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ジャーニーリサーチ手法とは?ユーザー体験を深く理解する調査方法を解説

ジャーニーリサーチ手法とは、ユーザーや顧客が目的を達成するまでの一連の行動、感情、接点、課題、意思決定を調査するための方法です。英語では「Journey Research Methods」と呼ばれます。単にユーザーがどの画面をクリックしたかを見るだけではなく、ユーザーがなぜその行動をしたのか、どこで迷ったのか、どの情報を必要としたのか、どのタイミングで不安や満足を感じたのかを理解することを目的とします。

UXリサーチやサービスデザインでは、ユーザーの体験を点ではなく線として捉えることが重要です。たとえば、ECサイトで商品を購入する体験は、商品ページだけで完結しません。検索、比較、レビュー確認、カート投入、決済、配送通知、受け取り、返品、再購入までが一つの流れになります。SaaSであれば、認知、資料請求、無料登録、オンボーディング、初回利用、チーム導入、継続利用、解約検討までがジャーニーになります。

本記事では、ジャーニーリサーチ手法の基本、なぜ重要なのか、代表的な調査方法、データ収集、ジャーニーマップ作成、タッチポイント分析、ペインポイント発見、UX改善、ECサイトやクラウド型業務サービス(SaaS)での活用、AI時代の変化、よくある失敗まで詳しく解説します。

1. ジャーニーリサーチ手法とは

ジャーニーリサーチ手法とは、ユーザーがある目的を達成するまでの体験全体を調査するための方法です。ここでいうジャーニーとは、ユーザーがサービスや商品と関わる一連の流れを意味します。ユーザーは、ある瞬間だけで判断しているわけではありません。課題に気づき、情報を探し、比較し、選び、使い、評価し、必要に応じて再利用します。その全体像を理解するために、ジャーニーリサーチが使われます。

ジャーニーリサーチでは、ユーザーの行動だけでなく、感情、期待、不安、障害、判断基準、周囲の影響、利用環境も扱います。たとえば、ユーザーが登録フォームで離脱した場合、理由はフォームが長いことだけではないかもしれません。料金への不安、個人情報入力への抵抗、サービス価値の理解不足、会社への信頼不足が影響している可能性もあります。ジャーニーリサーチは、こうした背景を明らかにするための調査です。

また、ジャーニーリサーチは、ユーザー体験をチームで共有するためにも重要です。プロダクトチーム、デザインチーム、エンジニアリングチーム、マーケティングチーム、カスタマーサポートチームは、それぞれ異なる接点でユーザーを見ています。ジャーニーリサーチを行うことで、各チームが断片的に持っている情報を一つの流れとして整理できます。これにより、ユーザー体験を全体最適で改善しやすくなります。

ジャーニーリサーチ手法は、ジャーニーマップを作るためだけの作業ではありません。調査、分析、可視化、課題発見、改善施策、検証までを含むプロセスです。重要なのは、きれいな図を作ることではなく、ユーザーの現実を理解し、改善につなげることです。ジャーニーマップは成果物の一つですが、リサーチで得た洞察をチームの意思決定に活かすことが本来の目的です。

2. なぜジャーニーリサーチが重要なのか

ジャーニーリサーチが重要なのは、ユーザー体験の問題が一つの画面や一つの機能だけにあるとは限らないからです。多くのサービスでは、ユーザーが複数のチャネル、複数の部門、複数のタッチポイントを行き来します。Webサイト、アプリ、メール、SNS、広告、店舗、サポート、営業担当、FAQなどが一つの体験としてつながっています。

この全体像を見ないまま改善すると、部分的には良くなっても、ユーザー体験全体は改善されない場合があります。ジャーニーリサーチは、ユーザーの流れを可視化し、どこで不安や摩擦が生まれているかを把握するために役立ちます。

2.1 体験を点ではなく線で理解できる

通常のアクセス解析や画面単位の改善では、ユーザー体験を点で見てしまいがちです。どのページで離脱したか、どのボタンがクリックされたか、どのフォームでエラーが出たかは分かります。しかし、それだけでは、ユーザーがそこに至るまでに何を考え、何に迷い、どの情報を見ていたのかまでは分かりません。

ジャーニーリサーチでは、ユーザー体験を時間の流れとして捉えます。認知、検討、利用、継続、サポート、再購入といった段階をつなげて見ることで、体験全体の構造が見えてきます。これにより、単発のUI改善では見えなかった根本的な課題を発見できます。

2.2 ペインポイントを発見できる

ジャーニーリサーチは、ユーザーのペインポイントを発見するために有効です。ペインポイントとは、ユーザーが困る、迷う、不安になる、手間を感じる、期待を裏切られるポイントです。これらは、必ずしもユーザーが明確に言語化できるとは限りません。

たとえば、ユーザーは「フォームが悪い」と言うかもしれませんが、実際には登録前に料金やサポート内容を理解できていないことが原因かもしれません。ジャーニー全体を調査することで、表面的な問題ではなく、体験の中でどこに本当の摩擦があるのかを見つけやすくなります。

2.3 チーム間の認識を揃えられる

ジャーニーリサーチは、チーム間の認識を揃えるためにも役立ちます。マーケティングチームは流入や認知を見ており、プロダクトチームは機能利用を見ており、サポートチームは問い合わせを見ています。それぞれが見ているユーザー像が違うと、改善の優先順位がずれやすくなります。

