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RFP(提案依頼書)とは?目的・構成・作成ポイントを徹底解説

RFP(提案依頼書)とは?目的・構成・作成ポイントを徹底解説

RFP(Request for Proposal/提案依頼書)は、企業や組織が特定のプロジェクトやサービスを外部に委託する際、複数の候補業者に対して公平に提案を求めるための正式な文書です。単なる依頼書ではなく、発注者の目的・要件・条件を明確に示すことで、提案の質と比較の精度を高める役割を果たします。

RFPを適切に作成することは、プロジェクトの成功に直結します。ベンダーとの認識のずれを防ぎ、透明性を確保し、より合理的で競争力のある提案を受け取るための重要なプロセスです。

本記事では、RFPの基本的な定義から、その目的、構成要素、作成の実務的なポイントまでを段階的に解説します。初めてRFPを作成する担当者だけでなく、既存の運用を見直したい方にも有用な内容となっています。 

1. RFP(提案依頼書)とは? 

RFPとは、発注者が求めるプロジェクトやサービスについて、仕様・条件・目的を整理し、複数の候補ベンダーに提案を依頼する文書です。単に価格見積りを求める「見積依頼書(RFQ)」や、情報収集のための「情報提供依頼書(RFI)」とは異なり、提案内容そのものを評価基準とすることが特徴です。 

RFPは、発注者とベンダー双方にとって「共通言語」となる基盤です。発注側は自社の要件を明確化でき、ベンダー側はそれに基づいた具体的かつ実現可能な提案を行うことができます。この文書を通じて、プロジェクト開始前の不明確な部分を減らし、契約やスケジュール上のトラブルを防ぐ効果があります。 

 

2. RFPの目的 

RFPには複数の目的が存在しますが、主に次の3点が中核となります。 

  • 複数ベンダーからの提案の受領:RFPを作成することで、幅広い業者から提案を受けることが可能になります。これにより、コスト・品質・実績・スケジュールなどを多角的に比較検討でき、より優れた提案を選定することができます。特定の業者に依存するリスクも低減します。 

  • 認識のずれ防止:発注者の口頭説明だけに依存すると、要件やスケジュールの解釈が業者ごとに異なり、見積もりの精度も下がります。RFPは、要求内容・条件・前提を明文化することで、発注者とベンダーの間に生じる誤解を最小限に抑えます。結果として、プロジェクト開始後の追加費用や納期トラブルを防止します。 

  • 公正で透明な選定を実現:RFPを通じて複数業者から提案を受けることで、既存取引先への依存や不正な価格設定を避け、公正なプロジェクト環境を構築できます。特に公共案件や大規模システム開発では、透明性を確保するためにRFP作成が不可欠です。

 

3. RFI・RFQとの違い 

rfi rfq rfp

企業がシステム導入や外部委託を検討する際には、段階ごとに異なる目的を持つ文書を活用します。RFI(情報提供依頼書)、RFQ(見積依頼書)、そしてRFP(提案依頼書)は、その代表的な3つの文書です。

以下の表では、それぞれの特徴と役割の違いを比較します。

 

RFI(情報提供依頼書) 

RFQ(見積依頼書) 

RFP(提案依頼書) 

定義 

ベンダーから一般情報を収集するための文書 

特定条件に基づき価格見積りを依頼する文書 

プロジェクト全体の提案を求める正式依頼文書 

主な目的 

市場調査・比較検討の初期段階 

コスト比較・契約交渉の準備 

最適なベンダー・ソリューションの選定 

利用タイミング 

検討初期 

要件確定後 

要件定義後〜選定前 

依頼内容の範囲 

一般的な製品・サービス情報 

仕様に基づく価格や納期 

技術的提案・実行計画・体制などを含む総合提案 

評価基準 

情報の網羅性・信頼性 

価格・納期・条件の明確さ 

技術力・提案力・実現性・コストバランス 

主な対象者 

幅広いベンダー候補 

条件を満たすベンダー候補 

最終候補ベンダー 

成果物の形態 

情報リスト・概要資料 

見積書・価格表 

提案書・プレゼン資料 

RFI・RFQ・RFPはそれぞれ独立した目的を持ちながらも、調達活動の流れの中で段階的に活用されます。

RFIによって市場や技術動向を把握し、次にRFQでコストや条件を具体的に比較し、最終的にRFPで最適な提案を選定するというプロセスを踏むことで、企業はリスクを抑えながら合理的な意思決定を行うことができます。

 

4. RFPの構成と主な内容 

RFPは単なる文書ではなく、プロジェクト全体の設計図として機能します。以下の構成に沿って体系的にまとめることで、提案依頼の目的を明確に伝えることが可能になります。 

