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定量データとは?定性データとの違い・代表例・集め方・分析手順を整理

定量データとは、回数・割合・金額・時間・件数など、数値として測定・集計できるデータのことです。アクセス数、購入金額、作業時間、アンケートの%など、数字で表せる情報はすべて定量データに含まれます。数値で扱えるため、現状把握や成果測定、改善効果の検証に広く使われます。 

定量データの強みは、主観に左右されにくく、同じ尺度で比較できる点にあります。施策の前後でどれくらい変化したか、ユーザー属性ごとに差があるかなどを明確に判断できます。一方で、定量データだけでは「なぜそうなったのか」という背景や理由は見えにくいことがあります。 

そのため実務では、定量データで「何が起きたか」を押さえ、定性データで「なぜ起きたか」を掘り下げるのが基本です。両者を補完関係として使うことで、数値の誤解や声の偏りを避け、納得感のある意思決定と改善につなげやすくなります。 

1. 定量データとは 

定量データとは、数値として測定・集計できるデータ(量的データ)のことです。回数、割合、金額、時間、件数など、「数字で表せる情報」がすべて定量データに含まれます。アンケート結果の%、アクセス数、購入金額、作業時間などは代表的な例です。 

定量データの最大の特徴は、主観に左右されず、客観的に比較できる点にあります。数値として同じ尺度で扱えるため、「どちらが多いか」「どれくらい違うか」を明確に判断できます。そのため、現状把握や成果測定、改善効果の検証に広く使われます。 

特徴 

観点 

内容 

表現形式 数値・割合・金額・時間など 
客観性 高い(個人の解釈に左右されにくい 
比較のしやすさ 前後比較・他者比較が容易 
分析用途 現状把握、成果測定、改善効果の検証 
弱点 背景や理由(なぜそうなったか)が 

また、定量データは時系列やグループ間の比較にも向いています。施策の前後で数値がどう変化したか、ユーザー属性ごとに差があるかなどを分析することで、傾向やパターンを把握しやすくなります。ただし、「なぜそうなったか」という理由までは、定量データだけでは分かりにくい点もあります。 

 

2. 定量データと定性データの違い 

データ分析というと数値に注目しがちですが、実務では「定量データ」と「定性データ」は同じくらい重要な役割を持っています。どちらもユーザーや現象を理解するための手段ですが、見ている角度が異なるため、得られる情報の質も大きく変わります。 

定量データは状況を客観的に把握するのに強く、定性データは背景や文脈を理解するのに向いています。この違いを意識せずに使うと、数値だけで誤解したり、声だけで判断が偏ったりしやすくなります。まずは両者の役割の違いを整理することが重要です。 

観点 

定量データ 

定性データ 

何が分かるか 何が起きたか/どれくらいか なぜ起きたか/どう感じたか 
データの形 数字、割合、回数、金額 発言、文章、観察、理由 
主な目的 状況把握・成果測定 理解・仮説構築 
強み 比較・検証・傾向把握がしやすい 文脈や感情を捉えやすい 
弱み 理由や背景が見えにくい 一般化・数値化しにくい 
分析の起点 異常・差分の発見 問題の構造理解 
扱う人数 多数(全体・母数重視 少数(深さ重視 
活用場面 KPI管理、効果測定 UX改善、課題発見 

定量データと定性データは、どちらか一方で完結するものではありません。定量データによって「何が起きているか」を把握し、定性データによって「なぜそうなったのか」を理解することで、はじめて納得感のある判断が可能になります。 

実務では「定量で異常や変化を見つけ、定性で原因を掘り下げる」という流れを基本にすると、分析や改善がブレにくくなります。両者を補完関係として使い分けることが、質の高い意思決定につながります。 

 

3. 定量データの代表例 

定量データは、UX改善やEC改善を「感覚」ではなく「再現性のある判断」に変えるための基盤です。ユーザーがどこで迷い、どこで離脱し、どの施策が成果に繋がったのかを把握できなければ、改善は場当たりになり、チーム内の合意形成も難しくなります。一方で、指標を増やしすぎると意思決定が遅くなるため、目的に応じて「主要指標」と「原因を説明する指標」を組み合わせる設計が重要です。 

ここでは、実務でよく使われる定量指標を「Web・UX」「EC・マーケ」「プロダクト・運用」の3領域に分けて整理します。SEO記事としても使いやすいように、指標の意味が分かるように短い説明を添えています。 

 