ジャーニーを可視化すると、ユーザーがどの段階で何に困っているのかをチーム全体で共有できます。これにより、個別部門の都合ではなく、ユーザー体験全体を基準に改善を考えやすくなります。ジャーニーリサーチは、組織内の共通理解を作るための手法でもあります。

2.4 改善施策の優先順位を決めやすくなる

ユーザー体験には多くの課題がありますが、すべてを一度に改善することはできません。ジャーニーリサーチを行うと、どの段階の課題がユーザーに大きな影響を与えているのかを把握しやすくなります。これにより、改善施策の優先順位を決めやすくなります。

たとえば、登録フォームの細かなUI改善よりも、登録前の価値説明や料金ページの分かりやすさを改善したほうが効果が大きい場合があります。ジャーニー全体を見ることで、局所最適ではなく、体験全体に効く改善を選びやすくなります。

3. ジャーニーリサーチの対象

ジャーニーリサーチの対象は、ユーザーの行動だけではありません。感情、タッチポイント、意思決定、期待、課題、制約、環境など、体験に影響する要素を幅広く扱います。ユーザーが何をしたかだけでなく、なぜそうしたのかを理解することが重要です。

対象を広く見ることで、改善の視野も広がります。UIだけを改善すべきなのか、情報設計を見直すべきなのか、サポートを改善すべきなのか、通知やメールのタイミングを変えるべきなのかを判断しやすくなります。

調査対象内容分かること
行動ユーザーが実際に行ったこと利用手順、離脱箇所、繰り返し行動
感情不安、期待、満足、苛立ち体験の山場や摩擦
タッチポイント接点となるチャネルや画面どこで情報を得ているか
意思決定選択や判断の理由購入・登録・継続の判断基準
ペインポイント困りごとや障害改善すべき優先課題
コンテキスト利用環境や状況なぜその行動が起きるか

3.1 行動

行動とは、ユーザーが実際に行ったことです。検索する、広告を見る、比較記事を読む、商品ページを開く、レビューを確認する、問い合わせる、購入する、ログインする、設定する、サポートを利用するなどが含まれます。行動を整理すると、ユーザーの実際の流れが見えてきます。

ただし、行動だけを見ても十分ではありません。同じ行動でも、理由はユーザーによって異なります。レビューを見る行動は、安心したいからかもしれませんし、購入をやめる理由を探しているのかもしれません。行動の背景を理解するためには、インタビューや観察調査と組み合わせることが重要です。

3.2 感情

感情は、ジャーニーリサーチで非常に重要な対象です。ユーザーは、サービスを利用する中で期待、不安、安心、苛立ち、満足、疲れ、驚きなどを感じます。感情の変化を把握すると、体験のどこに摩擦や価値があるのかが見えてきます。

たとえば、ユーザーが登録直後に不安を感じている場合、オンボーディングの説明が不足している可能性があります。購入後に安心している場合は、配送通知やサポート情報がうまく機能している可能性があります。感情は、数値データだけでは見えにくい体験品質を理解するために役立ちます。

3.3 タッチポイント

タッチポイントとは、ユーザーがサービスやブランドと接触する場所です。Webサイト、アプリ、広告、SNS、メール、店舗、営業担当、カスタマーサポート、FAQ、決済画面、配送通知などが含まれます。タッチポイントを整理すると、ユーザーがどこで情報を得て、どこで判断しているかが分かります。

多くのユーザー体験は、複数のタッチポイントを横断します。たとえば、SNSで知り、検索で比較し、公式サイトで確認し、レビューを見て、アプリで購入するという流れがあります。ジャーニーリサーチでは、これらの接点を一つの体験として捉えることが重要です。

3.4 意思決定

意思決定とは、ユーザーが何かを選ぶ、やめる、進む、戻る、登録する、購入する、継続する、解約するなどの判断を行うことです。意思決定の背景には、価格、信頼、機能、使いやすさ、他者の評価、リスク認識、時間制約などがあります。

ジャーニーリサーチでは、ユーザーがどの段階でどのような判断をしているかを明らかにします。意思決定の理由を理解すると、適切な情報を適切なタイミングで提示しやすくなります。これは、コンバージョン改善や継続率改善にも関係します。

4. 代表的なジャーニーリサーチ手法

ジャーニーリサーチには、複数の調査手法があります。代表的なものには、ユーザーインタビュー、行動観察、コンテキスト調査、日記調査、アンケート、アクセス解析、サポートログ分析、ワークショップがあります。これらを組み合わせることで、ユーザー体験を立体的に理解できます。

一つの手法だけでジャーニー全体を理解するのは難しい場合があります。インタビューではユーザーの考えを聞けますが、実際の行動とは違う場合があります。アクセス解析では行動の傾向が分かりますが、理由は分かりにくいです。そのため、定性調査と定量調査を組み合わせることが重要です。

手法主な目的向いている場面
ユーザーインタビュー行動理由や感情を理解する意思決定や不安の把握
行動観察実際の行動を見る無意識の迷いや摩擦の発見
コンテキスト調査利用環境を理解する現場や業務文脈の把握
日記調査時間をまたぐ体験を見る長期利用や習慣の理解
アンケート傾向を広く把握する仮説検証や優先度確認
アクセス解析行動データを分析する離脱箇所や利用傾向の把握
サポートログ分析問い合わせや不満を整理するペインポイント発見
ワークショップチームで理解を共有するジャーニーマップ作成

4.1 ユーザーインタビュー

ユーザーインタビューは、ジャーニーリサーチの基本的な手法です。ユーザーに対して、サービスを知ったきっかけ、比較した情報、迷ったポイント、購入や登録の理由、利用後の満足や不満を聞きます。数値だけでは分からない心理や文脈を理解できます。