項目 

内容概要 

プロジェクト概要 

背景・目的・前提条件など 

業務・システム概要 

現行業務・新システムの概要 

機能要件 

システムの動作や提供機能 

非機能要件 

性能・保守・セキュリティなどの特性 

開発条件 

工数・期間・作業環境・納品条件など 

提案依頼事項 

ベンダーに求める具体的な提案内容 

提案手続き 

参加資格・スケジュール・提出要領 

評価 

選定基準・評価方法 

契約事項 

契約形態・支払条件・著作権・機密保持など 

4.1 プロジェクト概要 

本項では、プロジェクトの全体像を明確に示します。まず、背景として、組織や事業戦略との関連性を説明し、なぜ本プロジェクトを実施する必要があるのかを明らかにします。たとえば、業務効率化や顧客満足度の向上、DX推進といった企業目標との整合性を示すことが重要です。 

目的の部分では、「最終的に何を実現したいのか」「どのような成果を期待するのか」を具体的に記載します。定量的な目標(例:処理時間を30%削減)と定性的な目標(例:ユーザー利便性の向上)を明確にすると、後の評価指標にもつながります。 

前提条件には、予算の上限、開発スケジュール、利用可能なリソース、技術的な制約などを盛り込みます。これにより、提案側が現実的な範囲で計画を立てやすくなります。 

 

4.2 業務・システム概要 

この項では、現行の業務フローや既存システムの構成、課題を整理し、新システムで解決すべきポイントを明確化します。業務の流れやデータの連携関係を図示することで、ベンダーが全体像を理解しやすくなります。 

さらに、新たに求める仕組みについても概要レベルで説明します。たとえば、「入力作業の自動化」「データ分析機能の追加」「外部システムとのAPI連携」など、期待する改善点を具体的に示すと効果的です。 

 

4.3 機能要件と非機能要件 

機能要件とは、システムが提供すべき具体的な機能を指します。例として、「ユーザー登録」「検索機能」「自動レポート生成」「通知メール送信」などが挙げられます。業務プロセス単位で整理し、優先度を設定しておくと提案比較が容易です。 

一方で、非機能要件はシステムの品質面や運用条件を定義します。たとえば、「24時間稼働」「応答時間1秒以内」「高可用性」「セキュリティ基準の遵守」などです。これらを明確にすることで、性能面・安定性の期待水準を共有できます。 

 

4.4 開発条件 

ここでは、プロジェクト遂行に関わる技術的・契約的条件を明確にします。使用言語、開発フレームワーク、サーバ環境、作業場所(オンサイト/リモート)などを具体的に記載します。 

また、開発期間、成果物の納品形態、テストや検収方法、資料貸与の範囲なども明示します。これにより、プロジェクト進行時の認識ずれや責任範囲の曖昧さを防ぐことができます。 

 

4.5 提案依頼事項 

ベンダーに求める提案内容を明確に列挙します。一般的には、以下の項目を含めると良いでしょう。 

・システム構成(アーキテクチャ、使用技術など) 
・開発・導入スケジュール 
・見積内訳(工数・ライセンス費・保守費など) 
・プロジェクト体制(担当者構成・役割) 
・実績情報(類似案件の導入事例など) 

また、提案書のフォーマットや提出形式を統一しておくと、複数ベンダー間での比較・評価がスムーズになります。 

 

4.6 提案手続き 

提案に関する全ての手続きを明記します。まず、参加資格(実績要件、資本金、技術者数など)を定義し、応募可能な条件を明確にします。 

次に、質問受付期間や方法、提案書の提出期限と形式(電子/紙)、説明会やプレゼンテーションの日程を具体的に記載します。手続きを透明化することで、すべてのベンダーに公平な競争機会を提供できます。 

 

4.7 評価 

提案内容を客観的に評価するための評価基準と配点を設定します。以下のような観点が一般的です。 

・業務理解度 
・機能・非機能要件への適合性 
・技術的実現可能性 
・プロジェクト遂行力・体制 
・見積金額・コストパフォーマンス 
・実績・信頼性 

これらに配点を設定し、総合点で判断することで、主観に左右されない評価を実現できます。 

 

4.8 契約事項 

最後に、契約に関する基本条件を明確にします。契約形態(請負契約/準委任契約)、支払い条件、検収手順、保守契約の有無などを具体的に記載します。 

さらに、機密保持契約(NDA)や著作権・成果物の帰属、瑕疵担保責任など、後々トラブルにつながりやすい項目についても詳細に定めることが重要です。特に情報漏洩防止と知的財産の扱いは、企業リスク管理の観点からも厳密に取り扱うべきです。 

 

5. RFPの書き方・構成要素  

RFPを有効に機能させるには、必要な情報を整理し、抜け漏れのない形で、ベンダーが理解しやすいように提示することが大切です。 

以下では、RFPに含めるべき主な項目と、その作成時のポイントについて説明します。 

 

5.1 要件定義 

まず整理すべきは、「このプロジェクトをなぜ実施するのか」という目的と背景です。 
現行の業務やシステムでどのような課題があり、それをどのように解決したいのかを具体的に示すことで、ベンダーは提案の方向性を正確に把握できます。 

