エンパシーマップとは?意味・6つの要素・作り方・活用方法をわかりやすく解説
商品やサービスを改善するとき、企業側はつい「ユーザーはこの機能を便利だと思うはず」「この情報を見れば次に何をすればよいか分かるはず」と、自分たちの視点からユーザーの行動を予測してしまいがちです。しかし、実際のユーザーが見ているもの、周囲から聞いている情報、心の中で考えていること、不安に感じていること、実際に口にする言葉、そして最終的に取る行動は、企業側の想定と一致するとは限りません。
例えば、ECサイトで購入率が低い場合、企業側では「商品説明が不足している」と考えるかもしれません。しかし、ユーザー本人は「価格が本当に適正なのか不安」「返品できるか分からない」「レビューが少ないため信頼できない」と考えている可能性があります。表面上の行動だけを見ると「購入しなかった」という一つの結果ですが、その背景には複数の感情、判断、情報源、経験が存在しています。
こうしたユーザーの視点を整理するために活用される代表的なフレームワークが、エンパシーマップ(Empathy Map)です。日本語では「共感マップ」と呼ばれることもあります。
エンパシーマップでは、ユーザーが何を見ているのか、何を聞いているのか、何を考え・感じているのか、何を話し・行動しているのかといった情報を一枚のマップへ整理します。これにより、単純な年齢や職業といった属性だけではなく、その人が置かれている状況や感情まで含めて理解しやすくなります。
重要なのは、エンパシーマップを「ユーザーについて想像したことを書き込むシート」として使わないことです。できる限りユーザーインタビュー、行動観察、問い合わせ、レビュー、アクセス解析などの実際のリサーチ結果をもとに作成し、事実と仮説を区別しながら整理することが重要です。
本記事では、エンパシーマップとは何かという基本から、一般的に使われる6つの要素、ペルソナやカスタマージャーニーマップとの違い、具体的な作り方、実務での活用方法、作成時の注意点まで詳しく解説します。
1. エンパシーマップとは
エンパシーマップとは、特定のユーザーについて、見ているもの、聞いていること、考えていること、感じていること、話していること、行動していることなどを一つの図へ整理し、ユーザーへの理解と共感を深めるためのフレームワークです。
UXデザイン、サービスデザイン、デザイン思考、新規事業、商品企画、マーケティングなどの分野で活用され、チーム内で「誰のために、どのような課題を解決するのか」を共通認識として持つために利用されます。
1.1 エンパシーマップの目的
エンパシーマップの主な目的は、ユーザーを単なる「ターゲット層」として捉えるのではなく、一人の人間として理解することです。
例えば、「30代会社員」「ECサイトを利用する人」「子育て中の女性」といった属性情報だけでは、その人が商品を購入する際に何を不安に感じ、誰の意見を参考にし、何を基準に意思決定しているのかまでは分かりません。
エンパシーマップでは、ユーザーが置かれている状況を複数の視点から整理するため、「この人は何を考えているのか」「なぜその行動を取るのか」という背景を考えやすくなります。
結果として、単に機能を追加するのではなく、ユーザーが本当に解決したい問題を見つけやすくなります。
1.2 なぜ「共感」が重要なのか
UXデザインやプロダクト開発では、ユーザーが何をするかだけでなく、なぜその行動を取るかを理解することが重要です。
例えば、ユーザーが途中で申込フォームを閉じたという事実だけを見れば、「フォームが長いから短くしよう」と考えるかもしれません。しかし、実際には「個人情報を入力することに不安がある」「料金がいつ発生するか分からない」「申込後に営業電話が来そうで嫌だ」と感じている可能性もあります。
この場合、単純に入力項目を減らしても問題は解決しません。
ユーザーの感情や不安まで理解することで、プライバシー説明を追加する、料金発生のタイミングを明確にする、営業連絡の有無を説明するといった、より本質的な改善につなげられます。
1.3 エンパシーマップはデザイン思考でも活用される
デザイン思考では、プロダクト側の都合から解決策を作るのではなく、まずユーザーを深く理解することが重要視されます。
エンパシーマップは、ユーザーリサーチによって得られた情報を整理し、チーム全体で共有するための方法として活用できます。