インタビューでは、ユーザーに抽象的な意見だけを聞くのではなく、実際の経験に基づいて話してもらうことが重要です。「どう思いますか」よりも、「最後にこのサービスを使ったとき、最初に何をしましたか」「どこで迷いましたか」と聞くほうが具体的な情報を得やすくなります。

4.2 行動観察

行動観察は、ユーザーが実際にサービスを使う様子を観察する手法です。ユーザーは自分の行動をすべて正確に説明できるわけではありません。そのため、実際にどこを見て、どこで止まり、何をクリックし、どこで迷うのかを観察することが重要です。

行動観察では、ユーザーの発話、表情、操作の迷い、戻る行動、スクロール、検索、入力ミスなどに注目します。これにより、ユーザー自身が言語化していない課題を見つけられます。特にUI改善やオンボーディング改善に有効です。

4.3 コンテキスト調査

コンテキスト調査とは、ユーザーが実際にサービスを使う環境や状況を調べる手法です。ユーザーは、静かな会議室だけでサービスを使うわけではありません。職場、移動中、店舗、家庭、現場作業中など、さまざまな環境で利用します。

利用環境を理解すると、なぜその行動が起きるのかが分かりやすくなります。たとえば、業務システムで入力ミスが多い場合、UIだけが原因ではなく、現場が忙しく、スマートフォン片手で操作していることが原因かもしれません。コンテキスト調査は、現実の利用状況を理解するために重要です。

4.4 日記調査

日記調査とは、ユーザーに一定期間、自分の行動や感情を記録してもらう手法です。ユーザー体験が数日、数週間、数か月にわたる場合、単発のインタビューでは把握しきれません。日記調査を使うと、時間をまたぐ体験の変化を追いやすくなります。

SaaSのオンボーディング、学習アプリ、ヘルスケアサービス、習慣化サービス、サブスクリプションなどでは、日記調査が有効です。初回利用時の期待、途中での迷い、継続利用の動機、離脱の兆候を理解できます。

5. 定性調査と定量調査の使い分け

ジャーニーリサーチでは、定性調査と定量調査を使い分けることが重要です。定性調査は、ユーザーの理由、感情、文脈を深く理解するために使います。定量調査は、どの課題がどれくらい多く発生しているか、どの段階で離脱が多いかを把握するために使います。

どちらか一方だけでは不十分です。定性調査だけでは、課題の規模が分かりにくい場合があります。定量調査だけでは、なぜその行動が起きたのかが分かりにくい場合があります。ジャーニーリサーチでは、両方を組み合わせて洞察を深めることが大切です。

5.1 定性調査で理由を理解する

定性調査では、ユーザーの発言、行動、感情、背景を深く理解します。インタビュー、観察調査、コンテキスト調査、日記調査などが代表的です。これらの手法は、ユーザーがなぜその行動をしたのか、どのような不安を感じたのかを明らかにするのに向いています。

たとえば、アクセス解析で登録フォームの離脱率が高いことが分かったとしても、理由は分かりません。定性調査を行うことで、入力項目が多い、料金が不明、個人情報への不安がある、登録後の流れが分からないといった背景を把握できます。

5.2 定量調査で規模を把握する

定量調査では、数値データを使って傾向や規模を把握します。アクセス解析、アンケート、ログ分析、コンバージョン率、離脱率、継続率、問い合わせ件数などが含まれます。定量調査は、どの課題がどれくらい大きいのかを確認するために有効です。

たとえば、インタビューで「料金が分かりにくい」という声が出た場合、それが少数の意見なのか、多くのユーザーに共通する問題なのかを定量データで確認できます。定量調査は、改善施策の優先順位を決めるときにも役立ちます。

5.3 両方を組み合わせる

ジャーニーリサーチでは、定性調査と定量調査を組み合わせることが理想的です。定量データで問題の発生箇所を特定し、定性調査で理由を深掘りする方法があります。逆に、定性調査で見つけた仮説を、定量データで検証する方法もあります。

この組み合わせにより、感覚だけでも数値だけでもない、信頼性の高い洞察を得られます。ユーザー体験の改善では、「何が起きているか」と「なぜ起きているか」の両方を理解することが重要です。

5.4 調査目的に合わせて選ぶ

調査手法は、目的に合わせて選ぶ必要があります。新しいサービスの課題を探索したい場合は、インタビューや観察調査が有効です。既存サービスの離脱箇所を特定したい場合は、アクセス解析やファネル分析が有効です。長期利用の変化を見たい場合は、日記調査が向いています。

目的が曖昧なまま調査を始めると、集めたデータをどう使えばよいか分からなくなります。ジャーニーリサーチでは、最初に何を明らかにしたいのかを決めることが大切です。

6. ジャーニーマップ作成との関係

ジャーニーリサーチの成果物としてよく使われるのが、ジャーニーマップです。ジャーニーマップとは、ユーザーが目的を達成するまでの流れを、段階、行動、感情、タッチポイント、課題、機会として可視化したものです。チームでユーザー体験を共有するために役立ちます。

ただし、ジャーニーマップは調査の代わりではありません。調査なしに作ったジャーニーマップは、チームの想像や仮説に偏る可能性があります。信頼できるジャーニーマップを作るには、インタビュー、観察、ログ分析、サポートデータなどの根拠が必要です。