3.1 Web・UX 

3.1.1 トラフィック・到達 

PV(ページビュー)、セッション、UU(ユニークユーザー)は「どれだけ見られたか」を把握する基本指標です。集客が伸びているのか、どのチャネルが効いているのか、改善の土台となる母数が足りているのかを判断できます。UX改善の効果検証でも、まず母数が安定していないと比較が成立しにくいため、最初に抑える指標になります。 

ただし、到達指標は「見られた」ことしか示さないため、体験品質を直接は評価できません。PVが増えても直帰が増えているなら、入口は増えたが体験が弱い可能性があります。したがって、到達指標は必ず行動指標とセットで読み、量と質を分けて解釈することが重要です。 

3.1.2 行動・回遊 

直帰率、離脱率、滞在時間は「ユーザーがどこまで読み進めたか」「どこで止まったか」を捉える指標です。回遊が弱いときは、情報設計が分かりにくい、次の導線が弱い、判断材料が不足している、といったUX課題が隠れていることが多く、改善対象の当たりをつけるのに役立ちます。 

ただし、滞在時間が長いから良いUXとは限りません。迷っている、探している、エラーで止まっている、といった「負の滞在」も起きます。回遊指標は、スクロール率やクリック率、タスク完了率などの「進んだかどうか」を示す指標と組み合わせることで、正しく解釈しやすくなります。 

3.1.3 反応 

クリック率(CTR)やスクロール率は「どこに注意が集まり、どこまで見られたか」を把握する指標です。重要CTAが押されない、重要情報が見られていない、といった問題は、視覚的階層や情報配置の設計不備で起きやすく、反応指標が改善のヒントになります。 

反応指標は、配置や文言の変更で比較的動きやすいため、A/Bテストとの相性が良いのも特徴です。一方で、クリックが増えても最終成果が動かない場合は「押されているが期待外れ」「次の画面で詰まっている」可能性があります。反応指標は単独ではなく、次工程の完了指標と一緒に見ることで、改善が「押し上げ」になっているか確認できます。 

3.1.4 完了・失敗 

フォーム完了率、エラー率は「ユーザーがタスクをやり切れたか」を直接捉える指標です。フォームはUXの最終関門になりやすく、入力負荷やエラー復旧が弱いと離脱が増えます。完了指標を置くことで、UIの使いやすさを成果として評価でき、改善の優先順位が付けやすくなります。 

エラー率は、単なる不具合だけでなく「入力が難しい」「ルールが伝わっていない」「復旧導線が弱い」ことでも上がります。完了・失敗指標は、改善が最も成果に繋がりやすい領域なので、主要導線には必ず置くのが実務的です。フォーム完了率とエラー率をセットで持つと、改善の原因が読み取りやすくなります。 

 

3.2 EC・マーケ 

3.2.1 成果 

CVR(購入率)、客単価(AOV)、売上はECの代表的な成果指標です。どの施策が購入を押し上げたか、単価を押し上げたか、売上全体にどう効いたかを評価する基準になります。短期の成果を見るには強い指標ですが、売上だけを追うと利益構造が崩れることがあるため注意が必要です。 

成果指標は「結果」なので、原因は別指標で説明できる形が理想です。CVRが落ちたならどの工程で詰まったのか、AOVが上がったなら何が増えたのか(セット・関連追加・アップセル)を分解して追うと、改善判断がブレにくくなります。成果指標だけを見ていると「上がった・下がった」で止まり、再現性が残りません。 

3.2.2 ファネル 

カート投入率、カート離脱率は「購入までのどこで詰まっているか」を捉える代表指標です。PDPの説得力不足、総額の不透明さ、送料条件の後出し、ログイン強制、入力負荷など、離脱の原因を工程として切り分けるのに有効です。特にEC改善は「詰まりを解消する」ほど効くため、ファネル指標は改善設計の中心になります。 

ファネル指標を置くと、改善が局所最適になりにくくなります。たとえばカート投入率は上がったが決済完了率が下がった、という場合、PDP改善が決済の不安を増やした可能性も見えてきます。工程別に見ることで、施策の副作用も早期に検知できます。 

3.2.3 広告効率 

CPA、ROAS、ROIは広告施策の効率と投資判断に使われる指標です。運用改善にはROASやCPAが分かりやすい一方で、最終的に利益が残るかの判断にはROIが必要になります。広告は短期で数字が動くため、効率指標が整っていると改善サイクルを回しやすくなります。 

ただし、ROASが高い=成功とは限りません。原価、送料、運用コストなどを含めると利益が残らないケースがあるため、広告効率指標は必ず利益側の指標とセットで使います。広告の最適化は「売上」だけでなく「利益」に接続して初めて事業改善になります。 