ユーザーインタビューで大量の発言を収集しても、それが議事録として残っているだけでは、開発者やデザイナーがユーザー像を理解することは難しい場合があります。
エンパシーマップへ整理することで、リサーチで得られた情報を一枚の視覚的なフレームワークとして共有しやすくなります。
2. エンパシーマップを構成する6つの要素
エンパシーマップにはいくつかの形式がありますが、代表的なものでは、ユーザーについて複数の領域から情報を整理します。
一般的には、次の6つの観点がよく用いられます。
- Says:何を言っているか
- Thinks:何を考えているか
- Does:何をしているか
- Feels:何を感じているか
- Pains:どのような痛み・不満があるか
- Gains:何を得たいか
形式によっては「Sees」「Hears」を含む構成もあり、目的に合わせて項目を調整して構いません。重要なのは、テンプレートそのものを守ることではなく、ユーザーの行動と内面を多角的に整理することです。
3. Says|ユーザーが何を言っているか
「Says」には、インタビュー、レビュー、問い合わせ、SNSなどでユーザーが実際に発言した内容を整理します。
例えば、
「このサービスは便利だけど少し高い」
「設定方法がよく分からない」
「できればスマートフォンだけで完結させたい」
「毎回入力するのが面倒」
といった発言です。
3.1 実際の言葉を残すことが重要
Saysでは、調査者がユーザーの発言を解釈して書き換えるよりも、可能な範囲で本人が使った言葉をそのまま残すことが重要です。
例えば、ユーザーが「登録がちょっと怖い」と発言したものを、調査者が「セキュリティへの懸念」と要約すると、意味が少し変わる可能性があります。
「怖い」という表現には、個人情報だけではなく、営業電話、課金、解約方法、知らない会社への不信など、複数の感情が含まれているかもしれません。
ユーザー自身の言葉を残しておくことで、後からその背景を分析しやすくなります。
3.2 発言だけを事実と考えない
一方で、ユーザーが発言した内容が必ずしも実際の行動と一致するとは限りません。
「価格はあまり気にしません」と話していたユーザーが、実際には毎回価格比較サイトを確認していることもあります。
そのため、Saysだけを独立して見るのではなく、DoesやThinksと比較しながら解釈することが重要です。
4. Thinks|ユーザーが何を考えているか
「Thinks」には、ユーザーが心の中で考えていることや、意思決定の際に気にしていることを整理します。
例えば、
「本当にこの会社を信用してよいのか」
「もっと安いサービスがあるかもしれない」
「操作を間違えたらどうしよう」
「今やる必要はないかもしれない」
といった内容です。
4.1 発言されない本音を考える
ユーザーは、自分が考えていることをすべて口にするわけではありません。
特に、不安、迷い、恥ずかしさ、社会的に言いにくい考えなどは、実際の発言に現れないことがあります。
そのため、Thinksを整理する際には、インタビューの発言だけでなく、行動観察や前後の文脈も重要になります。
例えば、ユーザーが価格ページを何度も行き来している場合、「高いとは言わなかったが、価格に強い不安を持っている可能性がある」と考えることができます。
4.2 事実と仮説を区別する
Thinksは特に推測が入りやすい領域です。
そのため、
ユーザーが実際に話した内容
と
チームが推測している内容
を明確に分けることが重要です。
例えば色分けやラベルを使って、「リサーチで確認済み」「仮説」「追加調査が必要」と区別しておくと、エンパシーマップが単なる想像のユーザー像になることを防げます。
5. Does|ユーザーが何をしているか
「Does」には、ユーザーが実際に行っている行動を整理します。
例えば、
- 購入前に複数サイトを比較する
- レビューを読む
- 価格ページを何度も確認する
- 分からないとすぐ検索する
- 問い合わせ前にFAQを見る
- スマートフォンで調べてPCで購入する
などです。
5.1 発言より行動を重視する場面もある
UXリサーチでは、ユーザーが「何と言ったか」と「何をしたか」が一致しないことがあります。
例えば、「レビューはあまり見ません」と話したユーザーが、実際の操作では長時間レビューを読んでいる場合があります。