要素内容目的
ステージ体験の段階流れを整理する
行動ユーザーが行うこと実際の動きを把握する
感情不安、期待、満足など体験の質を理解する
タッチポイント接点となるチャネルどこで接触するかを把握する
ペインポイント困りごとや障害改善課題を見つける
機会改善の可能性施策へつなげる

6.1 ステージを整理する

ジャーニーマップでは、まず体験をステージに分けます。ECサイトであれば、認知、検索、比較、購入、配送、利用、レビュー、再購入のように分けられます。SaaSであれば、認知、問い合わせ、無料登録、初回設定、チーム導入、定着、継続、解約検討のように整理できます。

ステージ分けは、ユーザー視点で行うことが重要です。企業側の業務プロセスではなく、ユーザーがどのような流れで目的に近づくのかを基準にします。企業側では「登録完了」がゴールでも、ユーザーにとっては「使い始めて価値を感じること」が本当のゴールかもしれません。

6.2 行動と感情を入れる

ジャーニーマップには、ユーザーの行動と感情を入れます。行動だけでは、体験の良し悪しが分かりません。ユーザーが同じ画面を見ていても、安心している場合と不安を感じている場合では、改善すべき内容が変わります。

感情を入れることで、体験の山場や谷が見えます。期待が高まるポイント、不安が強くなるポイント、満足が生まれるポイントを把握できます。感情の変化は、ペインポイントや改善機会を発見するための重要な手がかりです。

6.3 タッチポイントを可視化する

タッチポイントを可視化すると、ユーザーがどこでサービスと接触しているかが分かります。Webサイト、アプリ、メール、広告、SNS、サポート、営業、店舗など、複数の接点を整理します。これにより、体験がどこで分断されているかを見つけやすくなります。

たとえば、広告では魅力的に見えたのに、公式サイトでは同じ価値が伝わらない場合、タッチポイント間でメッセージがずれている可能性があります。ジャーニーマップは、接点ごとの一貫性を確認するためにも役立ちます。

6.4 改善機会に変換する

ジャーニーマップは、作って終わりではありません。重要なのは、発見した課題を改善機会に変換することです。ペインポイントに対して、情報提供を増やす、導線を変える、サポートを強化する、通知を改善する、UIを簡略化するなどの施策を考えます。

改善機会は、ユーザーへの影響度と実行しやすさで優先順位をつけます。すべての課題を同時に解決するのではなく、体験全体に大きく影響するポイントから取り組むことが重要です。

7. タッチポイント分析

タッチポイント分析とは、ユーザーがサービスやブランドと接触する場所を整理し、それぞれの接点が体験にどのような影響を与えているかを分析することです。ジャーニーリサーチでは、タッチポイントの理解が非常に重要です。

ユーザー体験は、一つの画面や一つのチャネルだけで決まりません。広告、検索結果、公式サイト、アプリ、メール、サポート、レビュー、SNSなどがつながって一つの体験になります。タッチポイント分析は、そのつながりを理解するために行います。

7.1 接点を洗い出す

まず、ユーザーとサービスの接点を洗い出します。オンラインの接点だけでなく、オフラインの接点も含めます。Webサイト、アプリ、店舗、営業資料、問い合わせ窓口、配送通知、決済画面、レビューサイトなど、ユーザーが関わる場所を幅広く整理します。

接点を洗い出すと、企業側が意識していないタッチポイントが見つかることがあります。たとえば、公式サイトよりも、第三者レビューやSNSの投稿が意思決定に強く影響している場合があります。ユーザー視点で接点を見ることが重要です。

7.2 接点ごとの役割を整理する

タッチポイントには、それぞれ役割があります。広告は認知を作る役割、商品ページは理解を促す役割、レビューは不安を減らす役割、サポートは問題解決を支援する役割を持ちます。役割が曖昧だと、接点ごとの改善方針も曖昧になります。

接点ごとの役割を整理することで、何を改善すべきかが見えます。たとえば、比較検討段階のページで情報が不足しているなら、レビューや比較表を強化する必要があります。購入後の不安が強いなら、配送通知やサポート導線を改善する必要があります。

7.3 接点間のズレを見つける

タッチポイント分析では、接点間のズレを見つけることも重要です。広告で伝えている内容と、ランディングページで伝えている内容が違う場合、ユーザーは混乱します。営業資料とプロダクト画面で表現が違う場合も、期待と実体験のズレが生まれます。

ユーザーは企業内部の部門構造を意識していません。すべての接点を一つの体験として受け取ります。そのため、接点間でメッセージ、デザイン、情報、サポート品質に一貫性があるかを確認する必要があります。

7.4 重要接点を優先する

すべてのタッチポイントを同じ優先度で改善する必要はありません。ユーザーの意思決定や満足度に大きく影響する接点を優先します。たとえば、料金ページ、初回登録、決済画面、オンボーディング、サポート返信などは重要接点になりやすいです。

重要接点を特定するには、定性調査と定量データを組み合わせます。ユーザーが強い不安を感じている接点、離脱が多い接点、問い合わせが多い接点は、優先的に改善する価値があります。

8. ペインポイント分析

ペインポイント分析とは、ユーザーが体験の中で感じる困りごと、摩擦、不安、負担、失望を整理することです。ジャーニーリサーチでは、ペインポイントを発見し、改善施策へつなげることが大きな目的になります。

ペインポイントは、UIの分かりにくさだけではありません。情報不足、信頼不足、時間の制約、社内承認の難しさ、サポートの遅さ、期待とのズレなど、さまざまな形で現れます。表面的な不満だけでなく、背景にある原因を探ることが重要です。

