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ITアウトソーシング市場

ITアウトソーシングの未来:ベトナムが次の技術革新拠点に

はじめに 

グローバル化が進む現代のビジネス環境において、ITアウトソーシングは企業にとって効率的かつ戦略的な選択肢として重要性を増しています。特に、コスト削減や技術力の向上を求める企業にとって、ベトナムが新たな技術革新の拠点として注目されています。 

本記事では、ITアウトソーシングの定義、ベトナムの強み、そして成功事例を通じて、ベトナムがITアウトソーシングの将来にどのように寄与するかを考察します。 

1. ITアウトソーシングの概要 

1.1 ITアウトソーシングとは 

ITアウトソーシングとは、日本語で「外部委託」 、情報技術(IT)関連の業務を自社外の専門業者に委託するビジネス手法です。これには、ソフトウェア開発、システム管理、データベース運用、サポートサービスなど、幅広い業務が含まれます。 

アウトソーシングの目的は、主に下記の3つが挙げられます。 

コスト効率を上げるだけでなく 

専門知識を持つパートナーを活用することで 

自社のリソースをコアビジネスに集中させる点にあります 

1.2 ITアウトソーシングの主な形態 

アウトソーシングの主な形態は、下記の6つが挙げられます。 

 ITアウトソーシングの主な形態

2. ITアウトソーシングが注目される背景 

2.1. 専門知識の不足 

多くの企業では、ITに関する高度な専門知識を持つ人材の確保が困難になっています。特に、中小企業では自社内にIT専門家を配置するのはコスト面やリソースの面で大きな負担となります。そうした背景から、外部の専門家にIT業務を委託するITアウトソーシングの需要が高まっています。 

2.2. コスト削減 

企業にとって、IT部門の運営には大きなコストがかかります。社内でのIT管理やシステムのメンテナンスには、ハードウェア、ソフトウェア、そして人件費が必要です。アウトソーシングを利用することで、これらのコストを削減し、資源を他の重要な業務に集中させることができます。 

2.3. 最新技術への対応 

技術の進化は非常に速く、企業は常に最新の技術を追い求めなければなりません。しかし、社内でこれを維持するのは困難です。アウトソーシング企業は、最新の技術とトレンドを熟知しているため、効率的に新しいテクノロジーを取り入れることが可能です。 

2.4. 業務の効率化 

ITアウトソーシングは、専門家に任せることで業務の効率を大幅に向上させます。企業は本来のコアビジネスに集中でき、ITに関するトラブルやメンテナンス作業から解放されます。 

3. ITアウトソーシング導入のプロセス 

ITアウトソーシング導入のプロセス

 

ITアウトソーシングの導入は、企業の業務効率化やコスト削減に大きな効果をもたらします。しかし、成功させるためには、以下のプロセスを慎重に進めることが重要です。 

3.1. ニーズの明確化 

業務分析と課題の特定

まず、自社のIT業務全体を詳細に分析し、どの部分がアウトソーシングの対象となるかを明確にします。例えば、システム運用、ヘルプデスク、開発業務など、各業務の現状を評価し、課題やボトルネックを洗い出します。 

目標設定

アウトソーシングを通じて達成したい具体的な目標を設定します。例えば、コスト削減、業務効率化、専門知識の活用、リソースの最適化など、明確な目標設定は、後のプロセスでの意思決定に大きな影響を与えます。 

3.2. パートナー選定 

候補企業のリサーチ

市場における複数のアウトソーシングベンダーをリサーチし、技術力、実績、評判、価格帯などを比較します。特に、同業界での実績や専門性は重要な評価ポイントとなります。 

提案依頼書(RFP)の作成と送付

自社の要件や期待を明確に記載したRFPを作成し、複数の候補企業に送付します。これにより、各ベンダーから具体的な提案を受け取り、比較検討が可能となります。 

評価と選定

提案内容、価格、サービス範囲、サポート体制、契約条件などを総合的に評価し、最適なパートナーを選定します。この際、ベンダーの信頼性や柔軟性も重要な判断基準となります。 