こうした違いは非常に重要です。
ユーザー本人も自分の行動を完全に認識しているとは限らないため、行動観察、アクセス解析、セッション分析などの情報を組み合わせることで、Doesをより正確に整理できます。
5.2 回避行動も重要な情報
Doesでは、ユーザーがサービス内で何をしているかだけでなく、サービスを避けて何をしているかも重要です。
例えば、システム内に入力機能があるにもかかわらずExcelへコピーする、アプリ内検索ではなくGoogle検索を使う、問い合わせフォームではなく電話する、といった行動です。
こうした回避行動は、現在のプロダクトがユーザーのニーズを十分に満たしていないことを示している場合があります。
6. Feels|ユーザーが何を感じているか
「Feels」には、ユーザーが利用体験の中で感じている感情を整理します。
例えば、
- 不安
- 面倒
- 安心
- 期待
- 混乱
- 達成感
- 焦り
- 不信感
などです。
6.1 感情は意思決定に影響する
ユーザーは必ずしも論理的な条件だけで商品やサービスを選んでいるわけではありません。
機能や価格がほぼ同じでも、「こちらの方が安心できる」「なんとなく難しそう」「このブランドの方が信頼できる」といった感情が意思決定へ大きく影響することがあります。
そのため、UX改善では操作効率だけでなく、ユーザーがどのタイミングで安心し、どのタイミングで不安になるかを見ることも重要です。
6.2 感情が変化するタイミングを見る
Feelsは、一つの固定した感情として見るのではなく、体験の流れの中で変化するものとして考えることが重要です。
例えば、サービスを知ったときは「期待」、料金を見たときは「不安」、登録完了後は「安心」と変化する場合があります。
この感情変化を詳しく追いたい場合には、エンパシーマップだけでなくカスタマージャーニーマップと組み合わせると効果的です。
7. Pains|ユーザーが抱える不満・不安・障壁
「Pains」には、ユーザーが目標を達成する際に感じている不満、困難、不安、障壁などを整理します。
例えば、
- 入力項目が多い
- 料金体系が複雑
- 専門用語が分からない
- 時間がかかる
- 比較しにくい
- 本当に安全か不安
- 解約方法が見つからない
といった内容です。
7.1 表面的な不満と根本課題を区別する
ユーザーが「フォームが長い」と言った場合、単純に項目数が問題とは限りません。
「なぜこの情報を入力する必要があるのか分からない」ために長く感じている可能性もあります。
そのため、Painsでは表面的な現象だけでなく、「なぜそれが痛みになっているのか」を一段深く考える必要があります。
7.2 重要度と頻度も考える
見つかったすべてのPainを同じ優先度で改善する必要はありません。
頻繁に発生する小さな不便と、発生頻度は低いもののサービス利用を完全に断念させる重大な障害では、重要度が異なります。
そのため、エンパシーマップでPainを整理した後は、発生頻度、影響度、事業インパクトなどを別途評価すると改善の優先順位を決めやすくなります。
8. Gains|ユーザーが得たい価値・理想状態
「Gains」には、ユーザーが最終的に得たい成果や価値、理想的な状態を整理します。
例えば、
- 短時間で予約を終わらせたい
- 安心して購入したい
- 面倒な作業を減らしたい
- 自分に合う商品をすぐ見つけたい
- 失敗したくない
- 専門知識がなくても使いたい
といった内容です。
8.1 機能ではなく成果を見る
ユーザーが「検索機能が欲しい」と言っていたとしても、本当に欲しいのは検索機能そのものではなく、「必要な情報をすぐ見つけられる状態」かもしれません。
この違いは非常に重要です。
Gainsでは、ユーザーが要求した具体的な機能ではなく、その機能によってどのような状態を実現したいのかを整理します。
8.2 Painの反対がGainとは限らない
「時間がかかる」というPainに対して、「時間を短くする」というGainだけを設定すると、ユーザーの本当の期待を見逃す場合があります。
ユーザーは単に速さだけでなく、「安心して進めたい」「間違えずに終わらせたい」と考えているかもしれません。
そのため、PainとGainは機械的に反対語として考えるのではなく、それぞれ独立してユーザーの目的を分析することが重要です。