8.1 行動の詰まりを見る

ペインポイントを見つけるには、ユーザーの行動がどこで止まっているかを見ることが有効です。検索しても情報が見つからない、比較しても違いが分からない、フォームで入力ミスが起きる、設定画面で迷うなど、行動の詰まりは体験上の摩擦を示します。

行動の詰まりは、アクセス解析や行動観察から見つけられます。ただし、詰まりの理由を理解するには、インタビューやユーザーテストが必要です。数値で場所を特定し、定性調査で理由を理解する流れが有効です。

8.2 感情の落ち込みを見る

ペインポイントは、感情の落ち込みとしても現れます。ユーザーが不安、苛立ち、混乱、疲れを感じる場面は、改善すべき可能性が高いです。感情の変化をジャーニーマップに入れることで、体験のどこが悪化しているかを可視化できます。

たとえば、無料登録までは期待が高いのに、初回設定で不安が増える場合、オンボーディングに課題があるかもしれません。購入直後に不安が強くなる場合、確認メールや配送情報が不足している可能性があります。

8.3 根本原因を探る

ペインポイントを見つけたら、根本原因を探る必要があります。表面的な不満にすぐ対応すると、根本解決にならない場合があります。たとえば、「ボタンが分かりにくい」という声があっても、本当の原因は画面全体の情報設計やユーザーの目的理解不足かもしれません。

根本原因を探るには、「なぜ」を繰り返して考えることが有効です。なぜ迷ったのか、なぜ不安になったのか、なぜ別サービスと比較したのか、なぜ問い合わせが必要だったのかを深掘りします。ペインポイント分析は、問題の表面ではなく構造を見る作業です。

8.4 改善施策へつなげる

ペインポイントは、改善施策へつなげて初めて意味があります。課題を見つけるだけでは、ユーザー体験は変わりません。情報追加、導線改善、UI変更、サポート強化、通知改善、料金説明の見直し、オンボーディング改善などに変換します。

施策を考えるときは、ユーザーへの影響度、実装コスト、ビジネスへの効果を考えます。すべてのペインポイントを同じ扱いにするのではなく、重要度の高いものから取り組むことが大切です。

9. UX改善への活用

ジャーニーリサーチは、UX改善に直接活用できます。ユーザーがどの段階で迷い、何に不安を感じ、どの情報を必要としているかが分かれば、体験全体を改善しやすくなります。単なる画面改善ではなく、ユーザーの流れに沿った改善が可能になります。

UX改善では、発見した課題をUI、情報設計、コンテンツ、サポート、通知、オンボーディング、プロダクト機能に落とし込みます。ジャーニーリサーチは、改善施策を考えるための土台になります。

9.1 情報設計を改善する

ジャーニーリサーチを行うと、ユーザーがどの段階でどの情報を必要としているかが分かります。たとえば、初期段階では基本的な価値説明が必要で、比較段階では価格や機能差が必要で、購入直前では保証やサポート情報が必要になります。

情報設計を改善するには、ユーザーの段階に合わせて情報を配置します。すべての情報を一つのページに詰め込むのではなく、ユーザーが必要とするタイミングで必要な情報に到達できるようにします。これにより、迷いや不安を減らせます。

9.2 導線を改善する

ジャーニーリサーチは、導線改善にも役立ちます。ユーザーが次に何をすればよいか分からない、目的のページにたどり着けない、行動の途中で別の情報を探しに行くといった問題は、導線の課題です。

導線を改善するには、ユーザーの目的に合わせて次の行動を明確にします。CTA、ナビゲーション、関連リンク、比較ページ、FAQ、サポート導線を適切に配置します。ユーザーが自然に次のステップへ進めることが重要です。

9.3 オンボーディングを改善する

SaaSやアプリでは、オンボーディングが重要です。ユーザーが登録した後、最初に何をすればよいか分からないと、価値を感じる前に離脱する可能性があります。ジャーニーリサーチを行うと、初回体験のどこで不安や迷いが生まれているかを把握できます。

オンボーディング改善では、初回タスク、ガイド、サンプルデータ、進捗表示、ヘルプ導線、成功体験の設計が重要です。ユーザーが早い段階で価値を感じられるように、最初のジャーニーを短く分かりやすくする必要があります。

9.4 継続利用を改善する

ジャーニーリサーチは、継続利用の改善にも使えます。ユーザーが初回利用後に戻ってこない、途中で利用頻度が下がる、解約を検討する場合、その背景には複数の要因があります。価値を感じにくい、使い方が分からない、成果が見えない、サポートが弱いなどです。

継続利用を改善するには、利用中の体験を調査する必要があります。初回だけでなく、1週間後、1か月後、更新前などのジャーニーを見ることで、離脱の兆候や改善ポイントを発見できます。

10. ECサイトでの活用

ECサイトでは、ジャーニーリサーチが購入率やリピート率の改善に役立ちます。ユーザーは、商品を見てすぐ購入するわけではありません。検索、比較、レビュー確認、在庫確認、配送条件、返品条件、決済、受け取り、レビュー投稿までの流れを経験します。

この流れの中で、どこに不安や摩擦があるかを把握することで、ECサイト全体の体験を改善できます。商品ページだけでなく、購入前後の体験まで見ることが重要です。

10.1 商品発見の体験を調査する

ECサイトでは、ユーザーが商品を見つけるまでの体験が重要です。検索機能、カテゴリ、フィルター、ランキング、レコメンド、広告流入などが関係します。商品が良くても、見つけにくければ購入にはつながりません。