3.2.4 継続価値 

リピート率、LTVは「短期で終わっていないか」を評価する指標です。短期CVだけで最適化すると、煽り表現や過剰な値引きで売れるが信頼が落ちる、という状態になりやすいです。継続指標を持つことで、短期施策の副作用を監視し、長期価値を守れます。 

継続価値の指標は、改善の方向性を変える力があります。たとえばLTVが落ちているなら、購入後体験、配送・返品、CS対応など「信頼の領域」に課題がある可能性が高くなります。短期指標と長期指標を併走させることで、ブレない意思決定が可能になります。 

 

3.3 プロダクト・運用 

3.3.1 利用状況 

DAU/MAU、継続率、解約率は「使われ続けているか」を捉える指標です。特にSaaSや業務ツールでは、導入されたかよりも、継続して使われているかが価値を決めます。継続率が落ちる場合は、使いにくさ、運用負荷、価値の不足が潜んでいることが多く、UX改善の優先度判断にも使えます。 

ただし、利用状況の数字だけでは理由が見えません。継続率の低下はオンボーディングの弱さ、主要タスクの未達、例外時の詰まりなど複合要因で起きます。したがって、利用状況指標は、アクティベーションや問い合わせ指標と合わせて読むと、改善の打ち手が具体化しやすくなります。 

3.3.2 初期成功 

アクティベーション率(初回成功率)は「立ち上がりでつまずいていないか」を示す指標です。最初に価値を体験できないと、ユーザーは継続利用に入る前に離脱します。初期成功は、導線、ガイド、入力負荷、設定の分かりやすさなど、UXの基礎設計が直撃する領域です。 

アクティベーションが低い場合、機能追加で解決することは少なく、むしろ「成功までの距離を短くする」改善が必要になります。チュートリアルの段階化、テンプレの提供、最初の達成を作る設計(最初の1タスク完了)などが効きやすいです。初期成功の指標は、成長のボトルネックを最短で特定するのに役立ちます。 

3.3.3 運用品質 

問い合わせ件数、対応時間は「困りごとが増えていないか」「運用が詰まっていないか」を示す指標です。問い合わせが増えるのは、機能不足よりも「分かりにくい」「例外時に進めない」「条件が不透明」といったUX問題であることが多いです。運用品質指標は、UX劣化の早期警報として非常に有効です 

対応時間は、運用プロセスの健全性も示します。対応が遅れるほど不満が増え、解約や低評価に繋がりやすくなります。問い合わせの理由を分類し、どのUX課題が問い合わせを生んでいるかを紐づけると、改善の優先順位が明確になります。運用品質指標は、体験と運用負荷を同時に改善する入口になります。 

 

4. 定量データの集め方 

定量データはツールで自動取得できる一方、設計を間違えると「集まっているのに使えない数字」になります。PVやクリックが取れていても、意思決定につながる定義になっていない、重要イベントが抜けている、セグメントが切れない、といった状態だと改善は進みません。したがって収集の前に「何を意思決定するための数字か」を決め、必要な指標と計測ポイントを逆算することが重要です。 

ここでは、実務でよく使う収集経路を4つに整理し、それぞれが得意なデータの種類と、設計時の注意点をまとめます。収集手段は増やすほど良いのではなく、目的に対して最小構成で信頼性を上げることがポイントです。 

 

4.1 アクセス解析・イベント計測 

アクセス解析とイベント計測は、Web・アプリ上の行動を最も広くカバーできる基本の収集手段です。PV、クリック、スクロール、画面遷移、導線到達などを通じて「どこで見られ、どこで止まり、どこで進まれたか」を把握できます。UX改善では、迷いが起きている場所や離脱地点を特定する入口として強く、改善の優先順位を付ける材料になります。 

ただし、イベントを闇雲に増やすと管理不能になります。重要なのは、主要導線に対して「到達」「完了」「失敗」を計測できる設計にすることです。イベント定義(何を1回と数えるか)、重複計測の防止、エラー時の計測、セグメント切り(デバイス・新規/既存・流入)まで揃えると、数字が意思決定に使える強度になります 

 

4.2 広告・CRMデータ 

広告・CRMは、流入・獲得・再購買といった「マーケ起点の成果」を計測するためのデータ源です。チャネル別の流入、CPA、ROAS、メール・プッシュの反応、再訪・再購入などを把握でき、施策の効率と配分判断に直結します。広告は短期で動くため、改善サイクルを回しやすい一方、ここが整っていないと投資判断が感覚に戻りやすくなります。 

