API連携・データベース公開機能・テンプレート豊富・他サービスと組み合わせやすい |
活用例 | ・ナレッジベース・簡易CMS・社内ポータルサイト |
おすすめポイント | コラボレーション+アプリ化を一元化でき、チーム利用に適する。 |
Notionは「情報整理とアプリ化を同時に実現したい企業」に適しています。
8. Squarespace
Squarespaceは、デザイン性に優れたWebサイトをノーコードで作れるCMS型ツールです。
項目 | 内容 |
概要 | デザイン品質に特化したクラウド型CMS。 |
特徴 | ・美しいテンプレート・EC機能搭載・SEO最適化・ブログ機能標準 |
活用例 | ・ブランドサイト・クリエイター向けポートフォリオ・小規模EC |
おすすめポイント | ブランド価値を高めるサイトを短期間で作成可能。 |
Squarespaceは「デザイン性と操作性を両立したいユーザー」に向きます。
おわりに
ノーコード開発プラットフォームは、専門知識なしで業務アプリやWebサービスを作れる点が最大の強みです。BubbleやAdaloのように本格的なアプリをゼロから作れるツールもあれば、GlideやAppSheetのように現場主導の業務改善に即効性を発揮するものもあります。また、WebflowやSquarespaceはビジネス成長を直接後押しする分野に特化しています。
自社や個人が求める「目的(Webアプリか、モバイルアプリか、業務効率化か、ECか)」を明確にした上で、適切なツールを選定することが成功のカギです。ノーコードは単なるツールではなく、DXの入り口として戦略的に活用すれば、短期的なROI改善と長期的な競争力強化につながります。
よくある質問
Q1. ノーコードで作ったアプリやWebサービスは本当にスケールできるのでしょうか?
「ノーコード=小規模案件専用」というイメージを持つ方も多いですが、近年は必ずしもそうではありません。たとえば Bubble はユーザー数数万人規模のサービスでも運用されており、外部APIや外部データベースと連携することで、通常のWebアプリに近いパフォーマンスを実現できます。
ただし、サーバーの柔軟性やカスタマイズ度はフルコード開発に比べると制約があるため、一定規模を超えたら 「ノーコードでMVP → コードベースで本格構築」 という移行プランを視野に入れるのが現実的です。
Q2. ノーコードとローコードの違いは何ですか?どのように使い分けるべきでしょうか?
ノーコードは「完全にコードを書かずに」アプリやサイトを作るのに対し、ローコードは「基本はGUI操作だが、一部をコードで拡張できる」開発スタイルです。たとえば Glide や Adalo は典型的なノーコードで、プログラミング知識ゼロの人でも扱えます。一方、OutSystems や Mendix のようなローコードは、JavaScriptやSQLを組み合わせることで、大規模システムにも対応可能です。
つまり、スピード重視で試作したいときはノーコード、本格的に業務基幹に組み込みたい場合はローコード と使い分けるのが効果的です。
Q3. セキュリティやデータ保護の観点からノーコードを使っても大丈夫ですか?
セキュリティ面はしばしば懸念点として挙げられます。多くのノーコードプラットフォームはクラウド型で、通信の暗号化(SSL/TLS)やユーザー認証機能 が標準で備わっており、中小企業レベルであれば十分に安全に利用できます。たとえば AppSheet はGoogleのインフラ上で動作するため、セキュリティ基準も高いと言えます。
ただし、医療や金融といった高機密性が求められる領域では、利用規約やデータ保管場所を必ず確認し、場合によっては社内のセキュリティ基準に合わせたカスタム開発に切り替える判断も必要です。
Q4. ノーコードで開発したものを将来的にエンジニアが引き継ぐことはできますか?
これは非常に現場で多い質問です。結論としては 「そのままソースコードを引き継ぐ」のは難しい 場合が多いです。なぜならノーコードは独自のプラットフォーム上で動作しており、コードに直接アクセスできないケースが大半だからです。ただし、仕様書代わり としては非常に役立ちます。
MVP段階でノーコードを用いてユーザーのフィードバックを集め、その挙動や画面構成をもとにフルコードへ移行すれば、エンジニアはゼロから要件定義を行う必要がなく、開発効率が大幅に上がります。
Q5. ノーコードは「一時的なブーム」なのでしょうか?それとも今後の主流になっていきますか?
ノーコードは単なる一時的な流行ではなく、今後も一定のポジションを占め続けると考えられます。その理由は二つあります。第一に、人材不足問題。世界的にエンジニアが不足しており、非エンジニアが自分でアプリを作れる環境は不可欠です。第二に、DXの加速。企業がスピード感を持って業務改善や新規事業を進めるには、従来型の長期開発では間に合いません。
たとえば日本でも多くの中小企業が Glide や Airtable を用いて現場主導のアプリを導入し、数週間で業務改善を実現しています。こうした背景から、ノーコードは「フルコード開発の代替」ではなく「補完・加速ツール」として長期的に利用されていくと見られます。