ジャーニーリサーチでは、ユーザーがどのように商品を探しているかを調査します。検索語、比較基準、見ている情報、迷ったポイントを把握することで、商品発見体験を改善できます。

10.2 比較検討の不安を調査する

ユーザーは、購入前に複数の商品を比較します。価格、サイズ、レビュー、素材、機能、配送条件、返品可否などを確認します。この段階で情報が不足していると、不安が増え、購入を先延ばしにする可能性があります。

比較検討のジャーニーを調査すると、どの情報が不足しているかが分かります。レビューの見せ方、比較表、サイズガイド、写真、FAQを改善することで、ユーザーが安心して判断しやすくなります。

10.3 購入後体験を調査する

ECサイトでは、購入後体験も重要です。注文確認、配送通知、受け取り、開封、返品、問い合わせ、レビュー投稿までが体験に含まれます。購入後に不安が残ると、リピートや口コミに悪影響を与える可能性があります。

ジャーニーリサーチでは、購入後の不安や満足を調査します。配送状況が分かりやすいか、返品方法が簡単か、商品が期待通りか、サポートが早いかを確認します。購入後体験の改善は、長期的な信頼につながります。

10.4 リピート購入を分析する

リピート購入を増やすには、初回購入後のジャーニーを理解する必要があります。ユーザーが再購入する理由、しない理由、次に必要な情報、タイミング、通知への反応を調査します。リピートは、購入後の満足と関係構築によって生まれます。

たとえば、消耗品であれば再購入タイミングの通知が有効かもしれません。ファッションであれば、コーディネート提案や新作通知が有効かもしれません。ジャーニーリサーチにより、ユーザーの再購入文脈を把握できます。

11. SaaSでの活用

クラウド型業務サービス(SaaS)では、ジャーニーリサーチが導入率、定着率、継続率の改善に役立ちます。SaaSの体験は、Webサイト訪問や無料登録だけで終わりません。導入検討、社内説明、無料体験、初回設定、チーム展開、継続利用、更新判断まで続きます。

SaaSでは、複数の関係者が意思決定に関わることも多く、ジャーニーが複雑になりやすいです。利用者、管理者、決裁者、情報システム部門、現場担当者がそれぞれ異なる課題を持つ場合があります。

11.1 導入検討ジャーニーを調査する

SaaSでは、導入前の検討プロセスが重要です。ユーザーは、課題を認識し、複数サービスを比較し、料金や機能を確認し、導入事例を見て、社内で説明します。この段階で情報が不足していると、問い合わせや登録に進みにくくなります。

ジャーニーリサーチでは、導入検討者がどの情報を必要としているかを調査します。料金、セキュリティ、導入事例、機能比較、サポート、移行方法などの情報が、どのタイミングで必要になるかを把握できます。

11.2 オンボーディングを調査する

SaaSのオンボーディングでは、ユーザーが初期設定を終え、最初の価値を感じるまでの体験が重要です。登録しただけでは継続利用につながりません。ユーザーが早い段階で「使えそうだ」と感じる必要があります。

ジャーニーリサーチでは、オンボーディング中の迷い、設定の難しさ、説明不足、成功体験までの距離を調査します。これにより、初回タスク、ヘルプ、チュートリアル、サンプルデータ、ガイド表示を改善できます。

11.3 チーム展開を調査する

SaaSでは、個人が使い始めた後、チームに展開する段階があります。この段階では、招待、権限設定、運用ルール、社内説明、既存ツールとの連携が課題になります。個人利用では問題なくても、チーム利用で摩擦が生まれることがあります。

ジャーニーリサーチでは、管理者と利用者の両方を調査します。管理者が困る設定、メンバーが理解しにくい操作、チーム内で発生する質問を把握することで、導入支援や管理機能を改善できます。

11.4 継続利用と解約理由を調査する

SaaSでは、継続利用と解約理由の調査が重要です。ユーザーが継続する理由は、機能が多いからだけではありません。業務に定着している、成果が見える、サポートが安心、チームで使いやすいなどの要因があります。

解約理由を調査すると、価値が伝わっていない、使い方が定着していない、料金に見合う成果が見えない、競合サービスへ移行したなどの課題が見つかります。継続利用のジャーニーを理解することで、カスタマーサクセスやプロダクト改善に活かせます。

12. AI時代のジャーニーリサーチ

AI時代には、ジャーニーリサーチの重要性がさらに高まります。AIチャット、レコメンド、パーソナライズ、AIエージェント、音声UI、自動化ワークフローなどが体験に組み込まれると、ユーザージャーニーはさらに複雑になります。ユーザーは、人間、システム、AIの間を行き来しながら目的を達成するようになります。

AIを導入しただけでは、良い体験になるとは限りません。ユーザーがAIの提案を信頼できるか、どこで人間の確認が必要か、AIが誤った場合にどう回復できるかを調査する必要があります。ジャーニーリサーチは、人間とAIが関わる体験を理解するためにも重要です。

12.1 AIタッチポイントを把握する

AI時代のジャーニーリサーチでは、AIが関わるタッチポイントを把握する必要があります。AIチャット、レコメンド、検索補助、要約、入力支援、自動返信、AIエージェントの実行などが該当します。これらがユーザー体験のどこに入るのかを整理します。

AIタッチポイントでは、ユーザーが何を期待し、何に不安を感じるかが重要です。AIが便利でも、判断理由が分からなければ信頼されない場合があります。AIの役割をジャーニー上で明確にすることが必要です。