注意点は、計測の帰属(どのチャネルの成果か)がブレやすいことです。アトリビューションの違いで数字が変わるため、比較に使うルールを固定する必要があります。また、ROASだけで判断すると利益が残らないケースもあるので、粗利やLTVなどの指標とセットで運用すると判断が強くなります。CRMは「短期の獲得」より「長期の継続」に効くため、評価期間も揃えて扱うことが重要です。 

 

4.3 ログ・DBデータ 

ログ・DBは、アプリ内の利用回数、機能使用率、課金、権限、処理時間など、プロダクトの内部状態を高精度に扱えるデータ源です。DAU/MAU、継続率、解約率、アクティベーション、機能利用率などを正確に捉えられるため、プロダクト改善や運用設計の意思決定に直結します。アクセス解析では見えにくい「実際に使われたか」「どの機能が価値を生んでいるか」を把握できる点が強みです 

一方で、ログは取れる情報が多すぎて迷子になりやすい領域でもあります。データモデルとイベント設計を揃え、ユーザーIDや組織IDで追跡できる状態を作ることが重要です。さらに、分析用の集計テーブルや定義書(KPI定義、抽出条件)を整えると、担当者が変わっても数字がブレにくくなります。ログは「集める」より「使える形に整える」ことが価値になります。 

 

4.4 アンケートスコア 

アンケートは定性の入口として使われがちですが、NPSやCSATのようにスコア化されたデータは定量として扱えます。体験の満足度や推奨意向は、行動ログだけでは拾いにくい「不満の予兆」を捉えるのに有効です。たとえばCVRが変わっていなくてもCSATが落ちているなら、体験のどこかで不満が蓄積している可能性があります。 

ただし、アンケートは調査バイアスの影響を受けやすい点に注意が必要です。回答者の偏り、質問の誘導、記憶に頼る回答などで実態とズレることがあります。したがって、アンケートスコアは「単独で結論を出す」より、ログや問い合わせ理由と突き合わせて解釈するのが安全です。スコアは原因ではなく兆候として扱い、次の深掘りの入口にすると実務で効きます。 

 

定量データ収集で最も重要なのは、ツール選定ではなく「何を意思決定するための数字か」を先に決めることです。意思決定が決まれば、必要な指標、計測ポイント、データ源、運用ルール(定義・品質管理)が逆算できます。収集は目的ではなく、改善を速くするための手段として設計することが基本です。 

 

5. 定量データ分析の進め方 

定量データ分析は、数字を眺めて「上がった・下がった」を確認する作業ではありません。目的は、変化の原因を切り分け、次の改善アクションを最短で決めることです。そのためには、比較して差分を見つけ、分解してボトルネックを特定し、検証して再現性を作る、という流れで進めると安定します。 

ここでは、実務で使いやすい基本手順を3つに整理します。どれもシンプルですが、順番を守るだけで「原因が分からない分析」になりにくくなります。 

 

5.1 比較する(前後・施策別・セグメント別) 

改善の基本は比較です。単一の数値だけを見ると、季節要因やキャンペーン、トラフィック変動など外部要因に引っ張られ、誤判定が起きやすくなります。施策前後の比較に加えて、施策別(A施策とB施策)、セグメント別(デバイス別、流入別、新規/既存)で分けると、変化が「どこで起きたか」が見えやすくなります。 

比較のコツは、同じ期間・同じ条件で揃えることです。週末を含むかどうか、キャンペーン有無、在庫状況など、前提がズレると比較が成立しません。まずは「全体→セグメント→特定ページ・特定導線」の順で掘ると、迷子になりにくく、原因特定までの距離が短くなります。 

 

5.2 分解する(売上やCVを要素に分ける) 

比較で差分が見えたら、次は分解してボトルネックを特定します。最終成果(売上、CV、継続など)は複数要素の積で成り立つため、ひとつの数字だけでは原因が分かりません。たとえばECなら、売上を「訪問数」「CVR」「客単価」に分解すると、どの要素が効いているかが明確になります。 

売上=訪問数×CVR×客単価 

この形で分解できると、「今は流入を増やすべきか」「購入率の詰まりを解消すべきか」「単価を上げるべきか」という改善方向が定まりやすくなります。さらにCVRをカート投入率、フォーム完了率、決済完了率などに分解すると、どの工程で詰まっているかまで追えるようになります。 

 

5.3 検証する(仮説→テスト) 

定量データは「結論」ではなく「仮説の材料」です。数字が動いた理由を推定したら、改善案を作り、A/Bテストや段階リリースで検証して再現性を作ります。検証がない分析は「当たった・外れた」で終わりやすく、学びが積み上がりません。 

