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kintoneとは?ノーコードで業務を変える仕組みと活用方法を解説

kintoneとは?ノーコードで業務を変える仕組みと活用方法を解説

業務のデジタル化が急速に進む現代、多くの企業が「情報共有」「業務効率化」「チーム連携」といった課題に直面しています。特に、複数部署間での情報のやり取りやプロジェクト管理の複雑化は、業務の停滞やミスの原因となり、企業の成長を妨げる要因となり得ます。こうした状況の中で、効率的な業務運営を支援するツールの導入が急務となっています。 

その解決策として注目されているのが、サイボウズ社が提供する「kintone(キントーン)」です。kintoneは、ノーコード・ローコードでアプリケーションを作成できる業務改善プラットフォームであり、プログラミングの専門知識がなくても、業務フローに合わせたカスタムアプリを簡単に作成・運用できます。その柔軟性と拡張性から、中小企業はもちろん、大企業においても幅広く導入が進んでいます。 

本記事では、kintoneの基本的な概要に始まり、具体的な特徴やメリット・デメリットを詳しく解説します。さらに、実際の導入事例を通じて、どのような業務課題を解決できるのか、導入時に注意すべきポイントは何かまで網羅的に紹介します。これにより、企業がkintone導入を検討する際の判断材料として、役立つ情報を提供することを目的としています。 

 

1. kintoneとは? 

1.1 基本概要 

kintoneは、プログラミング不要で業務アプリを構築できるクラウド型プラットフォームです。営業管理、顧客管理、問い合わせ対応、在庫管理など、多様な業務アプリをドラッグ&ドロップの直感的な操作で作成できます。 

さらに、チーム内での情報共有やワークフローの自動化機能を備えており、「データベース」と「コミュニケーションツール」を統合した存在といえます 

 

1.2 開発思想 

kintoneは、従来の「システム開発=エンジニア主体」という枠組みを崩し、現場担当者自身が必要に応じてシステムを作れることを目的としています。これにより、業務改善のサイクルをスピーディに回すことが可能になり、IT部門への依存度を下げる効果もあります。 

 

1.3 導入実績と利用状況 

kintoneは、導入から10年以上にわたり、多様な業種の企業に利用されています。現在では、39,000社以上が導入しており、その中には東証プライム上場企業の3社に1社も含まれます。こうした広がりは、kintoneが企業規模や業種を問わず柔軟に活用できるプラットフォームであることを示しています。 

さらに、これまでに作成されたアプリ数は3,324,000件以上に達しており、現場の業務改善やデジタル化を支えるツールとして確かな実績を築いています。 

1.3 導入実績と利用状況

 

 

2. kintoneの仕組み 

kintoneは「情報を蓄積し、活用する」ことを軸にしたシステムで、蓄積データを効率的に管理するためのアプリを簡単に作成できるのが特徴です。ユーザーは一から自由にカスタマイズすることも、100種類以上ある用途別テンプレートを使って手軽にアプリを構築することもできます。 

アプリに入力された情報はすべてkintone上に保存され、目的に応じて整理・管理が可能です。運用方法を工夫することで、データの追跡性(トレーサビリティ)を高めることもでき、社内外の業務効率化や情報共有に大きく貢献する仕組みとなっています。 

 

3. kintoneの特徴 

kintoneの特長は多岐にわたります。以下の表で主要なポイントを整理します。 

特徴 

内容 

ノーコード開発 プログラミング知識不要でアプリ作成可能 
柔軟なカスタマイズ プラグイン・JavaScriptで高度な拡張も可能 
チーム連携機能 コメント、通知、共有機能で情報伝達を効率化 
モバイル対応 スマホアプリで外出先からも利用可能 
API連携 他のSaaSや社内システムとスムーズに統合 

これらの特徴により、現場の声を即座にシステムに反映できる点が、従来型ERPやグループウェアと大きく異なります 

 

4. Kintoneでできること 

Kintoneは、単なる業務システムではなく、現場の課題をスピーディに解決し、組織全体の生産性を向上させるための多機能プラットフォームです。日々の業務を効率化するだけでなく、チームの連携や意思決定の質を高めることができます。具体的には以下のようなことが可能です。 

 

4.1. 情報の一元管理・共有 

社内のさまざまなデータや資料をクラウド上で一元管理できます。例えば、営業報告や進捗管理、顧客情報などをチーム全員でリアルタイムに共有することが可能です。 

情報の取りこぼしや重複作業が減り、業務の透明性が高まります。誰でも必要な情報にすぐアクセスできるため、コミュニケーションコストも大幅に削減できます。 

 

4.2. 業務フローの自動化 

承認作業や通知、タスクの割り振りなど、定型的な業務フローを自動化できます。例えば、経費精算や休暇申請などをKintoneで自動処理すれば、承認待ちで止まることなくスムーズに業務が進みます。手作業のミスも減り、社員はより付加価値の高い業務に集中できるようになります。 

 