12.2 信頼と説明可能性を調査する

AIを含む体験では、信頼と説明可能性が重要になります。ユーザーは、AIがなぜその回答や提案をしたのか、どの情報を参照したのか、どこまで任せてよいのかを気にします。これが不明確だと、AIの出力を使いにくくなります。

ジャーニーリサーチでは、ユーザーがAIを信頼する瞬間と、不安になる瞬間を調査します。説明、根拠表示、確認導線、人間への切り替え、修正可能性が体験にどう影響するかを把握します。

12.3 人間による確認を設計する

AIが業務や意思決定に関わる場合、人間による確認が必要になる場面があります。特に、金融、医療、法務、採用、顧客対応、セキュリティのような領域では、AIの提案をそのまま実行するのではなく、人間が確認するプロセスが重要です。

ジャーニーリサーチでは、どこで人間の確認が必要か、確認が負担になっていないか、ユーザーが安心して判断できるかを調査します。AI体験では、自動化と人間の監督のバランスが重要になります。

12.4 AIによる調査支援を活用する

AIは、ジャーニーリサーチそのものを支援することもできます。インタビュー記録の要約、サポートログの分類、レビュー分析、行動パターンの抽出、ペインポイントの仮説作成などに活用できます。大量の定性データを整理する場面では、AIが効率化に役立ちます。

ただし、AIの分析結果をそのまま信じるのではなく、人間が確認する必要があります。AIはパターン抽出に役立ちますが、ユーザーの文脈や感情を最終的に解釈するのはリサーチャーの役割です。AIは補助として使い、判断は人間が行うことが重要です。

13. よくある失敗

ジャーニーリサーチでよくある失敗は、調査せずに想像でマップを作ること、理想の体験だけを書くこと、タッチポイントを狭く見すぎること、作って終わりにすることです。これらの失敗は、ジャーニーリサーチを表面的な資料作成にしてしまいます。

ジャーニーリサーチの目的は、きれいな図を作ることではありません。ユーザーの現実を理解し、チームで共有し、改善につなげることです。そのためには、根拠のあるデータ、ユーザー視点、継続的な更新が必要です。

13.1 想像だけで作る

調査をせずにチームの想像だけでジャーニーマップを作ると、実際のユーザー体験とずれる可能性があります。社内メンバーはサービスに詳しいため、ユーザーがどこで迷うかを見落としがちです。初心者ユーザーや初回利用者の視点を想像するのは簡単ではありません。

もちろん、仮説としてマップを作ることは有効です。ただし、それを事実として扱ってはいけません。仮説マップであれば、後からインタビュー、観察、ログ分析で検証する必要があります。

13.2 理想の体験だけを書く

ジャーニーマップに理想の体験だけを書くことも失敗です。実際のユーザー体験には、迷い、不安、手間、誤解、問い合わせ、離脱があります。これらを隠してしまうと、改善すべき課題が見えなくなります。

ジャーニーリサーチでは、良い体験だけでなく悪い体験も正直に扱う必要があります。特に、感情が落ち込むポイントや、離脱が多いポイントは重要です。現実の摩擦を見つけることが、改善の出発点になります。

13.3 タッチポイントを狭く見る

タッチポイントを自社サイトやアプリだけに限定してしまうと、ユーザー体験の全体像を見落とします。ユーザーは、検索結果、比較サイト、レビュー、SNS、広告、友人の意見、営業資料、サポートなど、さまざまな接点から影響を受けます。

ジャーニーリサーチでは、ユーザーが実際に使っている接点を幅広く見る必要があります。企業が管理していない接点であっても、ユーザーの意思決定に影響するなら重要です。タッチポイントを広く捉えることで、体験の分断を発見できます。

13.4 作って終わりにする

ジャーニーマップを作って終わりにすることもよくある失敗です。マップを作っただけでは、ユーザー体験は改善されません。発見した課題を施策に落とし込み、実行し、効果を測定する必要があります。

また、ユーザージャーニーは時間とともに変化します。新しい機能、チャネル、競合、ユーザー行動の変化によって、ジャーニーも変わります。そのため、ジャーニーマップは定期的に見直すべきです。

14. 実践導入ステップ

ジャーニーリサーチを実践するには、目的設定、対象ユーザーの定義、調査設計、データ収集、分析、可視化、改善施策、検証の流れで進めると整理しやすくなります。いきなりマップを作るのではなく、何を明らかにしたいのかを決めることが大切です。

導入時には、完璧なジャーニーマップを作ろうとしすぎないことも重要です。まずは主要なユーザーセグメントや重要な体験に絞り、小さく始めるほうが実務では進めやすくなります。

14.1 目的を決める

最初に、ジャーニーリサーチの目的を決めます。購入率を改善したいのか、オンボーディングを改善したいのか、解約理由を知りたいのか、サポート問い合わせを減らしたいのかによって、調査対象や手法が変わります。

目的が曖昧だと、調査結果も曖昧になります。たとえば、「ユーザー体験を理解したい」だけでは広すぎます。「無料登録から初回価値実感までの離脱理由を理解する」のように絞ると、調査設計がしやすくなります。

14.2 対象ユーザーを決める

次に、対象ユーザーを決めます。新規ユーザー、既存ユーザー、離脱ユーザー、リピートユーザー、管理者、利用者、決裁者など、ユーザーの種類によってジャーニーは変わります。すべてのユーザーを一つのマップにまとめると、内容が曖昧になりやすくなります。