9. Sees|ユーザーが何を見ているか
エンパシーマップの形式によっては、「Sees」を独立した領域として扱います。
ここでは、ユーザーが日常生活やサービス利用時に目にしている情報を整理します。
例えば、
- 競合サービス
- 広告
- SNS投稿
- 口コミ
- 価格比較サイト
- 同僚が使っているツール
- 店頭の商品
などです。
ユーザーの判断は、自社プロダクトだけで完結しているわけではありません。
競合サービスやSNSの評判など、ユーザーの周辺環境まで整理することで、意思決定にどのような情報が影響しているかを理解しやすくなります。
10. Hears|ユーザーが何を聞いているか
「Hears」には、ユーザーが他者から受け取っている情報や影響を整理します。
例えば、
- 友人からのおすすめ
- 家族からの反対
- 上司からの指示
- SNSインフルエンサーの意見
- 営業担当者の説明
- 専門家の評価
などです。
特にBtoBサービスでは、実際にサービスを利用する人と購入を決定する人が異なることがあります。
その場合、ユーザー個人だけでなく、上司、経営者、IT部門、取引先などからどのような影響を受けているかを理解することが重要です。
11. エンパシーマップとペルソナの違い
エンパシーマップとペルソナは、どちらもユーザー理解に使われるため混同されることがありますが、役割は異なります。
| 項目 | エンパシーマップ | ペルソナ |
|---|---|---|
| 主な目的 | ユーザーの視点・感情・行動を理解 | 代表的ユーザー像を整理 |
| 主な情報 | 発言、思考、行動、感情、Pain、Gain | 年齢、職業、状況、目的、課題など |
| 用途 | 共感・課題探索 | ターゲット共有 |
| 作成タイミング | リサーチ中・リサーチ後 | リサーチ結果を統合した後 |
| 特徴 | 心理や行動に重点 | 人物像全体に重点 |
ペルソナは、「誰を対象にしているか」をチーム内で共有するために有効です。
一方、エンパシーマップは、その人物が「どのように考え、感じ、行動しているか」を深く理解するために使います。
両者は競合するものではなく、組み合わせて利用できます。
12. エンパシーマップとカスタマージャーニーマップの違い
カスタマージャーニーマップは、ユーザーがサービスを認知してから購入・利用・継続するまでの体験を時間軸に沿って整理します。
一方、エンパシーマップは、特定のユーザーについて心理や行動を一つの状態として整理することに向いています。
簡単に言えば、
エンパシーマップ=ユーザーを深く理解する
カスタマージャーニーマップ=ユーザー体験の流れを理解する
という違いがあります。
実務では、まずエンパシーマップでユーザー理解を深め、その後カスタマージャーニーマップで時系列の体験を整理する方法も有効です。
13. エンパシーマップの作り方
エンパシーマップは、テンプレートへ思いついた内容を書くだけでは十分ではありません。
ユーザーリサーチから得られた情報を整理し、事実と仮説を区別しながら作成することが重要です。
13.1 目的を明確にする
まず、「なぜエンパシーマップを作るのか」を明確にします。
例えば、
- 新規ユーザーが登録を完了しない理由を理解したい
- 新商品のターゲットユーザーを理解したい
- BtoBサービスの担当者が感じている課題を整理したい
- チーム内でユーザー像を統一したい
などです。
目的が広すぎると、関係のない情報が大量に入り、マップが曖昧になります。
13.2 対象ユーザーを決める
次に、誰についてエンパシーマップを作成するかを明確にします。
複数の異なるユーザータイプを一枚のマップに混ぜると、矛盾する情報が増えてしまいます。
例えば、新規ユーザーと既存ユーザーでは、知識量や不安、目的が異なります。
必要であれば、ユーザータイプごとに別のエンパシーマップを作成します。
13.3 ユーザーリサーチを実施する
エンパシーマップの情報源として、次のような調査を活用できます。
- ユーザーインタビュー
- 行動観察
- ユーザビリティテスト
- フォーカスグループ
- カスタマーサポート分析
- レビュー分析
- アンケート自由記述
- アクセス解析
特にSays、Does、Feelsを整理するには、定性調査が有効です。
13.4 情報を各領域へ整理する