4.3. オリジナルアプリの作成 

Kintoneでは、プログラミングの知識がなくても、自社の業務に合わせたオリジナルアプリを作成できます。例えば、イベント管理用アプリや在庫管理アプリ、営業支援アプリなどを簡単に構築可能です。現場の「こうしたい」をすぐに形にできるため、業務改善のスピードが格段に向上します。 

 

4.4. データの可視化・分析 

Kintoneでは、集めたデータを簡単にグラフやレポートとして可視化できます。例えば、売上の推移や案件の進捗状況を一目で把握できるため、経営判断や現場の意思決定が迅速に行えます。 

数値や傾向を視覚的に確認できることで、問題の早期発見や改善策の立案が容易になります。 

 

4.5. 多様な外部サービスとの連携 

Slackやメール、Excel、Google Workspaceなど、既存のツールと連携することで、さらに効率的に業務を進められます。例えば、Kintone上で更新した情報を自動的にSlackで通知したり、Excelデータを取り込み分析に活用したりすることが可能です。 

ツール間の移動やデータの二重管理を減らし、作業のスムーズさを向上させます。 

Kintoneは「現場の声をすぐに形にできるツール」として非常に優れています。小規模な改善から全社的な業務改革まで幅広く対応できるため、成長フェーズにある企業にとって強力な武器となります。 

 

5. Kintone基本機能でできないこと 

Kintoneは多機能で柔軟な業務改善プラットフォームですが、基本機能だけでは対応が難しいケースもあります。導入前にこれらの課題を把握しておくことで、運用時のトラブルや追加コストを防ぐことができます。 

 

5.1 複雑な業務プロセスの自動化 

Kintoneの標準機能では、比較的シンプルなワークフローの自動化は可能ですが、複雑な条件分岐や多段階の承認フローなど、高度なプロセスには対応しきれません。その場合、JavaScriptや外部サービスとの連携によるカスタマイズが必要となります。 

 

5.2 高度なデータ集計・分析 

Kintoneには基本的な集計・グラフ表示機能がありますが、大規模データの統計処理や複雑な分析には向きません。例えば、BIツールで行うような高度な分析や、複数シートを横断した複雑な集計は追加ツールが必要です。 

 

5.3 デザイン・UIの自由度 

標準のアプリ画面はシンプルで操作しやすい一方、独自のデザインやユーザー体験を追求する場合、標準機能だけでは限界があります。画面レイアウトや表示形式を細かくカスタマイズしたい場合は、外部プラグインやカスタムコードを利用する必要があります。 

 

5.4 大量データや高負荷環境での運用 

Kintoneは中小〜中規模のデータ管理に最適化されていますが、膨大なデータ量や高頻度アクセスが必要な場合、動作が重くなることがあります。こうした場合も、アプリの設計や外部連携を工夫する必要があります。 

 

5.5 特殊な業務連携や外部システム統合 

標準機能では対応できない特殊なシステム連携(自社ERPやカスタムデータベースとのリアルタイム同期など)は、追加開発やAPI連携が必須です。完全に「クリックだけで済む」運用には限界があります。 

 

6. kintoneの活用事例 

kintoneは企業規模や業種を問わず、柔軟に業務プロセスを改善できる点が評価されています。ここでは、中小企業・大企業・公共機関という3つの代表的なケースに分けて、その具体的な活用事例を表形式で整理します。 

 

6.1 中小企業の業務改善 

中小企業では、Excelや紙ベースに依存しているケースが多く、情報共有の遅れや入力ミスが大きな課題になります。kintoneを導入することで、受発注や在庫管理が一元化され、業務効率と正確性が飛躍的に向上します。 

活用領域 

課題 

kintone導入効果 

具体的事例 

受発注管理 Excel管理で更新遅延や誤入力が多発 アプリ化によりリアルタイム共有が可能 卸売業での注文状況を自動更新し、出荷遅延を防止 
在庫管理 二重入力や在庫数の食い違い 在庫情報を一元管理し、欠品・過剰在庫を削減 小売業での「在庫アラート機能」により補充を自動化 
顧客対応 顧客履歴が個人PCに分散 顧客情報を共有化し、スムーズな対応が可能 製造業での問い合わせ履歴を全社で可視化 

中小企業では「脱Excel・脱紙業務」を実現し、少人数でも高い生産性を発揮できる環境を構築できます。 

 

6.2 大企業の部門単位活用 

大企業ではERPや基幹システムを導入しているケースが多いですが、部門ごとの細かい業務や現場特有のワークフローはカバーしきれません。そこで、kintoneが「補完ツール」として活躍します。 

活用領域 

課題 

kintone導入効果 

具体的事例 

営業部門 ERPに営業進捗を反映するのが遅い 営業日報をkintoneで即時共有 営業担当が出先からスマホで入力し、チーム全体で進捗可視化 
人事部門 研修や勤怠管理がシステムに統合されていない kintoneで人事関連アプリを構築 研修申込・参加状況をkintoneで管理 
プロジェクト管理 部署横断で情報共有が難しい タスク管理をkintoneに集約 複数部署の開発案件を一つのアプリで進捗管理 

大企業では「ERPの隙間を埋める柔軟なシステム」として活用され、部門ごとの独自課題を解決します。 

 