現状の課題 

解決したい課題(ゴール) 

顧客管理システムが部門ごとに分断されている 

顧客情報を一元管理し、対応を標準化したい 

顧客対応が属人化しており、担当者に依存している 

誰でも一定の品質で対応できる体制を整えたい 

システム間のデータ連携がない 

情報をシームレスに共有できる基盤を構築したい 

また、実現したい成果(ゴール)を明文化しておくことで、要件が不十分なまま設計が進行するリスクを防ぐことができます。 
要件定義では、技術面だけでなく業務改善の視点も取り入れることで、より実践的で価値のある提案を得やすくなります。 

 

5.2 提案依頼の範囲と期待内容 

ベンダーに「何を・どこまで依頼するのか」を明確にすることは、提案の方向性のズレや見積もりの誤差を防ぐうえで不可欠です。 

以下のように、各工程(フェーズ)における実施主体を明示しておくと分かりやすくなります。 

フェーズ 

実施主体 

備考 

要件定義 

自社 

業務知識が必要なため自社で実施 

設計 

ベンダー 

UI設計を含む 

開発 

ベンダー 

システム構築全般 

テスト 

ベンダー 

単体・結合テストを含む 

運用 

自社 

社内体制で対応予定 

保守 

ベンダー 

月次サポート契約を想定 

さらに、UI/UXの改善提案やセキュリティ要件など、ベンダーに含めてほしい観点を具体的に記載しておくことで、質の高い提案が集まりやすくなります。 

 

5.3 提出形式・スケジュール・評価基準 

複数の提案を効率的かつ公平に比較するためには、提出形式・期限・評価基準を事前に統一しておくことが重要です。 

項目 

内容例 

提出形式 

Word/PDF/PowerPoint など(目次・章立て構成も指定) 

提出方法 

メール添付、共有URL(Google Drive/Dropbox など)、または専用ポータルへのアップロード 

提出期限 

2025年6月10日(火)17:00まで 

提案に含める要素 

価格見積・体制図・実績紹介・導入スケジュール案・対応フローなど 

また、評価基準を「価格50点・技術力30点・体制・実績20点」などのように数値化しておくと、ベンダーは重点を理解したうえで提案を準備できます。 

基準を明確にすることで、選定プロセスの透明性が高まり、要件に適したベンダーを効率的に選定することが可能になります。 

 

6. RFP作成のポイント 

RFP(提案依頼書)は、ベンダーに自社の要件を正確に理解してもらい、最適な提案を引き出すための重要な文書です。内容の質や構成次第で、選定の効率や提案の質が大きく変わります。

以下では、作成時に特に注意すべきポイントを整理します。

6.1 情報過不足の回避 

RFPは「すべてを詰め込む文書」ではなく、「提案を導くための情報」を整理するものです。要件が抽象的すぎると誤解を招き、細かすぎると提案の自由度を奪います。 

 

6.2 比較容易性の確保 

提案依頼事項の構成を統一することで、各ベンダーの提案を公平に比較できます。特にフォーマット指定や記入例を添付すると、選定作業が効率化します。 

 

6.3 内部事前調整の徹底 

RFPは発注者内部の合意形成が前提です。要件定義・予算・納期・成果物などを事前に統一しておくことで、文書の信頼性が高まります。 

 

6.4 評価基準の明確化 

ベンダー選定の公平性を担保するためには、評価観点と採点基準を事前に明確化しておくことが重要です。技術力、価格、提案内容、体制などの観点を定義し、定量・定性の両面で評価できる形に整備します。

 

6.5 スケジュール管理の明示 

RFPの提出期限、質疑応答期間、プレゼンテーション実施日などのスケジュールを明確に示すことで、ベンダー側の準備を円滑にします。変更が生じる場合は、速やかに共有し、混乱を防ぐことが求められます。 

 

6.6 機密情報保護の徹底 

RFPには機密性の高い情報が含まれる場合があります。情報漏洩を防ぐため、NDA(秘密保持契約)の締結や、配布範囲の制限、データ管理方法の明示などを徹底する必要があります。 

これらのポイントを押さえてRFPを設計することで、発注側・提案側の双方が納得できる形でプロジェクトをスタートさせることができます。

 

おわりに 

RFPは、単なる発注手続きではなく、発注者とベンダーが共に成功するための基盤を築く手段です。明確なRFPがあれば、提案の質は格段に向上し、結果としてプロジェクト全体の成果を高めることができます。 

RFP作成の本質は「伝えること」よりも「正確に理解されること」にあります。曖昧な部分を残さず、前提や制約を具体的に明文化することで、双方にとって納得感のある契約と成果物を実現できます。 

自社に最適なパートナーを選定し、長期的な信頼関係を築くためにも、RFPの構築を単なる形式ではなく、戦略的なプロセスとして捉えることが重要です。