対象ユーザーを明確にすると、調査質問や分析観点も明確になります。SaaSであれば、管理者と一般利用者では課題が異なります。ECサイトであれば、初回購入者とリピーターでは見ている情報が違います。

14.3 データを収集する

目的と対象が決まったら、データを収集します。インタビュー、観察、アンケート、アクセス解析、サポートログ、レビュー、営業メモなどを組み合わせます。重要なのは、ユーザーの発言だけでなく、実際の行動も確認することです。

データ収集では、ユーザーの実体験を具体的に聞くことが重要です。「普段どうしていますか」よりも、「最後にこのサービスを使ったとき、最初に何をしましたか」と聞くほうが、具体的なジャーニーを再現しやすくなります。

14.4 分析して改善へつなげる

収集したデータを分析し、ステージ、行動、感情、タッチポイント、ペインポイント、改善機会に整理します。そのうえで、ジャーニーマップやインサイトレポートとして可視化します。可視化は、チームで共有しやすくするための手段です。

最後に、改善施策へつなげます。課題ごとに、影響度、実行難易度、担当チーム、検証方法を整理します。リサーチ結果を施策と結びつけることで、ジャーニーリサーチは実務に活きるものになります。

15. ジャーニーリサーチ手法の今後

ジャーニーリサーチ手法は、今後さらに重要になります。ユーザー体験は、Webサイトやアプリだけで完結しなくなっています。AIチャット、音声UI、SNS、店舗、サポート、外部レビュー、複数デバイス、複数サービスがつながり、体験はより複雑になっています。

そのため、ユーザー体験を一つの画面だけで評価するのではなく、時間の流れ、チャネルの横断、感情の変化、AIとの接点、組織内の運用まで含めて理解する必要があります。ジャーニーリサーチは、複雑な体験を整理し、改善するための基盤として今後も重要になります。

15.1 オムニチャネル体験への対応

今後のジャーニーリサーチでは、オムニチャネル体験への対応が重要になります。ユーザーは、Webサイト、アプリ、SNS、メール、店舗、サポート、営業担当などを横断しながらサービスを利用します。企業側がチャネルを分けていても、ユーザーは一つの体験として受け取ります。

そのため、チャネルごとの最適化だけでは不十分です。チャネル間で情報が一貫しているか、ユーザーが同じ説明を何度も求められていないか、オンラインとオフラインの体験がつながっているかを調査する必要があります。

15.2 AI体験の調査が増える

AIがサービスに組み込まれることで、AI体験の調査が増えていきます。AIチャット、レコメンド、要約、自動処理、AIエージェントなどは、ユーザーの判断や行動に影響します。これらのAI接点が、体験のどこで役立ち、どこで不安を生むのかを理解する必要があります。

AI体験では、正確性だけでなく、信頼、説明可能性、修正可能性、人間への切り替えが重要になります。ジャーニーリサーチは、AIがユーザー体験に与える影響を把握するための有効な手法になります。

15.3 データ統合が重要になる

今後は、定性データと定量データの統合がさらに重要になります。インタビュー、行動ログ、問い合わせ、レビュー、アンケート、NPS、利用データを組み合わせることで、より正確にジャーニーを理解できます。単一のデータだけでは、複雑な体験を十分に説明できません。

データ統合が進むと、ジャーニー上の課題をより具体的に把握できます。どの段階で離脱が起き、どの感情が関係し、どのタッチポイントが影響しているかを複合的に分析できます。これにより、改善施策の精度も高まります。

15.4 継続的リサーチへ変わる

ジャーニーリサーチは、一度だけ行うものから、継続的に更新するものへ変わっていきます。ユーザー行動、サービス内容、競合環境、チャネル、AI機能は変化します。そのため、過去に作ったジャーニーマップが現在も正しいとは限りません。

継続的リサーチでは、定期的にユーザーの声を集め、行動データを確認し、ジャーニーを更新します。これにより、チームは常に現在のユーザー体験を基準に意思決定できます。ジャーニーリサーチは、単発のプロジェクトではなく、プロダクト改善の継続的な仕組みとして重要になります。

おわりに

ジャーニーリサーチ手法とは、ユーザーや顧客が目的を達成するまでの一連の体験を調査する方法です。ユーザーの行動、感情、タッチポイント、意思決定、ペインポイント、利用文脈を調べることで、体験全体を理解できます。単なる画面改善ではなく、ユーザーがどのような流れでサービスと関わっているかを把握することが目的です。

ジャーニーリサーチでは、ユーザーインタビュー、行動観察、コンテキスト調査、日記調査、アンケート、アクセス解析、サポートログ分析などを組み合わせます。定性調査で理由や文脈を理解し、定量調査で規模や傾向を確認することが重要です。調査結果は、ジャーニーマップとして可視化し、チームで共有し、改善施策へつなげます。

ECサイトでは、商品発見、比較検討、購入、配送、レビュー、再購入までの体験を調査できます。SaaSでは、導入検討、無料登録、オンボーディング、チーム展開、継続利用、解約検討までの流れを理解できます。ジャーニーリサーチは、コンバージョン改善だけでなく、継続利用や顧客満足の改善にも役立ちます。

AI時代には、AIチャット、レコメンド、AIエージェントなどが体験に加わり、ユーザージャーニーはさらに複雑になります。だからこそ、ユーザーがどこでAIを信頼し、どこで不安を感じ、どこで人間の確認を必要とするのかを調査することが重要です。ジャーニーリサーチ手法は、複雑化するユーザー体験を理解し、より良いサービスを設計するための重要な方法です。

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