リサーチで得られた情報を、Says、Thinks、Does、Feels、Pains、Gainsなどへ分類します。
一つの発言が複数の領域に関係することもあります。
例えば、
「登録したいけど個人情報を入れるのが少し怖い」
という発言であれば、
Says:上記の実際の発言
Thinks:会社を信用してよいか分からない
Feels:不安
Pain:個人情報入力への心理的障壁
と整理できます。
13.5 パターンを見つける
情報を配置したら、似ている内容をグループ化します。
複数のユーザーから、
「入力項目が多い」
「登録が面倒」
「時間がかかる」
という声が出ている場合、単独の発言として扱うのではなく、「登録プロセスへの負担」という一つのテーマとして整理できます。
こうしたパターンを見つけることで、個々の発言からより高いレベルのインサイトを導き出せます。
13.6 インサイトと課題仮説を整理する
最後に、エンパシーマップ全体を見ながら、
ユーザーが本当に達成したいことは何か
最大の障壁は何か
現在どのように問題を回避しているか
どの部分に改善機会があるか
を整理します。
ここまで行って初めて、エンパシーマップが具体的なプロダクト改善へつながります。
14. エンパシーマップの具体例
例えば、オンライン英会話サービスを検討している会社員を対象にするとします。
Says
「英語を勉強したいけど続かない」
「仕事で英語が必要になってきた」
「毎週決まった時間だと難しい」
Thinks
「本当に上達するのだろうか」
「講師と話せなかったら恥ずかしい」
「忙しくても続けられるサービスがいい」
Does
無料教材を検索する、YouTubeを見る、英語学習アプリをダウンロードするが数日で使わなくなる、複数の英会話サービスを比較する。
Feels
焦り、不安、恥ずかしさ、期待、面倒さ。
Pains
時間が固定されている、予約が面倒、会話に自信がない、継続できない。
Gains
好きな時間に受講したい、短時間でも学習したい、上達を実感したい、会話への自信をつけたい。
このように整理すると、「オンラインレッスンを提供する」というだけでなく、予約の柔軟性、短時間レッスン、進捗可視化、初心者向けサポートなど、より具体的な改善アイデアへつなげることができます。
15. エンパシーマップを活用できる場面
エンパシーマップは、特定の開発フェーズだけで使うものではありません。
ユーザー理解が必要となるさまざまな場面で活用できます。
15.1 新規商品・サービスの企画
新しいサービスを作る前に、ターゲットユーザーの課題、価値観、利用環境を整理できます。
「自社が何を作りたいか」から始めるのではなく、「ユーザーが何に困っているか」から企画を考えやすくなります。
15.2 UX・UI改善
既存画面に問題がある場合も、単純にボタンやレイアウトだけを見るのではなく、ユーザーがその画面で何を考え、何に不安を感じているかを整理できます。
これにより、UIだけでなく説明文、サポート、情報設計まで含めて改善できます。
15.3 マーケティング施策
エンパシーマップから、ユーザーが使う言葉や気にしているポイントを理解できます。
その情報を広告メッセージ、ランディングページ、コンテンツ制作などへ反映できます。
15.4 チーム内のユーザー理解を統一する
プロジェクトでは、デザイナー、エンジニア、マーケター、営業などでユーザー像が異なることがあります。
エンパシーマップを共有すると、
「この機能を使う人は誰なのか」
「何に困っているのか」
という前提をチーム全体で共有しやすくなります。
16. エンパシーマップを作るときの注意点
エンパシーマップは簡単に作成できる一方で、使い方を間違えると「チームが想像した架空のユーザー像」を強化してしまう可能性があります。
16.1 想像だけで作らない
最も重要なのは、チームメンバーだけで、
「きっとユーザーはこう考えている」
と想像して埋めないことです。
仮説を書くこと自体は問題ありませんが、リサーチによって確認された事実と区別する必要があります。
16.2 複数ユーザーを混ぜない
異なる目的や背景を持つユーザーを一枚のマップへ統合すると、一貫性がなくなります。
例えば、「初心者は簡単さを重視」「上級者は細かな設定を重視」という場合、両者を一つのユーザーとして扱うと矛盾した設計につながります。