3.3. 契約の締結 

契約内容の詳細確認

サービス範囲、品質基準、価格、契約期間、責任範囲、データセキュリティ、知的財産権など、契約書の各条項を詳細に確認します。特に、サービスレベルアグリーメント(SLA)の内容は、後の運用に直接影響を与えるため、慎重に検討します。 

法務・財務部門との協議

契約内容が自社の法務・財務ポリシーに適合しているか、リスクはないかを内部で確認します。必要に応じて、弁護士や会計士の助言を求めることも検討します。 

3.4. 移行計画の策定 

移行スケジュールの作成

業務移行の具体的なスケジュールを作成し、各ステップの責任者や期限を明確にします。これにより、移行プロセス全体の進捗を効果的に管理できます。 

リスク評価と対策

移行期間中に発生し得るリスクを評価し、それぞれに対する対策を策定します。例えば、データ移行時のセキュリティリスクや業務停止の可能性などを考慮し、適切な対応策を準備します。 

従業員への周知と教育

アウトソーシング導入に伴う業務変更を従業員に周知し、必要な教育やトレーニングを提供します。これにより、従業員の抵抗感を減少させ、スムーズな移行を促進します。 

3.5. 運用・監視 

サービス開始とモニタリング

アウトソーシングサービスの提供が開始されたら、SLAに基づき、サービスの品質やパフォーマンスを定期的にモニタリングします。これにより、問題の早期発見と対応が可能となります。 

定期的なコミュニケーション

ベンダーとの定期的なミーティングや報告を通じて、現状の課題や改善点を共有し、協力関係を維持します。特に、問題解決やサービス改善のための迅速なコミュニケーションは不可欠です。 

3.6. 評価と改善 

パフォーマンス評価

定期的にサービスのパフォーマンスを評価し、初期の目標達成度を確認します。例えば、コスト削減率、業務効率の向上度合い、従業員満足度などを指標として使用します。 

改善計画の策定と実施

評価結果に基づき、必要な改善策を策定し、ベンダーと協力して実施します。これにより、サービス品質の継続的な向上が期待できます 

これらのプロセスを適切に実施することで、ITアウトソーシングの導入効果を最大限に引き出すことが可能となります。 

*プロセス全体を通じてのポイント 

コミュニケーション

各ステップでパートナーと企業間の密なコミュニケーションが不可欠です。 

柔軟性

ビジネス環境や技術の進化に合わせ、アウトソーシングの内容を柔軟に調整できる契約・運用が重要です。 

継続的な見直し

定期的な評価と改善サイクルを確立し、ビジネス目標の達成を支援するプロセスを維持することが、長期的な成功に繋がります。 

これらのプロセスを通じて、企業は効果的にITアウトソーシングを活用し、ビジネス価値を最大化することが可能となります。 

4. ベトナム:次の技術革新拠点に 

オフショア開発検討先 国別割合

出典:オフショア開発白書(2023年版) 

多くの日本企業がオフショア先にベトナムを選んでおり、その背景には親日的な国民性、勤勉さ、地理的な近さ、そして低コストの単価が挙げられます。IT人材の育成も進み、日本語を扱う人材も増加しているため、リソースの確保に優位性があります。 

4.1 国内政治の安定性 

ベトナムの国内政治は、過去数十年にわたって比較的安定しており、急激な政策変更や社会的混乱が少ないのが特徴です。ベトナム政府は、特にIT産業の成長を促進するための政策を積極的に打ち出しており、外国企業に対する投資環境を整えています。この安定した政治環境と明確な成長戦略は、長期的なビジネス関係を築く上で大きなプラス要素となります。 

これらの要因は、ITアウトソーシングを考える企業にとって、ベトナムを他の新興国と比較しても非常に魅力的な選択肢としています。ベトナムの地政学的リスクの低さと政治的安定性は、長期的なプロジェクトや大規模なシステム開発を安全に進めるための強固な基盤となります。 

