AIで「上手い質問」をする7つの技術とは? CLEARER公式を紹介
AIを最大限に活用するには、「上手い質問」をする技術が不可欠です。本記事では、AIで効果的な質問をするための具体的なテンプレート構造とその活用方法を解説します。
1. なぜ「上手い質問」がAIの効果を左右するのか?
AIは、入力された質問の質に応じて回答の精度や有用性が大きく変わります。例えば、曖昧な質問では一般的な回答しか得られませんが、具体的で構造化された質問をすれば、詳細かつ実践的な回答が得られます。
では、どのようにして「上手い質問」を構築すればよいのでしょうか?その答えは、質問をテンプレート化し、論理的かつ具体的に構成することにあります。
2. AIで「上手い質問」をする7つの技術

AIで「上手い質問」をするための7つの技術を、CLEARERという覚えやすい公式的アプローチで解説します。CLEARERは、以下の7つのステップを表します。
2.1 Context(背景):コンテキストを詳細に提供する
質問に業界、企業規模、プロジェクトのフェーズ、技術的制約などの背景情報を含めることで、AIは貴社のニーズに合った回答を生成します。
質問 | → 改善後 |
「セキュリティを強化する方法は?」 | 「日本の金融業界向けWebアプリケーション開発において、OWASP Top 10に対応したセキュリティ強化策を教えてください。」 |
2.2 Limit(制約):範囲や制約を明確に設定する
予算、期間、技術的制約を明示することで、AIが不要な情報を省き、必要な回答に集中できます。
質問 | → 改善後 |
「システム開発のコストを下げる方法は?」 | 「予算5000万円以内で、日本の中小企業向けERPシステムを開発する際のコスト削減策を教えてください。」 |
2.3 Expectation(期待):具体的なアクションや成果を指定する
求めるアクション(例:手順、推奨ツール)を明確にすることで、AIは実践的な回答を提供します。
質問 | → 改善後 |
「プロジェクト管理を改善するには?」 | 「アジャイル開発における納期遅延を防ぐための、具体的なプロジェクト管理ツールの導入手順を教えてください。」 |
2.4 Aim(目的):質問の目的を明確にする
質問の目的(例:技術選定、課題解決)を定めることで、AIは貴社のゴールに直結した回答を生成します。
質問 | → 改善後 |
「AIツールについて教えて」 | 「システム開発のテスト自動化を効率化するために、AIツールの具体的な活用方法を教えてください。」 |
2.5 Request Format(形式):回答の形式を指定する
箇条書き、表形式、ステップごとの説明などの形式を指定することで、情報を整理された形で受け取れます。
質問 | → 改善後 |
「クラウドサービスの選び方は?」 | 「日本の中堅IT企業がクラウドサービスを選ぶ際の基準を、表形式で比較してください。」 |
2.6 Enhance(深掘り):反復的な質問で深掘りする
初回の回答が不十分な場合、「具体例を追加して」「別の視点から説明して」と追質問することで、回答の質を向上させられます。
質問 | → 改善後 |
「オフショア開発の品質管理方法は?」 | 「ベトナムのオフショア開発チームと連携する場合、品質管理の具体例を3つ挙げてください。」 |
2.7 Result-Oriented(成果):ビジネス成果に直結する質問を設計する
コスト削減、納期短縮、品質向上など、ビジネスゴールに紐づけた質問をすることで、回答を業務に直結させます。
質問 | → 改善後 |
「開発プロセスの効率化方法は?」 | 「日本の中堅IT企業がオフショア開発で納期を20%短縮するために、ベトナムのチームと連携する際のプロセス改善策を教えてください。」 |
3. CLEARER公式のテンプレート構造
[目的(Aim)]を達成するために、[背景(Context)]を持つ[業界/企業規模]向けに、[制約(Limit)]内で、[技術/課題]に関する[アクション/情報(Expectation)]を、[形式(Request Format)]で教えてください。必要に応じて、[深掘り(Enhance)]や[ビジネス成果(Result-Oriented)]を考慮してください。 |
4. CLEARER公式の活用例
4.1 プロジェクト要件定義の場面
プロンプト
「オフショア開発の品質向上を目指し(Aim)、日本の金融業界向け(Context)、予算1億円以内(Limit)で、ベトナムの開発チームと連携する際の品質管理プロセス(Expectation)を、ステップ形式(Request Format)で教えてください。品質保証の具体例を追加してください(Enhance)。これによりプロジェクトの信頼性を20%向上させる(Result-Oriented)。」
→ 期待される回答:コードレビューやテスト計画のステップごとのプロセスと具体例が整理されて提示される。
4.2 技術選定の場面
プロンプト:
「クラウド移行のコスト削減を目的に(Aim)、日本の中堅製造業向け(Context)、初期投資5000万円以内(Limit)で、AWSとAzureの比較(Expectation)を、表形式(Request Format)で教えてください。コスト削減効果の定量データを追加してください(Enhance)。これにより運用コストを15%削減する(Result-Oriented)。」
→ 期待される回答:コストやスケーラビリティの比較表と定量データが提供される。
4.3 課題解決の場面
プロンプト:
「納期遅延の防止を目指し(Aim)、日本の中小IT企業向け(Context)、アジャイル開発を前提に(Limit)、リスク管理のベストプラクティス(Expectation)を、箇条書きで5つ(Request Format)教えてください。実際の事例を追加してください(Enhance)。これにより納期遵守率を90%以上にする(Result-Oriented)。」
→ 期待される回答:スプリント計画やバックログ管理の具体例を含むベストプラクティスが箇条書きで提示される。
5. AIを活用する際の注意点と効率化のヒント

AIは強力なツールですが、誤った使い方をすると期待通りの成果を得られない場合があります。
5.1 過度な依存を避ける
AIは参考情報を提供しますが、最終的な意思決定は貴社の専門知識やデータに基づいて行う必要があります。例えば、技術選定の際は、AIの回答を参考にしつつ、実際のPoC(概念実証)を実施しましょう。
5.2 回答の正確性を確認する
AIの回答には誤りや最新でない情報が含まれる場合があります。特に、技術仕様や法規制に関する質問では、公式ドキュメントや専門家に確認することが重要です。
5.3 質問を反復的に改善する
最初の回答が不十分な場合、質問をより具体的に修正して再入力します。例えば、「もっと詳細に」「具体例を追加して」と追記するだけで、回答の質が向上します。
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終わりに
「上手い質問」は、単なるスキルではなく、戦略的な意思決定を支えるインフラです。日々の業務の中でAIを活用する際、本記事の内容を参考に質問を構築し、段階的にブラッシュアップしていくことで、AIのポテンシャルを最大限に引き出せるでしょう。