6.3 公共機関での活用 

公共機関や自治体では、申請・承認業務が紙ベースで行われることが多く、時間や人件費のコストが大きな課題です。kintoneを導入することで、業務効率化と透明性向上を同時に実現できます。 

活用領域 

課題 

kintone導入効果 

具体的事例 

申請・承認フロー 紙ベースで承認に時間がかかる 電子化により迅速かつ透明な処理が可能 自治体での補助金申請フローをkintone化し処理日数を半減 
住民対応 住民からの問い合わせ情報が分散 kintoneで履歴を一元化し、迅速対応 コールセンターでの住民相談履歴をアプリで管理 
内部業務管理 庶務や設備管理が属人的 業務アプリ化で効率化 学校施設の利用予約をオンライン管理化 

公共機関では「デジタル化・効率化の推進役」として活躍し、住民サービスの質を高める大きな効果があります。 

 

おわりに 

kintoneとは、業務改善を現場主導で実現できる革新的なクラウドサービスです。特に「Excelでの限界を感じている」「システム部門に依存せず現場で改善したい」という企業に適しています。一方で、基幹システム全体の置き換えには不向きであるため、導入範囲を明確にし、ERPやCRMと補完的に活用することが成功の秘訣です。 

自社の業務規模や改善領域を整理した上でkintoneを導入すれば、業務効率の向上とチーム間のコラボレーション強化を同時に実現できます。申請・報告などの業務を自動化し、情報共有をリアルタイム化することで、組織全体の生産性を高めることが可能です。 

 

よくある質問 

Q1. kintoneは他の業務システム(ERP・CRM・SFAなど)とどう違うのですか? 

A. kintoneは「現場主導で業務アプリを構築・改善できる」点が他システムと大きく異なります。ERPやCRMがあらかじめ決められた機能・業務プロセスを提供するのに対し、kintoneはノーコード・ローコードで自由にアプリを設計でき、現場の実務フローをそのままシステム化できます。 
また、営業支援(SFA)や顧客管理(CRM)のような用途にも対応できますが、「1つの目的特化型」ではなく、部門や業種を問わず複数の業務を1つのプラットフォーム上で運用できる汎用性が強みです。 
そのため、ERPの補完や現場業務のデジタル化、既存システムの隙間を埋めるツールとして導入されるケースが増えています。 

 

Q2. kintoneを導入する際に注意すべきポイントは何ですか? 

A. 成功の鍵は「目的の明確化」と「運用体制の設計」です。 
まず、導入前に「どの業務を改善したいのか」「誰が運用・保守を行うのか」を具体化することが重要です。kintoneは柔軟な設計が可能な反面、自由度が高いため、設計方針を曖昧にすると運用が複雑化します。 
また、社内のITリテラシーを踏まえて「管理者」「アプリ作成者」「利用者」の役割を明確にすることも重要です。 
さらに、導入初期にはスモールスタートで1~2業務に絞り、効果を実感したうえで全社展開するのが最も効果的です。 

 

Q3. kintoneはどのような業務・業種に向いていますか? 

A. kintoneは、業種・業界を問わず「データの整理・共有・報告」を伴う業務に非常に適しています。 
具体的には、営業管理・顧客対応・受発注・在庫・人事・プロジェクト管理など、日々の業務記録や進捗共有が重要な領域です。 
中小企業ではExcel業務の置き換えとして導入されることが多く、大企業ではERPや基幹システムでカバーしきれない「現場単位の業務」や「部門間連携」の領域で活用されています。 
また、自治体・教育機関などでは、申請・承認業務の電子化や住民対応の履歴共有など、透明性と効率性の向上を目的に採用が進んでいます。 

 

Q4. kintoneの拡張やカスタマイズはどこまで可能ですか? 

A. kintoneは標準機能だけでも多くの業務をカバーできますが、JavaScriptやREST APIを用いたカスタマイズにより、より高度な運用も可能です。 
例えば、 

  • 独自UIの実装(入力画面のデザイン変更、グラフの拡張表示) 

  • 外部サービスとのリアルタイム連携(Slack、Google Workspace、Salesforceなど) 

  • 自動処理・条件分岐を含む複雑なワークフロー 
    といった拡張が実現できます。 
    また、サイボウズ公式の「kintone拡張プラグイン」やパートナー企業が提供する連携サービスを利用すれば、開発スキルがなくても高度な機能を追加できます。 

 

Q5. kintone導入の費用対効果はどのように評価できますか? 

A. kintoneの費用対効果は、「システム開発コストの削減」と「業務効率化の定量的改善」で評価されます。 
従来、業務システムを構築する場合、開発・保守に多額のコストと時間が必要でした。しかし、kintoneでは現場担当者が自らアプリを作成・修正できるため、IT部門や外部ベンダーへの依存を大幅に削減できます。 
また、申請処理時間の短縮、報告業務の自動化、ミスや重複作業の削減といった具体的な改善効果がすぐに現れるのも特徴です。 
実際に、導入企業の多くは「1年以内に投資回収が可能」と回答しており、中長期的には生産性向上と業務スピードの向上によるROI改善が期待できます。