4.2 コスト競争力 

人月単価(万円 プログラマー シニアエンジニア ブリッジSE PM 
ベトナム 40.22 49.13 57.73 79.38 
中国 50.51 61.79 79.29 92.14 
フィリピン 35.83 53.33 81.25 70.83 
インド 50.83 68.75 94.29 111.43 

出典:オフショア開発白書(2023年版) 

※括弧内の数値は昨対比 

※プログラマー:コーディングや簡単なシステム開発を担当  

※シニアエンジニア:システム設計や開発を担当  

※ブリッジSE:ビジネスサイドとエンジニアサイドを繋ぐ役割を担うエンジニア  

※PM(プロジェクトマネージャー):プロジェクトにおける計画と実行の責任者 

ベトナムは、ITアウトソーシングの目的地として、コスト競争力が非常に高い国の一つです。特にソフトウェア開発や技術サポートなどの分野で、人件費が他のアジア諸国に比べて低いことが、ベトナムを魅力的な選択肢にしています。中国やインドと比較しても、同様の技術力を持ちながら、より低コストでサービスを提供できる点が大きな強みです。 

4.3 高度IT人材 

オフショア開発白書(2023年版)によると、ベトナムのIT教育は非常に盛んであり、豊富な若いエンジニアが市場に供給されています。また、ベトナム政府では、日本国内のIT需要を担うべく、国策としてIT教育に注力しています。 

多くのオフショア開発企業が、ホーチミン工科大学やハノイ工科大学など優秀なITエンジニアを輩出している大学や専門学校と提携することで、安定的にエンジニアを調達できるように取り組み、日本からの受託開発を拡大していっています。 

また、多くの案件を受け入れてきた結果、以前は対応できる企業が少なかった基幹システム/ AIやブロックチェーンなどの先端テック/PKG開発(SAP/Salesforce/kintone…)といったより高度な案件に対応可能な企業が増加しています。 

TOPDevのベトナムITマーケットレポートによると、 ベトナムのIT専門家は、ウェブ開発、モバイルアプリ開発、データサイエンス、クラウドコンピューティングなど、さまざまな技術に精通しています。 

ベトナムITマーケットレポート

レポートでは、プログラミング言語(Python、Java、JavaScript)、フレームワーク(React、Angular)、データベース管理(SQL)など、最も求められるスキルが強調されている可能性があります。 

4.4 親日国で日本語が堪能なベトナム人が多い 

国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の調査によれば、2015年と2018年の間に日本語学習者数とその増加率は以下のようになっています。 

 

2015年学習者数 

2018年学習者数 

増加率 

中国 

953,283 

1,004,625 

105% 

インドネシア 

745,125 

709,479 

95% 

韓国 

556,237 

531,511 

96% 

オーストラリア 

357,348 

405,175 

113% 

タイ 

173,817 

184,962 

106% 

ベトナム 

64,863 

174,521 

269% 

4.5 地理的な近さと時差の少なさ 

日本とベトナムの時差はわずか2時間で、タイムロスを最小限に抑えることができます。一方、インドとの時差は3時間30分あり、Webミーティングなどでの労力が増える可能性があります。 

オフショア開発先が遠いと、大きな時差が生じるため、コミュニケーションに多くの労力が必要です。しかし、ベトナムは時差が少ないため、オフショア開発がスムーズに進行しやすいです。 

さらに、直行便を利用すれば、ベトナムへの飛行時間は4~5時間程度と短く、迅速な対応が可能です。これにより、ベトナムでのオフショア開発はスムーズなプロジェクト進行を実現できます。 

5. 「オフショア開発白書2023」における最新動向 

「オフショア開発白書2023」では、日本のオフショア開発における最新動向がまとめられています。特に、以下の点が日本におけるオフショア開発の重要なトレンドとして挙げられています (オフショア開発白書2023) 