検証の設計では、変更点を絞ることが重要です。複数要素を同時に変えると、何が効いたか分からなくなります。主要KPIとガードレール指標(返品率、問い合わせ率など)をセットで監視し、短期成果と副作用を同時に確認すると、意思決定が安定します。検証が回る状態を作れるほど、データ分析は改善のエンジンとして機能します。 

 

6. 定量データ活用でよくある失敗 

定量データは、正しく使えば改善を加速させますが、運用を誤ると「数字はあるのに意思決定が進まない」状態になります。特に、指標の設計や計測の品質が弱いと、現場はデータを信じなくなり、最終的に感覚と声の大きさで決まる組織に戻ります。数字は「ある」だけでは意味がなく、「意思決定につながる形」にして初めて価値になります。 

ここでは、定量データ活用で起きやすい失敗を4つに整理します。どれも一度ハマると抜け出しにくいため、最初から運用ルールとして避けるのが効果的です。 

 

6.1 KPIが多すぎて見なくなる 

KPIを増やすほど安心に見えますが、実務では逆効果になりやすいです。指標が多いと「どれを優先すべきか」が曖昧になり、会議では都合の良い数字だけが取り上げられます。結果としてダッシュボードは「見ても結論が出ないもの」になり、現場は次第に見なくなります。数字が増えるほど意思決定が遅くなるのが典型パターンです。 

対策は、指標を役割で分けて最小セットにすることです。主要KPIを1〜2個に絞り、補助指標で原因を説明し、ガードレール指標で副作用を監視します。指標は管理のための羅列ではなく、判断を速くするための設計物です。 

 

6.2 「見やすい数字」だけ追って本質を見失う 

PVやセッション、CTRなど、動かしやすく見栄えの良い数字だけを追うと、本質(利益・継続)が見えなくなります。短期で伸びる指標は改善した気になりやすい一方で、粗利が残らない、返品が増える、リピートが落ちる、といった長期の損失を隠してしまうことがあります。特にECでは売上が伸びても利益が残らないケースがあり、見やすい数字だけでは意思決定を誤ります。 

本質を守るには、利益系のガードレールと継続系の指標をセットで持つことが重要です。たとえば貢献利益、返品率、問い合わせ率、リピート率、LTVなどを併走させると、短期成果の副作用を検知できます。数字の「見やすさ」ではなく、意思決定の「強さ」で指標を選ぶ必要があります。 

 

6.3 平均だけ見てセグメント差を見ない 

全体平均だけを見ると、重要な変化が埋もれます。デバイス別、流入別、新規/既存、地域別などで体験が違う場合、特定セグメントで起きている悪化が平均に隠れ、問題が見えなくなります。たとえばモバイルだけフォーム完了率が落ちているのに、全体では横ばいに見える、といったケースが典型です。 

セグメントを見る目的は、数字を細かくすることではなく、原因を特定することです。「どこで」「誰に」起きているかが分かれば、改善の打ち手が具体化します。平均は入口として使い、次にセグメントへ分解して読む運用が、誤判定を減らします。 

 

6.4 計測設計が弱く数字が信用できない 

計測の定義や実装が弱いと、数字が信用されなくなります。イベント定義が曖昧、重複計測がある、エラーが計測されていない、計測がページ改修で壊れるなどが起きると、現場は「この数字は当てにならない」と判断し、データ活用が止まります。数字が不安定だと、改善の検証もできず、意思決定が主観に戻ります。 

計測設計では、指標の定義、計測ポイント、例外時の扱い、変更時の確認手順まで含めて整える必要があります。A/Aテストで計測のブレを確認する、重要導線は回帰チェックするなど、運用として品質を守る仕組みが重要です。データ活用は分析力よりも、まず計測の信頼性で決まります。 

 

おわりに 

定量データは、改善を「感覚」から「再現性のある判断」に変えるための基盤です。全体の変化を把握し、差分を見つけ、工程や要素に分解することで、ボトルネックを特定しやすくなります。特にUXやECでは、到達→行動→完了→失敗の流れを指標で押さえるほど、改善の優先順位がブレにくくなります。 

ただし、数字は集めるだけでは価値になりません。KPIが多すぎる、見やすい指標だけを追う、平均だけで判断する、計測定義が弱くて信用できない、といった運用ミスがあると、数字が意思決定を遅らせる要因になります。定量データ活用の成否は、分析力よりも先に「定義と計測の品質」で決まります。 

最も重要なのは、「何を意思決定するための数字か」を先に決めることです。目的が定まれば、必要な指標・計測ポイント・データ源・運用ルール(定義/品質管理)は逆算できます。つまり、収集は目的ではなく、意思決定と改善を速くするための設計です。 

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