必要であればセグメントごとにエンパシーマップを作成します。
16.3 一度作って終わりにしない
ユーザーの行動や市場環境は変化します。
サービス改善、新機能追加、競合サービスの登場などによって、以前のエンパシーマップが現在のユーザーを表さなくなる場合があります。
新しいリサーチ結果が得られたら、定期的に更新することが重要です。
16.4 発言だけを重視しない
ユーザーの発言と実際の行動が異なることがあります。
そのため、インタビューだけでなく、行動観察やアクセス解析なども組み合わせることで、より現実に近いマップを作成できます。
17. エンパシーマップをより効果的に使うポイント
エンパシーマップを実務で活用する場合、作成したマップを完成品として扱うのではなく、次のリサーチや改善へつなげることが重要です。
17.1 不明点を次のリサーチ課題にする
マップを作成すると、
「ユーザーがなぜこの行動をしているか分からない」
「Thinksの部分がほとんど仮説になっている」
といった情報不足が見つかる場合があります。
これは失敗ではありません。
むしろ、次に何を調査すべきかが明確になったということです。
17.2 PainとGainから改善機会を探す
PainとGainを比較すると、プロダクトが改善すべきポイントを考えやすくなります。
例えば、
Pain:毎回入力するのが面倒
Gain:短時間で手続きを完了したい
であれば、入力項目削減、自動入力、保存機能などの改善案を検討できます。
17.3 カスタマージャーニーマップへ展開する
エンパシーマップでユーザー理解を深めた後、そのユーザーがサービス認知から利用までどのような体験をするかをカスタマージャーニーマップへ整理する方法も有効です。
エンパシーマップと他のUXフレームワークを連携させることで、単なるユーザー像から具体的なサービス設計へ発展させられます。
エンパシーマップ作成の流れ
実務での基本的な流れを整理すると、次のようになります。
調査目的を決める → 対象ユーザーを明確にする → ユーザーリサーチを行う → Says・Thinks・Does・Feelsなどを整理する → Pain・Gainを抽出する → 共通パターンを分析する → インサイトを整理する → 改善案や次のリサーチへつなげる
この流れで重要なのは、エンパシーマップを作ること自体をゴールにしないことです。
ユーザーについて整理した情報を、最終的にプロダクトやサービスの意思決定へつなげる必要があります。
おわりに
エンパシーマップとは、ユーザーが何を言い、何を考え、何をし、何を感じているのか、さらにどのようなPainやGainを持っているのかを一つのフレームワークへ整理し、ユーザーへの理解を深めるための方法です。
年齢、性別、職業といった属性だけでは、ユーザーがなぜその行動を取るのかまでは理解できません。エンパシーマップを利用することで、ユーザーの発言、行動、感情、価値観、周辺環境まで含めて考えられるようになり、より人間中心のプロダクト設計につなげやすくなります。
一方で、エンパシーマップは調査者の想像だけで埋めてしまうと、実際のユーザー理解ではなく、チーム内の思い込みを可視化しただけの資料になってしまいます。そのため、ユーザーインタビュー、行動観察、ユーザビリティテスト、レビュー分析、アクセス解析など、可能な限り実際のリサーチ結果を根拠として作成することが重要です。
また、エンパシーマップの価値は、きれいなテンプレートを完成させることにあるわけではありません。マップを通じて「ユーザーが本当に達成したいことは何か」「どの障壁が大きいのか」「チームがまだ理解できていないことは何か」を発見し、次のリサーチやプロダクト改善へつなげることに意味があります。
そのため、
ユーザーを調査する → エンパシーマップで理解を整理する → Pain・Gainを特定する → 仮説を作る → 改善する → 再びユーザーへ確認する
という継続的なサイクルの中で活用することが重要です。
エンパシーマップを単なるUXワークショップ用の資料としてではなく、ユーザーの視点をプロダクト開発の意思決定へ組み込むためのフレームワークとして活用することで、企業側の推測だけに依存しない、よりユーザー中心のサービス設計へつなげることができます。
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