5.1 円安の影響とリソース確保の重要性 

円安の影響でオフショア開発のコストメリットが減少している中、ITリソースの逼迫が進んでいます。その結果、単なる「コスト削減」から「リソース確保」に目的がシフトしています。特に、大企業では国内でのリソース確保が難しくなっているため、オフショア開発の重要性が増しています。 

5.2 オフショア委託先国の人気 

ベトナムが引き続きオフショア開発先として最も人気があり、フィリピンやインドも注目されています。特に、英語を活用したグローバル開発体制の構築が重要視され、フィリピンやインドの強みが評価されています。 

5.3 AI・先端技術開発の成長 

AI開発などの先端技術領域でもオフショア開発の活用が進んでおり、特にベトナムなどの国々で対応できる企業が増加しています。これにより、オフショア開発の分野がさらに多様化しています。 

先端系の開発案件では、特にAI開発でのオフショア活用が進んでいます。昨年は全体で3%ほどの割合でしたが、今年は9%とシェアを広げています。そのほか、VR・AR開発、ブロックチェーン開発1%→3%と若干ではありますが、相談割合が増加しております。 

先端技術に通じたエンジニアは、日本国内で特に不足していますが、今後、活用の可能性がどんどん広がっていくでしょう。オフショア開発各社では、そうしたニーズをにらんで、すでに体制構築に向けて動いています。 

特にベトナムでは対応できる企業が増えています。 

5.4 契約形態の変化 

オフショア開発における契約形態は主に2つあります。「請負契約」と「ラボ契約」です。 

 「請負契約」が成果物に対する契約であるのに対して、「ラボ契約」は作業要員×期間に対する契約です。つまり、オフショア開発企業の中に専任の作業チームを確保するということです。これらの契約形態にはそれぞれのメリット・デメリットがあります。 

 

請負契約 

ラボ契約 

概要 ・成果物に対する契約 

作業要員 × 期間に対する契約 

オフショアベンダ内に専任の作業チームを確保する 

 

メリット 

ベンダ側に成果物責任あり 

成果物と責任範囲が明確 

日本側の対応工数小 

案件立ち上げ負荷が低い 

・仕様変更に柔軟に対応可能。 

・優秀なエンジニアを確保可能。 

デメリット 

案件の立ち上げ負荷が高い 

・仕様変更が困難。 

・リスクの上乗せによりコスト高。 

生産性や品質の担保なし 

・一定量の発注確保が必要。 

作業継続による育成が必要 

案件例 

要件が明確な案件 

・予算の制約が厳しい案件 

小規模な案件 

要件が曖昧な案件 

・継続的に予算確保可能な案件 

継続性のある案件 

その契約形態の割合としては上記グラフのようになっています。割合としては「ラボ契約」が63%と過半数を占める結果となりました。昨年は55%だったことから、増加傾向にあることが伺えます。  

 2022年 2023年 
請負契約 45% 37% 
ラボ契約 55% 63% 

このように、オフショア開発の活用は、今後ますます「リソース確保」と「グローバル開発体制の構築」が鍵となると予測されています。 

世界・日本のITサービス規模について、下記の記事に詳しい解説があります。ぜひご一読ください。 
Bài tiếp theo ITアウトソーシング市場:概要、市場の成長、今後の動向 

終わりに 

ベトナムは、技術革新の中心地として急速に成長しており、ITアウトソーシングの分野で非常に注目を集めています。弊社SYPは、この成長の波に乗り、日本企業向けに高品質なITサービスを提供しています。私たちは、豊富な技術力と競争力のあるコストを強みに、企業の成長を支えるパートナーとして最適なソリューションを提案します。 

また、弊社のエンジニアは、日本語に堪能であり、円滑なコミュニケーションが可能です。ベトナムの地理的な近さと安定したビジネス環境を活用し、迅速かつ効果的なプロジェクト遂行を実現いたします。 

未来を見据え、AIやブロックチェーンなどの先端技術にも対応可能なSYP Vietnamは、ITアウトソーシングの最前線で、貴社のビジネス目標達成を全力でサポートします。